10月19日、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、FMVシリーズの個人向けPCとして2020年冬モデルを発表しました。今回はテレワーク需要の急増をはじめとする、いわゆる「ニューノーマル」に向けてゼロベースで商品企画と開発を実施したモデルとうたいます。
実際の製品としても変更が大きく、新シリーズだけでも3系統、本体設計レベルの新世代機が2シリーズと、合わせて5シリーズが大幅に刷新されるという気合いの入りようです(ただし、新シリーズのうちの1つは、小学生から高校生までをターゲットにした『LIFEBOOK EH』シリーズであるため、一般的な個人向けモデルとは少しターゲットがズレます)。
本誌読者にとって人気となりそうなのは、13.3インチ画面搭載ノートPCである2シリーズ。現行シリーズが保持する世界最軽量を更新する634gからの超軽量機『LIFEBOOK UH』シリーズ(上写真)と、本体デザインと画面の美しさに力を入れた『LIFEBOOK CH』シリーズです。
UHシリーズは現行モデルからさらに突き詰めた軽さと、3辺ナローベゼル画面パネルなどによる底面積(奥行き)の低減、そしてAMDの物理8コアCPU『Ryzen 7 4700U』搭載モデルなどが特徴。
CHシリーズは、非常に凝った本体デザインやカラーリングに加え、消費電力と画質のバランスに優れるフルHD解像度の有機ELパネルの採用や、HDMI出力・入力兼用端子などが特徴です。
また、インテル製CPUの大きな世代交代=Tiger Lakeこと第11世代Core iのデビューとタイミングが合致した点、そして同社の店頭モデルの販売路線の変更などから、モバイルノートPCをはじめとするヘビーユーザー向けの店頭モデルでは、(Core i5ではなく)Core i7やRyzen 7が主力として位置づけられるなど、業界動向の視点では注目すべき布陣変更もなされています。
【10月19日 11時52分追記】UH-Xの重量に関して、記事公開当初はオンライン発表会での数値に合わせて638gと公開しておりましたが、発表会中に「実はさらに4g軽量化されて634gである」との更新があったため、訂正させていただいております。
世界最軽量更新、だけじゃない634gからの新UH
奥行き縮小から使い勝手大改良まで見どころ満載
まずは、Engadget読者にとって最注目となりそうなLIFEBOOK UHシリーズから紹介しましょう。
今回の店頭モデルは3グレードが用意されており、店頭予想価格は19万円弱(税別)から22万円弱(同)まで。本シリーズに限らず今回紹介する店頭モデルは、すべてMicrosoft Office H&B 2019搭載です。店頭陳列時期は10月下旬から12月10日の予定です。
最上位モデル『UH-X(テン)』は、本体重量634g。一部外装素材をカーボンファイバーベースとした点や本体サイズの縮小により、現行モデルが持っている13.3インチノートPCの世界最軽量を更新した点が最大の特徴です。
加えてCPU(SoC)をTiger Lake上位モデル『Core i7-1165G7』に更新し、CPUとGPU速度を大幅に高速化。中位モデル『UH90/E3』ではTiger Lakeの特徴であるThunderbolt 4(TB4)コントローラー内蔵を受けて、USB Type-CもTB4兼用となるなど、基本性能周りでも大幅にパワーアップしています。
加えて3辺ナローベゼル液晶の搭載により、奥行きは20cmを切るまでに低減。新幹線や航空機をはじめとする、狭い場所などでの利便性が向上しました。
さらに生体認証はあえての指紋認証を採用し(現行モデルは顔認証でした)、指紋センサーは昨今流行の電源ボタン兼用タイプを搭載。電源オンからログインまでがワンタッチで可能です。
使い勝手の面では、USB PD経由での本体給電を7.5W以上より受けられ、さらに2基あるType-Cの両方から給電できるように電源回路を大幅に改良(現行モデルでは45W以上 [実機での検証結果] 、さらに2基中1基のみでした)。合わせて本体付属ACアダプタも専用端子仕様からUSB Type-C出力仕様へと変更されています。
さらにRJ-45有線LANコネクタ(今回も本体に直接挿せます)はより素早く展開できる新設計となるなど、こちらも非常に変更点が大きなものとなっています。
ついに!! AMD派待望の
「何もケチられていない超軽量Ryzenノート」が
