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3月31日に東京駅隣接のサピアタワー1階にオープンする「ファミマ!! サピアタワー/S店」

ファミリーマートとTOUCH TO GO(以下、TTG)は3月30日、資本業務提携と両社共同事業である無人決済システムを採用したコンビニ店舗の第1号店「ファミマ!! サピアタワー/S店」を翌3月31日より東京駅に隣接するサピアタワー1階にオープンすることを発表した。サピアタワーの3階には“フル規格”の「ファミマ!!」店舗があり、今回のは無人決済に特化した「サテライト店舗」の位置付けとなる。

今回採用されたTTGの無人決済システムは、通常のセルフレジは利用客自身がバーコード読み取りを行って商品登録を行うのに対し、入店から商品のピックアップまでを天井のカメラと棚のセンサーを組み合わせ自動で行うもの。いわゆるAmazon Goライクな店舗ということになるが、事前に登録やスマートフォンへのアプリのインストール作業も必要なく、誰でも入店から決済までをスムーズに行える点で特徴がある。支払いを完了させて退店するまで店員との接触もないため、コロナ禍において人の接触をできるだけ避けたいというニーズと、素早く買い物を済ませて退店したいという忙しい利用者のニーズに応える。

TTGはJR東日本スタートアップなどが出資する形で設立された企業であり、すでにその1号店を昨年2020年春に東京の高輪ゲートウェイ駅でオープンさせている。コンビニ業態としては2店舗目、業界の大手プレイヤーと組み、かつ閉鎖施設内ではないオープンな場所への出店事例としては初となるが(高輪ゲートウェイは改札内店舗)、店舗のセットアップにかけた時間は1か月強で高輪ゲートウェイ時の約半分、カメラなどのハードウェアを含む導入コストは大幅な削減に成功しているとのことで、今後の導入に弾みをつけていきたい考えだ。

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店舗内の様子。天井のカメラはこの店舗の規模で48台

▲店内のショッピングの様子 - 入店からピックアップまで

▲店内のショッピングの様子 - ピックアップから会計まで

利用方法は非常にシンプルで、入店したらほしい商品を手に取ってレジに向かうだけだ。センサーの追跡機能で現在手に持っている商品が一覧として表示されるので、問題なければ3種類ある支払い手段のいずれかを選んで決済すれば、出口のゲートが開く仕組みだ。

基本的に、一度取った商品を棚に戻した場合などは自動的に追跡されるが、店内での人間同士の商品交換などの動作には対応しない。TTGによれば、高輪ゲートウェイでの稼働実績で95%の認識率を誇っており、ほぼスムーズに問題なく決済まで進めるという。ただ残りの5%は何らかの問題が発生する可能性があるということで、会計時に表示される一覧に間違いがあった場合には利用者自身が修正したり、あるいはセンターに接続してヘルプを求める形となる。

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セルフレジの前に立つとピックアップした商品一覧が表示される。間違いがあれば修正して、会計を行う
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選べる決済手段は交通系電子マネー、クレジットカード、現金の3種類。ポイントカードなどには対応しない

今回の店舗のもう1つの特徴として、アルコールが購入できる点が挙げられる。もしピックアップした商品に酒類が含まれていた場合、会計時に年齢確認ボタンが出現する。レジにはカメラが据え付けられており、リモートでバックヤードにいる店員が目視チェックを行うことで対応する。TTGの仕組みが「無人店舗」ではなく「無人決済」となっているのも、このように店舗スペース内にこそ店員はいないものの、バックヤードでつねに1人が待機して商品補充を行ったり、必要に応じて顧客対応を行うことに由来する。

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ピックアップした商品にアルコール類が含まれる場合は年齢確認が走り、正面のカメラからリモートでチェックが行われる

このように無人運営ではないのが「ファミマ×TTG」の店舗の特徴ではあるが、通常のファミリーマート系列のコンビニ店舗では最低2名の従業員を必要としており、その点で省人化とコスト削減が図られているメリットがある。これにコロナ禍の非接触ニーズを合わせ、新しい市場を開拓したいというのがファミリーマートの狙いだ。特にターゲットとしているのが「マイクロマーケット」と呼ばれる市場で、従来のコンビニフォーマットでは売上的に採算が取れなかったものを、TTGの技術を組み合わせることで出店を可能にした新しい形態の店舗となる。

例えば、オフィスビルや商業施設、ホテル、病院、キャンパスなど、売上規模から出店が厳しいとみられていた商圏であってもコンビニの展開が可能になる。自販機やセルフ商品棚などでの出店に比べ、今回の店舗のように通常のコンビニに近い商品ラインナップを用意できるため、売上面や顧客満足度でのメリットも大きい。

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ファミリーマートがTTGを導入した狙いはコロナ禍の非接触に加え、人件費と運営コスト削減の両面がある
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狙う市場は従来のコンビニの店舗フォーマットでは売上的に成立しなかった「マイクロマーケット」

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センサーなどの仕組みはすでに高輪ゲートウェイ駅に導入されているTTGのそれと一緒だが、今回のファミマ店舗では入店時の事前登録などの処理は一切必要なく、商品ラインナップがほぼ既存コンビニのそれと一緒になっている点に特徴がある

商用展開という点ではTTGが競合他社に先行しているが、同様の技術やソリューションを持つベンダーも多数控えており、おそらく2021年はこうしたAmazon Go型店舗が実証実験を含めて多数出現するのではないかと考えられる。例えばファミリーマートはTTG導入以前からパナソニックと共同で同種の店舗の技術開発を進めていたほか、NECや富士通などの企業も同様の技術開発を行っている。特に富士通は米サンフランシスコのスタートアップ企業Zippinの技術を用いた無人決済型店舗をローソンと共同で昨年2月から新川崎の同社事業所内で稼働開始しており、現在もなお改良が進められている。

中国系ベンダーではCloudPickという企業がすでに世界規模で商用店舗の展開を成功させており、昨年秋には日本法人も設立して国内パートナーと出店準備を進めている。いずれにせよ、非常にホットな分野であり、今回の「ファミマ!! サピアタワー/S店」はその先鞭をつける存在となるだろう。

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