JENS SCHLUETER via Getty Images
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先進国各国の多くは2035年に、それ以外もだいたい2030~2040年のあいだにガソリン車の販売を禁止する方向性を打ち出しています。しかし依然として議論されているのが、本当に電気自動車はガソリン車よりCO2排出が少ないのか?ということ。

電気自動車は販売店から購入して走る分には当然ながらCO2を排出することはありませんが、その製造組み立てに使用する各部品の生産、特に大量に搭載するリチウムイオン電池の製造においてのCO2排出は非常に多いと言われます。

ところが、新たに発表された乗用車の気候変動への影響を比較した新しい研究は、この議論に重要な役割を果たすかもしれません。この研究では電気自動車がガソリン車に比べ「ゆりかごから墓場まで」に排出すると予測される温室効果ガスの量がはるかに少ないと述べています。そしてそれは中国やインドといった、電気自動車を充電するために必要な電力の大半を石炭火力でまかなっている国であっても、基本的に結果は同じ、世界で共通だと結論づけています。

この調査結果は当然ながら「実は電気自動車のほうがガソリン車よりも温室効果ガスをたくさん出している」とする一部の人々の主張と対立するものです。そして各国政府が2015年のパリ協定に沿った環境政策を固めようとしているタイミングで発表されました。パリ協定では米国を含む143カ国が、世界の平均気温上昇を産業革命以前プラス2℃よりも低く保ち、可能ならば1.5℃の上昇までに抑える努力をすることをうたっています。冒頭に紹介した各国のガソリン車販売の禁止の話も、少なからずこのパリ協定の目標達成に影響されていると考えられます。

今回の報告書によると、2021年に登録された車の場合、欧州における中型EVのライフサイクル全体での排出量は、同カテゴリーのガソリン車に比べ66〜69%低いことがわかりました。また米国の場合なら電気自動車の排出量は60〜68%減少、中国では37〜45%、インドは19〜20%ほど、そしてインドでは19〜34%の削減となっています。そしてこれら電気自動車とガソリン車の差は、2030年になれば欧州で74〜77%、米国で62〜76%、中国で48〜64%、インドで30〜56%にまで拡大すると予想されています。

調査を行ったICCT(International Council on Clean Transportation)のRachel Muncrief氏によれば、「市場における自動車のジャンル構成や発電方式の違いがあるにもかかわらず、各市場における自動車のライフサイクルにおける排出量の傾向がよく似ている」とのこと。さらにガソリン車と電気自動車の相対的な温室効果ガス排出量も、電気自動車のほうが優れた結果を示している」としました。

ただ、気をつけるべきは電気自動車だからどんな条件でもガソリン車よりCO2排出が少ないかといえばそうではないこと。ある試算では、燃費の悪い大型車よりも電気自動車のほうが排出量がすくなくなるには、少なくとも1万3500マイル(約2万1700km)は走行する必要があるとのことです。

ちなみに今回の報告書には日本市場に関する電気自動車とガソリン車の比較はありませんでした。しかし2019年には日本の自動車メーカー、マツダがライフサイクル全体で電気自動車のほうがCO2排出量が少ない傾向にあると述べています(ライフサイクル後半になりバッテリー交換をした場合を除く)。

Source:ICCT