そしてある意味でUH-Xより注目できるモデルが、(本来は)下位となる『UH75/E3』です。その理由は、CPU(APU)に、AMDの『Ryzen 7 4700U』を搭載する点。この強力CPUの搭載により「13.3インチノートとして群を抜く軽さでありながら、物理8コアのCPUとRADEON系のパワーを持ち歩ける」という大注目のモデルとなっています。
さらにAMDファンにとっては嬉しいのが、他メーカーのRyzenモデルの一部で見られる「基本仕様や拡張端子の数といった点で、インテルCPU製品との間に不思議な差がつけられる」といったことがほぼない点。
さすがに(Tiger Lakeがコントローラーを内蔵している)Thunderbolt 4には非対応で、機能としてUSB Type-Cのみとなっている点、そしてSSD容量が256GBとなる点がありますが、基本仕様はi7-1165G7搭載の大容量バッテリーモデル『UH90/E3』と同じ。
率直に言えば、これまでノートPCでもAMDを使いたい派が遭遇しがちだった「えっ!? こんなところがケチられてるの……?」という仕打ちがないモデル、というわけです。
このUH75は「デスクトップではAMD派なのだけれど、モバイルノートではそもそも選択肢がなかったのでやむなくインテルCPU」というユーザーに対しては福音とも呼べる機種でしょう。
さらにさらに。店頭モデル以上に激アツなのが、カスタムメイド(メーカー直販BTO)モデル『WU-X/E3』『WU2/E3』です。
その理由は、ヘビーユーザー待望の5G対応通信機能(5Gモデム)と32GB RAM、2TB SSD構成という「ヘビーモバイラー3種の神器」が選択可能となったため。ただしCPUはインテル製のみで、Ryzenシリーズの選択は不可能です(ここは凄く残念)。
現行モデルで要望が多かった(はずの)「せっかく本体が軽いのだから、Wi-Fiがないところでもサッと使えるようになってほしい」という要望が、ついに叶えられるようになったわけです。
なおUHシリーズに関しては、本稿に続き、Tiger Lakeモデル『UH90/E3』とRyzen 4800Uモデル『UH75/E3』のショートレビュー記事を別途掲載予定です。ご期待ください。
液晶並み消費電力のフルHD有機ELと
HDMI「入力」が便利な新CH
UHシリーズだけでも力の入りようが凄い今回のFMVですが、さらに今回は、新しいノートPCシリーズも贅沢に2種類を用意。しかもそれぞれ注目できる特徴を備えたものとなっています。
まずは、冒頭でも触れたLIFEBOOK CHシリーズから紹介しましょう。
今回のCHは、UHほど軽量ではないもののモバイルと呼べる軽量な機種で、さらに上位には採用機種の少ない、フルHD有機EL(OLED)パネルを搭載します。
店頭陳列予定日は12月10日。店頭予想価格は本体重量約1.2kgの有機ELモデル『CH90/E3』が17万円強(税別)、1kg以下と軽量な液晶モデル『CH75/E3』が15万円強(同)となります。
13.3インチ有機ELは4K解像度版が先行していたため、フルHD版は実は目新しいデバイス。有機ELならではの黒の締まりなどを保ちつつ、4K版では問題となりがちな消費電力を同解像度の液晶レベルに抑えた点が特徴。
実際に本モデルでの公称バッテリー駆動時間は、有機EL/液晶ともに「約13時間以上」となっています。
またCHは、以前のモデルでは『Floral Kiss』(フローラルキッス)の愛称を持ち、女性をターゲットにした位置づけとなっていましたが、今回は時代の流れに沿って、男女問わずファッション性に敏感なユーザーに向けた風合いとなっています。
例えばカラーバリエーションは、上位が『カーキ』と『ダークシルバー』、下位が『ベージュ』と『モカブラウン』など、PCでも流行の兆しを見せつつある色や、今後のトレンド色となりそうなラインナップに。
さらに外装の素材にも、アルミニウム合金とマグネシウム合金、さらに樹脂という3種類の素材を組み合わせるなど、非常に凝った技術が投入されています。
CPUにはTiger Lake系のインテル『Core i5-1135G7』を採用し、GPUブランド(グレード)は高速なIris Xeグラフィックス仕様。さらにCPU内蔵コントローラーを活かした2基のThunderbolt 4端子(兼USB Type-C)など、今後の高級ノートPCに要求される拡張性を確保します。
また隠れた特徴は、フルサイズHDMI端子が入力と出力兼用となっている点。これにより、昨今の富士通ノートPCでアツい支持を受けるHDMI入力をモバイルノートPCで実現しています。
とくに有機ELモデルでは「テレビチューナーやゲーム機などを接続しても使える」という点は大きなメリットとなります。
これからの家庭内モバイルは「閉じて使う」?
