「強すぎるNTT」復活の懸念も ドコモ完全子会社化を読み解く(石野純也)

「意思決定の迅速化」を意義として強調

石野純也 (Junya Ishino)
石野純也 (Junya Ishino)
2020年09月29日, 午後 07:20 in ntt
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持ち株会社としてNTTグループ各社を束ねるNTTが、NTTドコモの完全子会社化を決定しました。元々NTTは、ドコモ株のおよそ64%を持つ大株主ですが、残り3割強に対してTOB(株式公開買付)を実施。TOBによって、100%子会社化を目指します。完全子会社化することで、NTTの意向をドコモの各種施策に、より反映しやすくなるとともに、グループ間の連携もさらに強化される見込みです。

ドコモの完全子会社化を発表したNTTとドコモ。左はNTTの澤田社長、右はドコモの吉澤社長

NTTの澤田純社長は、完全子会社化の意義として「意思決定を迅速化できる」ことを挙げています。

グループ間の連携については、「まだ検討をこれからする段階」と前置きしつつも、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアに言及。「ドコモグループに移管することを考えている」としながら、ユーザーのフロントエンドとしてドコモを軸に、2社をその下にぶら下げていく構想を明かしています。

検討はこれからになるが、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをドコモにぶら下げる形になる構想が明かされた

菅義偉氏が総理大臣に就任して以降、携帯電話各社に対する値下げ圧力が強まっていますが、「本件が値下げと結びついていることはまったくない」(ドコモ、吉澤和弘社長)と、直接的な関係は否定。

一方で、グループ間連携を強め、コスト効率化を図れば、「結果として、そういう余力も出てくる」(澤田社長)と語っています。澤田氏、吉澤氏双方とも、「昨年6月に、ボリュームゾーンで4割の値下げをしている」としながらも、完全子会社化でさらなる値下げの可能性を示唆した格好です。

コスト競争力の強化などが、結果として携帯電話料金の値下げにつながるという

5G時代に突入し、モバイル通信がさまざまなソリューションのインフラとして活用されるようになった一方で、ドコモはやはりコンシューマーに強い会社。「今の時代、視点を広くして領域を広げていかないと競争に打ち勝てない」というのが、ドコモの課題でした。完全子会社化は、その近道だったというわけです。

吉澤社長は「NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアの持つアセットを活用し、ドコモの事業基盤を強化するのが、そのための最短かつ確実な方法と判断した」と語っています。

5G時代に合わせた変革が必要だったというのが、ドコモの考えだという

確かに、ドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアはお互いにない強みを持っているため、シナジー効果は高そうです。モバイルでコンシューマーに強いドコモに対し、固定網やソリューションで法人に強いNTTコミュニケーションズと、弱点をカバーし合えて、かつ両社ともにその分野ではシェアが高いのも特徴。

ドコモの完全子会社化に続く、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの再編が起れば、グループとしての競争力はさらに強化できそうです。

一方で、一抹の不安を感じたのも事実です。ドコモは、現在、NTTグループの稼ぎ頭の1社ですが、誤解を恐れず言えばかつては“傍流”と見なされていた会社です。NTT本体から切り出された際には、固定通信網が主流でした。こうした背景もあって、ドコモはNTTの枠内に収まらない、さまざまなチャレンジをしてきました。

むしろ、NTTへの反発心をばねに、ここまで成長してきた経緯もあります。ポケベルやiモードの成功は、その典型例。国営の電電公社が母体のNTTには難しかった民間ならではの発想や、モバイルの将来に賭ける思いが実を結んだと言えます。

iモードのようなサービスは、NTTから距離を置いていたドコモでなければ生み出せなかったかもしれない。写真は2008年のもの

ドコモ関係者の中には、「うちはNTTじゃないですから」と口にする人も少なくありませんでした。ドコモの売上や営業利益が大きくなるにつれ、徐々に持株会社の関与も深まってきていましたが、それでもKDDIやあのソフトバンクとバチバチやりつつ渡り合えてきたのは、ドコモだったからこそと言えるでしょう。

完全子会社化で、ドコモはNTTの中核企業に位置づけられることになりましたが、逆に自由闊達さや大胆さが失われてしまわないかを危惧しています。

同時に、持株会社からは、ドコモがヤンチャで手がかかる息子に見えていたのかもしれません。時には、持株会社の意向を突っぱねることもあったといいます。3割以上の株主はNTT以外が保有しているため、子会社が独自に意思決定していくことは重要ではありますが、持株会社にとってはコントロールしづらい子会社に見えていたはずです。

先に澤田氏は「意思決定の迅速化」を挙げていましたが、つまるところ、完全子会社化後は、持株会社の意向に100%従って運営していくことになるわけです。そこに、かつてのような“ドコモらしさ”があるのかはまだ見えていません。

完全子会社化することで、意思決定を迅速化できるのはメリットの1つだ

グループとして、NTTが強力になり過ぎる懸念もあります。固定網の時代はそれが問題視され、NTT東西やNTTコミュニケーションズに会社が分割された経緯がありますが、ドコモを軸にNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアが集まってしまうと、何のための分割だったのかが問われることになります。

澤田社長は約4割にのぼるドコモのシェアを挙げつつ、「NTTグループがとても大きく、他社がとても小さい数十年前の市場ではない」としていましたが、シェア1位であることも事実。「ドコモを子会社化する、NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアと連携を深めるのは、法制度でダメとは言われていない」(澤田社長)といいますが、通称NTT法での規制と競争環境が健全かどうかは別軸の問題ではないでしょうか。

実際、NTTとドコモの発表を受け、KDDIは「NTTの経営形態のあり方は、電気通信市場全体の公正競争の観点から議論されるべきと考える」とコメント。ソフトバンクも「NTTグループ各社の在り方については一定のルールが課せられており、NTTによるドコモの完全子会社化は、電気通信市場における公正競争確保の観点から検証されるべきものと考える」との意見を表明しています。

政府は通信市場の競争促進を旗印に掲げていますが、現実には、競争が停滞する方向に進んでいるような気がしてなりません。


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