[名称] 電子ブック、Electronic Book
[種類] 光ディスク(シングルCD-ROM)
[記録方法] 不可
[サイズ] 80mm
[容量] 185MB前後
[登場年] 1990年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「電子ブック」は、8cmのシングルCDにデータを書き込み、電子書籍用として作られたメディア。当時、音楽CDこそ当たり前に利用されていましたが、データ用としてCDを使おうというのはまだ黎明期で、当然ながら、CD-ROMドライブの採用すら珍しかった時代です。有名どころでいえば1988年に登場したPCエンジン用のCD-ROM2、そして1989年に登場したFM TOWNSあたりでしょうか。

この電子ブックを利用するには、対応する専用プレーヤーが必要です。最初に登場したのは、ソニーの「DD-1」。これは折りたたみ型の端末で、イメージ的には後の折りたたみケータイに近いといえるでしょう。サイズは大きいですが。

電子ブックはキーボード側をさらに開き、セットするというものでした。

この機種を手始めに、「DATA Discman」シリーズとして製品が続き、2000年まで新製品が登場していました。

電子ブックプレーヤーの多くはソニー製品ですが、松下電器「KX-EBP1」や三洋電機「EXB-1」、シャープ「PV-CD1」(電子手帳用ドライブ)など、ソニー以外のメーカーからも製品が登場しています。

電子ブックの利点は、ICメモリーと比べ容量単価が安いこと。そうはいっても、当時はそこまで容量が必要なコンテンツがありませんし、紙の本ほど安く大量に作れるわけでもありません。

一般的な本を電子ブックにするのは価格面で厳しいですが、大容量が必要で、さらに単価も高いものであれば需要があります。その用途としてぴったりだったのが、辞書や辞典。電子ブックはいくつかの仕様がありますが、初期のEBでも文字と画像が利用できたほか、EBXAであれば、さらに音声まで収録可能とあって、容量制限から文字だけとなっていた電子辞書よりも、充実した内容にできました。

電子ブックのパッケージはほぼ共通で、新書サイズ。CD-ROMがそのまま入っているのではなく、キャディに収められた形です。

電子ブックとして利用するときはこのキャディのまま、電子ブックプレーヤーに挿しこみます。

横にスライドするシャッターを装備しているので、MOにちょっと似ていますね。

シャッターはロック機構がある上、バネが内蔵されていて勝手に閉じるようになっています。といっても、ロックは裏面の見える位置にありますので、外して開くのは難しくありません。

ただし、中のCD-ROMを見たいからとシャッターを開く必要はありません。なぜなら、そもそもキャディが中身を取り出せるようにできているからです。

正面から見て右下に「OPEN」という文字がありますが、この側面にツメがあり、ここを押すことで簡単に開くことができます。

中身を取り出してみた様子が、これ。こうしてみると、本当にただの8cm CD-ROMだというのがわかりますね。

ちなみに市販のソフトを使えば、PCのCD-ROMドライブからも利用できます。「DDwin」という、Windows 3.1で電子ブックを読めるようにするフリーソフト(Windows 95用として「DDwin32」もあります)を使って電子ブックを楽しんでいた、という人もいるのではないでしょうか。まー、私なんですが。

8cmとはいえCD-ROMの大容量を活用できることから、電子辞書用としてある程度成功しました。ただし、ランダムアクセスの遅い光学メディアとなるため、検索や表示が遅い、小型化が難しい、電子ブックリーダー本体の価格が下がらないといったデメリットもありました。

ICメモリーの価格が下がってくると、これらのデメリットがネックとなり低迷。CD-ROMを使った電子ブックは消えていきました。

連載:スイートメモリーズ

参考:

商品のあゆみ その他, ソニー