新機軸のホームノートPC TH77
そしてもう一つ、いわゆるホームノート系でも新機軸のモデルが登場します。それが、15.6インチフルHD液晶を採用した『TH77/E3』。
店頭陳列予定日は12月10日で、店頭予想価格は20万円弱(税別)。本体カラーはアイボリーホワイトとインディゴブルーの2色展開です。
最大の特徴となるのは、製品コンセプト。家庭内では付属の充電スタンドと組み合わせて、液晶を閉じて――アップル用語で言うところの「クラムシェルモード」で――使い、一方で持ち出しが必要になった際には比較的軽量な本体で軽快に使える、という使い分けを指向します。
いわば「閉じて使う家庭内モバイル」的な設計がなされたモデルです。
充電スタンドはHDMI出力とUSB Type-C(ACアダプタ接続用)のみとシンプルな設計で、大きさも小柄ですが、着脱は片手でもスムーズに行え、またしっかりと本体を支えられる設計ともなっています。
もう一つの特徴は『X-TEXTURE』(クロステクスチャー)と呼ばれる富士通オリジナルのテクスチャーを全面にあしらった本体デザインです。テクスチャー自体にPCではまだ珍しいファブリック系を採用するだけでなく、表面にはテクスチャーに合わせて細かな凹凸も付けられている点が特徴。
触感の面でも布製品のような印象を味わえるという、一般的なホームノートPCとは一線を画した風合いがポイント。他のPCにはない「触れる楽しさ」が味わえます。
さらに天板とキーボード(パームレスト)面の表面処理は、複雑な曲面にもフイルムを隙間なく接着できる『アウトモールド転写成型』(OMR)技術を使ったもの。細かな段差でもつなぎ目なしに加工されているため、造形的にまとまり感のある仕上がりとなっています。
一方で底面カバーへのマグネシウムとアルミニウム合金の採用などで、本体重量は1.39kgと、15.6インチモデルとしては軽量に仕上がっているのも特徴。一昔前の外資系モバイルノートに近い重量です。厚さも18.4mmと、ホームノートPCとしてはかなり薄め。
基本性能もホームノートPCとしては非常に高く、CPUにはTiger Lake世代のインテル『Core i7-1165G7』を採用。RAMは8GB、SSDも512GBでPCI Express/NVMe仕様と、今回のラインアップでも第一線級の装備。公称バッテリー駆動時間も10時間以上と長めです。
隠れた特徴は、キーボードの完成度が白眉、またはオーパーツとも呼べるほど高い点。昨今のノートPC用キーボードではほぼ途絶えていた「入力された時点でしっかりとしたクリック感が味わえる、高速入力向きの良質なメンブレン」系統とも呼べる打鍵感となっています。
もちろん個人の好みはありますが、そもそも薄型キーボードとは思えないクリック感がクセになるタイプであり、キーボード好きにはぜひ一度体験してほしい打ち心地です。
なお、こちらも別途、実機によるショートレビュー記事を掲載予定です。
そして画面一体型デスクトップのFHシリーズも、本体設計のレベルから改良・変更が加わった新モデルに。
新機軸モデルとして、4K解像度+sRGB 95%超の色再現性を備えたアンチグレア液晶画面を備え、AMDのRyzen 7 4700Uと単体GPUとしてRadeon RX 5300Mを搭載する“グラフィックスモデル”こと『FH-G』を最上位に位置づけます。
さらにスタンダードモデルも4辺ナローベゼル設計の液晶画面をベースとしたシンプルなデザインを現行機種より引き継ぎつつ、本体の薄型化を図った新設計に。合わせて基本性能の面でも、上位モデルではCPUにTiger LakeのCore i7-1165G7を採用するなど、一層の強化が図られています。
さらに、高さ2.2mmと非常に薄型でありながら顔認証機能も備えたカメラユニットと、モダンスタンバイ中にも動作し続ける人感センサー(近接センサー)の搭載により「前に座るだけで、スタンバイ解除からログインまでを自動で行える」環境を実現。
PCの前に座った時点で自動的にスリープが解除し、さらにWindows Helloの顔認証によるログインまでが一気に行える『瞬感起動』をうたいます。
加えてFH-G以外のモデルではHDMI入力端子も搭載するなど、使い勝手の面でも大幅に強化。こちらも注目できるモデルとなっています。
このように2020年冬モデルの新FMVは、ラインアップ全体から各機種の強化具合に至るまで、数年に一度とも呼べるほどの気合いの入ったもの。間違いなく「2020年末のFMVは凄い」と呼べる布陣となりました。
昨今はテレワーク需要なども相まって、PC市場全体が非常にアツくなっているタイミングですが、その中でも大注目できる存在となっていることは間違いありません。
source:富士通クライアントコンピューティング