Food Delivery Masahiro Sano

KDDIと東日本旅客鉄道(JR東日本)らは2021年11月20日、東京都内の有人地帯でドローンを活用したフードデリバリーの実証実験を実施。その一部を報道陣に公開しました。

これは2020年に東京都が公募した、「ドローンを活用した物流サービス等のビジネスモデル構築に関するプロジェクト」に採択された3つのプロジェクトのうちの1つで、文字通りドローンでフードデリバリーを行う内容となります。

その舞台となったのは東京・竹芝にある複合施設「ウォーターズ竹芝」。実証実験ではドローンを活用してウォーターズ竹芝内での輸送と、ウォーターズ竹芝から浜離宮までの輸送が実施されたのですが、今回報道陣に公開されたのは前者の方。ウォーターズ竹芝の4階にあるテラスに設置されたドローンの発地点から、その下にある広場の着地点に食事を届けるという内容になります。

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▲KDDIらが実施した実証実験は、東京の「ウォーターズ竹芝」を舞台にドローンが食事を配達するものとなる

ちなみに今回用いられているドローンはACSL製の産業用ドローン「ACSL-PF2」。最大ペイロード(輸送できる荷物の積載量)は2.7kgですが、今回の実証実験で輸送されるのは3〜4人分のランチセットですので、それくらいの重量は積める容量のものが選定されているようです。

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▲今回用いられたドローンはACSL製の「ACSL-PF2」。2.7kgの荷物を積んで飛行できる

実証実験の具体的な内容は、まず下の階のレストランで作った料理が発地点に届けられたら、それをドローンに搭載して離陸。事前に設定した飛行ルートに従って、広場にある着地点までドローンが自律運転でフライトします。

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▲レストランで作られた料理が4階の発地点に届けられたら、それを担当者がドローンに搭載して発信させる

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▲フライト中のドローンの様子。実証実験ということもあって飛行距離は約50mと短い

ドローン到着後は搭載された料理を取り出し、盛り付けをした後に広場にいるお客さんに届ける形となります。ドローンが直接お客さんに料理を届ける訳ではないのですが、作りたての温かい料理を素早く届けられるメリットがあるのは確かです。

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▲到着したドローンから荷物を取り外しているところ。料理は改めて盛り付けられるため、そのままお客さんに提供される訳ではない

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▲盛り付けられた料理がお客さんの元に。今回配達されたのは「メズム東京」のスペシャルランチセットボックスで、実証実験での価格は4食分で2万円とのこと

JR東日本は今回の実証実験を実施した背景について、コロナ禍で外食産業が変化しフードデリバリーの需要が高まっていることを挙げています。ただ現在のフードデリバリーは、人が配送するため人件費がかかるのに加え、サービスの品質にもばらつきが生まれるなどの問題を抱えているといいます。

ですが人を介さないドローンであれば、よりスピーディーに配送できるというだけでなく、配送サービスの均一化を図ることができるのに加え、人に接触しないという安心感も得られます。そしてもう1つ、JR東日本がドローンの活用に期待しているのがエンタテインメント性だといいます。

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▲ドローンでのフードデリバリーはサービスの均一化や配送スピードに加え、未来感のあるエンタテインメント性も重視しているとのこと

そもそもドローンによるフードデリバリーというのは、現時点ではこれまでにない非常に珍しいもの。それゆえこの仕組み自体をエンタテインメント化することで楽しんでもらうことにも注力しているそうで、今回の実証実験でもお客さんが座る広場の各席にはタブレットが設置され、ドローンの飛行中の映像が見られる仕組みも整えられていました。

確かにフードデリバリーへの活用というのはこれまであまり見られなかったものではありますが、一方でドローンを活用した配送の実証実験自体はこれまでもいくつか実施されており、珍しさはありません。では今回の実証実験のポイントはどこにあるのかというと、人がいる場所でドローンの自律飛行を実施していることでしょう。

従来のドローン配送に関する実証実験はルートに人がいない場所を選んで飛行していました。ですが今回の実証実験は都心の複合施設、なおかつ人が多く訪れる時間帯に実施されており、周囲にたくさんの人がいる環境の中でドローン配送を実現している点が従来と大きく違う点となる訳です。

そしてこうした動きは、「レベル4」を見据えたものであることに間違いないでしょう。現行の航空法上、ドローンの飛行は運転・管理する人の目が届く“目視内”範囲で飛行させるレベル1〜2のみが認められており、人の目が届かない“目視外”でドローンを自律飛行させること自体は認められているのですが、それはあくまで人が住んでいない場所での飛行(レベル3)のみで、しかも事前に許可を取る必要があります。

ですが国土交通省は有人地帯での目視外飛行を実現するレベル4の実現に向けた取り組みを進めており、2022年にはレベル4の解禁に動くのではないかと見られています。ドローンによる荷物輸送を現実的な形で運用するにはレベル4が必須となることから、レベル4の解禁によってドローンによる輸送ビジネスが本格化すると見られているのです。

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▲有人地帯で目視外飛行を実現する「レベル4」が2022年に解禁されると見られていることから、今回の実証実験もそれを見据えた動きの1つといえる

それゆえドローンに関連する企業は、ここ最近レベル4の解禁に向けてドローンの事業拡大に向けた動きを積極化しています。実際NTTドコモも2021年11月18日、ドローンの事業ブランド「docomo sky」を新たに打ち出すとともに、LTEのネットワークを活用し目視外飛行を実現するセルラードローンに関する取り組みを強化するなど、ドローンビジネスの大幅な強化を打ち出しています。

そして今回KDDIらが実施した実証実験も、レベル4解禁を見越してよりコンシューマー向けに近い領域でのドローン活用を見据えたものであることは確かでしょう。ドローンや自動運転などはどんなに技術を確立したとしても、法整備が進まなければその利活用が進まないだけに、法整備によってドローンの活用の幅が広がることは大いに歓迎すべきことだといえます。

とはいえ今回の実証実験でも、ドローンが実際に飛行し、発着陸する場所は人が入ることのできない領域を確保した上で実施されており、安全性の配慮から多くの制約がある様子も見られます。もちろん安全性は非常に重要ですが、最近でいえば電動キックスケーターなどがそうであるように、日本人は特に安心・安全を強く重視するあまり利便性の高い技術の受け入れに相当慎重で、それが新技術の利活用を阻害している部分が多分にあるというのも正直な所です。

ドローンも同様に、あまり安全性への配慮により過ぎてしまうと利便性を大きく損ねてしまい、レベル4解禁となっても結局有効活用できない、といった事態になりかねないのが気がかりです。いかに社会に受け入れられる形でドローンのサービスを展開できるか、レベル4解禁後も各社の試行錯誤は続くことになりそうです。