NTT docomo Rakuten Masahiro

バルミューダ初のスマートフォン「BALMUDA Phone」が発表され、色々な意味で大きな話題となった2021年11月16日ですが、実は携帯電話業界でもう1つ大きな動きが起きていました。それは以前にも触れた、周波数オークションの導入に向けた「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」の第2回会合が実施されたことです。

今回の会合では有識者による海外での周波数オークションの動向に関する説明、そして携帯2社からのヒアリングが実施されたのですが、そこで大きな驚きをもたらしたのがNTTドコモです。というのも同社の代表取締役社長である井伊基之氏は、周波数オークションを「今後の基本的な割り当て方式として検討すべき」と話したのです。

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▲「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回会合のNTTドコモ提出資料より。従来から姿勢を大きく変え、周波数オークションの導入に前向きな示したことが驚きをもたらした

周波数オークションは審査の手間が省ける上に透明性も高く、落札費用を国の財源として活用できるなど行政側に多くのメリットがある一方、携帯電話会社からして見れば落札額の高騰で経営を揺るがす可能性があるなど、デメリットが多い仕組みでもあることから、従来国内の携帯電話会社は導入に前向きではありませんでした。それだけに最大手であるNTTドコモが、従来の姿勢を一転させ周波数オークションに前向きな姿勢を示したことは大きな驚きがありました。

ですがその周波数オークションを巡って大きな話題となったのはむしろその翌日となる2021年11月17日でしょう。なぜなら同日、楽天モバイルの代表取締役会長兼CEOである三木谷浩史氏が、Twitterで『周波数オークションに大反対』とツイートし、明確に反対する姿勢を示したからです。

しかもこのツイートは、NTTドコモが周波数オークションに賛同の姿勢を示したとの報道を引用する形でなされており、NTTドコモの対応に疑問を示す様子も見せています。ですがこれまで、競争促進という共通の目的があったこともあり、携帯大手3社よりも総務省寄りの姿勢を見せてきた楽天モバイルが、総務省主導の『周波数オークションの導入』に反対したというのもやや意外なように見えます。

三木谷氏のツイートを見る限りですが、楽天モバイルが周波数オークションに反対するのには、資金力の大きい大手企業が、お金にものをいわせて免許を買い占めてしまうことへの懸念があるといえます。周波数オークションはお金で免許の割り当てが決まる仕組みなので、資金力の大きい企業ほど優位であることは確かでしょう。

ただ海外の周波数オークションの事例を見るに、オークションで落札できる周波数帯域に上限を設け、独占を防ぐ「周波数キャップ」が設けられたり、楽天モバイルのようにまだ規模が小さい新規事業者などに対して落札額の優遇が実施されるケースもあるようです。オークションのルール整備の仕方によってそうした問題を回避することは不可能ではないと考えられます。

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▲「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回会合のマルチメディア振興センター・飯塚留美氏提出資料より。免許の公平な割り当てのため、獲得できる周波数帯域に上限を設ける「周波数キャップ」などの仕組みが諸外国では導入されている

それゆえより大きな理由と考えられるのは、やはり周波数オークションが実施されると免許獲得のため、参入当初想定していなかった予算を費やさなければならないことではないかと考えられます。楽天モバイルも他の大手3社と同様、これまでは比較審査によって4G、5Gの周波数帯が割り当てられており、周波数オークションが実施されるよりも安く免許を獲得できていたでしょうし、今後の計画も、あくまで従来通りの比較審査で免許が割り当てられることを前提に、事業計画を立てていたものと考えられます。

ですがその前提が崩れてしまえば今後の事業計画に大きな影響が出て一層の資金調達が迫られます。現在楽天モバイルはネットワーク整備のための先行投資で赤字を記録している状況で、その親会社である楽天グループは2021年3月に日本郵政などから大規模な資金調達を実施したばかり。ですが周波数オークションが現実のものとなれば、ただでさえ保有している周波数帯が少ない楽天モバイルはより良い帯域の免許獲得のため一層の資金調達に迫られるだけに、反対という反応は当然のものといえるかもしれません。

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▲楽天グループ2021年度第3四半期決算説明会資料より。楽天モバイルは基地局整備の大幅前倒しで赤字が続くが、想定していなかった周波数オークションが導入されれば、一層赤字が膨らみさらなる資金調達に迫られる可能性がある

もちろんそれは楽天モバイルに限ったことではなく、周波数オークションが導入されれば他の大手3社も、免許獲得のため従来以上の資金を費やさなければならなくなります。それだけに気になるのは、NTTドコモがなぜ周波数オークションに賛同する姿勢を示したのか?ということなのですが、先の検討会における井伊氏の発言からは、今後割り当てられる周波数帯が大きな理由となっているようです。

というのも総務省が公開している令和3年版の「周波数アクションプラン」を見ますと、5G用に割り当てが検討されている周波数帯は2.3GHz帯、2.6GHz帯、4.9GHz帯、26GHz帯、40GHz帯となっており、モバイル通信では広範囲のカバーに向かず、扱いにくいとされる高い周波数帯が多くを占めていることが分かります。

そうした高い周波数帯は、ニーズが生じた時点でピンポイントにエリアをカバーするのに活用するものとNTTドコモは見ているようですが、現在の比較審査では基地局の開設計画が審査項目に含まれており、免許獲得後はその計画を厳守して全国津々浦々にエリア整備することが求められます。高い周波数帯をピンポイントなエリアカバーに柔軟に活用するという運用スタイルに、厳格なエリア整備を求める比較審査がマッチしないことから、より柔軟な運用が可能な周波数オークションの方が適していると考えているようです。

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▲「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回会合のNTTドコモ提出資料より。NTTドコモは今後割り当てられるのが高い周波数帯で、整備するエリアやそのスケジュールに柔軟性が必要なことが、オークション方式を支持する主な理由の1つだという

ただ現在の周波数オークションの議論は、あくまで新しい周波数帯の割り当てに関するものではありますが、先々のことを考えた場合、総務省で周波数帯再割り当ての議論が同時に進められていることは気になる所です。あくまで仮定の話にはなりますが、もしプラチナバンドの再割り当てがなされ、その時に周波数オークションが用いられたら落札額の相当な高騰は避けられないのでは?という疑問も浮かびます。

それでもNTTドコモが賛同を示すのには、親会社の日本電信電話(NTT)が総務省幹部に高額接待を繰り返すなど、行政との不透明な関係が指摘されたことも影響しているかもしれません。一連の問題に関する調査は終了し、問題はなかったとの結論が出ていますが、社会的に与えた影響の大きさを考慮すると透明性の高い周波数オークションの導入に賛成せざるを得なかったのでは?とも考えられる訳です。

ちなみにNTTドコモと同日にヒアリングがなされたKDDIは、純粋なオークション形式ではなく、オークションと比較審査とのハイブリッド型を採用するフランスや、必要な周波数帯を全ての事業者が獲得できるなど、一定の条件の下にオークションを実施しているイギリスの方式などを参考にすべきとしていました。導入自体に反対はしないものの、価格が高騰する全面的なオークション方式の導入は避けるべきとの立場のようです。

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▲「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回会合のKDDI提出資料より。オークション方式に反対はしないものの、携帯各社に与える影響を考慮し、比較審査とのハイブリッド型などオークションありきではない手法の採用を求めている

今後は楽天モバイル、そしてまだ立場を示していないソフトバンクなどからもヒアリングが行われ、各社の考えと立場がより明確になっていくことでしょう。携帯4社、そして総務省の思惑がどのように絡んで議論が進むのか、引き続きその推移を見守っていく必要がありそうです。


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