J. Adam Fenster
J. Adam Fenster

超伝導(または超電導)という現象は100年以上前に発見され、リニアモーターカーやMRIによる体内スキャンといった現代の革新的技術において重要な役割を果たしています。ただ、その現象を得るには、通常は-140℃以下の極低温状態が必要となるため、高価で厳重な装置が必要となってしまう欠点があります。

この極低温を室温状態に持ってくることができれば、上記の応用技術や、抵抗ロスのない送電線網などが実現し、大きく社会が様変わりすることも考えられます。そのため、これまでも多くの研究者が室温超伝導の実現を目指して研究を重ねており、2018年には-13℃というかなり常温に近い領域での超伝導状態の発生実現が科学誌Natureに報告されていました。

しかし今回、米ロチェスター大学のランガ・ディアス教授率いる研究者らによって新たに報告された研究は、もはや常温域の約15°Cで超伝導を示す「光化学的に変換した炭素質硫化水素系」を作り出したと述べています。

研究者たちはこれまで、銅酸化物や鉄を主な材料とした物質などで室温超伝導体の実現を目標に実験を重ねてきましたが、もっとも成功を見出したのは、どこにでもあるありふれた元素、水素を使ったものだったとのこと。

ディアス教授は、「常温超伝導体を作り出すにはより強い結合と軽い元素が必要です」と述べ「もっとも軽い物質は水素であり、水素結合は最も強い結合のひとつだった」とその材質に水素を選んだ理由を簡単に述べました。ただし、水素に金属的性質を持たせるには非常に高い圧力をかける必要があります。そのため、研究者らは、水素を多分に含みつつもはるかに低い圧力で金属性質を持たせられる超伝導性の代替物質を探しました。

その結果、条件を満たす物質として見つかったのは、水素、炭素、硫黄を含む混合物でした。これをダイヤモンドアンビルセル(地球深部の圧力を再現できる非常に高い圧力を物質にかけるための装置)内でレーザー光によって炭素質水素化硫黄と呼ばれる物質に結晶化し、温度を下げると超伝導状態になったことが確認できたとのこと。そして、物質にかかる圧力を増していくと超伝導状態になる温度が上昇し、267GPa(ギガパスカル)の高圧化なら287.7K(摂氏15度)というほぼ室温で超伝導状態に転移することを確認しました。

共同研究者のネバダ大学ラスベガス校Ashkan Salamat氏は「われわれは半導体社会に生きていますが、この実験で得たような技術があれば、たとえば電池が不要になるような超伝導社会に世の中を買えていくことができるでしょう」と述べています。ざっと思いつくだけでも、抵抗ロスのない送電線および送電網、リニアモーターカーやその他の新輸送技術のより簡単な実現、医療用イメージング技術の向上などが考えられます。

ただ、室温超伝導状態になったとはいえ、大気圧の260万倍もの高圧状態を一般的な機器内で作り出すことはほぼ不可能。またこのようか高圧化では超伝導を作り出す材料も非常に小さいものとなってしまうことから、これがそのまま室温超伝導の実用化に使われることはありえません。そのため研究では、より低い圧力、合理的なコストで、何かに応用できる量の材料を作り出すことが、室温超伝導実用化のカギになるとしました。それはたとえば、今回の材質の成分構成を微調整することなどによって、実現できるかもしれません。

source:University of Rochester
via:Nature, New Atlas