▲「Galaxy Z Fold3 5G」。オプションの「Flip Cover with Pen」とともに

私物の「Galaxy Z Fold3 5G」が手元に届いて数日が経過した。「製品は3代目から完成度が上がる」というのは、IT業界ではよく知られた経験則。まあ、例外も多数あるのだが、少なくとも、サムスンの2つ折り路線については間違いなく「3代目はよくできている」と感じる。

▲購入したのはドコモ版。「ご唱和ください我の名を」と言いたくなる箱

一方で気になる存在もある。同じ時期に発売された「iPad mini」だ。どちらも片手で持てるサイズで画面も大きく、ペンで手書きができることから、「これどっちを買うのがいいの?」という話も聞かれる。

▲先日発売された「iPad mini」。Smart Folioをつけた状態で

結論を述べてしまうと「かなり違うものなので、どっちがいい、ではない」ということなのだけれども、それはどういうことなのだろうか? 両方を使い比べながら考えてみた。

▲Galaxy Z Fold3 5GとiPad mini、どちらがいいか、迷う人は多いらしい

似ているようで実は似ていない

Galaxy Z Fold3 5G(以下Fold3)はご存じの通り、2つ折りスマホのフラッグシップ。開くと正方形に近い7.6インチディスプレイとなり、片手でホールドしやすい。防水に加えペン対応、さらに日本向けモデルではおサイフケータイ対応と、スペックだけで言えば文句の付け所がない。

▲iPhone 13 Pro Maxと並べてみた。折り畳んだ状態だと、厚みはあるがより持ちやすい

▲折りたたみ部分。ディスプレイは若干折り目があるが、使っている時はさほど気にならない。防水・防塵なのでヒンジもしっかり
▲本体底面。右側(写真では上)のボディにUSB Type-Cのポートがある
▲本体裏面。ディスプレイ側を前にして、右側(USB Type-Cがある方)の裏に3眼式のカメラが
閉じたところ。ヒンジがある関係で各種ボタンは全てこちら側。左側にはSIMカードスロットがあり、中央に指紋センサー付きの電源ボタン。その上がボリュームボタンだ

価格は23万7600円(筆者が購入したドコモ版の場合)となかなかのインパクト。「いつでもカエドキプログラム」で24か月後に下取りしてもらう前提で買ったが、それでも14万2560円もする計算になる。

これに対してiPad miniは5Gでストレージを256GBにしたモデルでも9万5800円なので、値段だけでいえばiPad miniの圧勝ではある。

ただ、Fold3は高性能スマホでもあるわけで、この比較は少々アンフェアだ。iPad miniにスマホ(連携を考えるとiPhoneだろう)をセットで考えるべきだろう。筆者の私物(iPhone 13 Pro Max)同士での組み合わせでは、流石にセットだとFold3の価格を超える。

実のところ、ポイントは価格ではない。1つで済ますのか2つがいいのか、というポリシーの問題の方がずっと大きいのだ。

Fold3の利点はやはり「1つ」であること。荷物が減り、諸々のことが1台で済むのはやっぱり便利。詳しくは後述するが、電子書籍も、特に文字物が読みやすいサイズだと感じる。

意外な欠点は重量だ。1台は便利なように見えるが、その分、スマホとしては大きく・重く・分厚くなる。Fold3の重量は272g。iPhone 13 Pro Max(238g)よりさらに重い。厚みがあって折り畳むと縦長になる分、スマホとして持った時はかなりの「ずっしり感」だ。iPhone 13 Pro Maxとの差は40gなのだが、それ以上に重く感じる。

一方でiPad miniは297g(セルラーモデルの場合)と、Fold3よりさらにちょっと重いのだが、薄い板であることからくる重量バランスの問題か、そこまで重くは感じない。

Fold3の場合、持つ時には少しだけ折り曲げて、本を持つように支えると楽になる。二つ折りだからできることだが、意外なほどこれが使う上でのポイントだな、と感じている。

▲ちょっと折って立体的に支えると使いやすい

性能はiPad miniと互角に近い

さて、ちょっと性能も見てみよう。

Fold3のSoCはQualcommのSnapdragon 888。Geekbench 5でiPad miniと比べてみると、シングルコアCPU能力ではPad miniが、マルチコアCPU性能ではFold3が上、という結果が出た。価格差を考えるとiPad miniの「性能面でのコスパの良さ」が際立つ。

▲Fold3の、Geekbench 5でのCPUテスト結果
▲iPad miniの、Geekbench 5でのCPUテスト結果。シングルコア性能ではFold3に勝るが、マルチコア性能ではわずかに劣る

とはいうものの、アプリもOSも違うわけで、なかなか比べるのは難しい。同じようなアプリの動作速度を主観で判断すると、「あんまり変わらず、どちらも速い」としか言いようがない。

少なくとも、SoCの差でFold3かiPad miniかを選ぶ必要はない。まあ、実際には、そこで迷う人も少ないだろうが。

「二つ折り」だから存在するペンのクセに注意

性能という面で見た時、ちょっと面白いのはペンの使い勝手が違う、ということだ。

iPad miniでは「Apple Pencil(第2世代)」が、Fold3ではワコムの技術を使った「S Pen Fold Edition」もしくは「S Pen Pro」が使える。いずれも別売となる。

今回、Fold3ではS Pen Fold Editionの方を使ってみたが、書き味はいい。元々Galaxy Noteシリーズで定評があったもので、正直そこに疑問はなかった。同様にApple Pencilも、プロがイラストを描くのに使っているくらいで、書き味は問題ない。

ただ、Fold3は「2つ折り」であることもあって、中央部の書き味がどうなっているかが気になっていた。以下はFold3の発表映像からの抜粋だが、2つのセンサーを左右のディスプレイに置く形なので、間がどうなるのか、と思っていたわけだ。

▲Galaxy Z Fold3 5G発表会のプレゼンで示された、ペンセンサーの内部構造。左右に分かれて2枚配置されていることに注目

という点を頭に入れた上で、次の画像をご覧いただきたい。

Fold3の「Galaxy Notes」アプリで、線をささっと描いてみたものを、画像として書き出し。一番上の素早い描線や、真ん中の水色の線には問題ないが、ゆっくり描いた一番下の「黄色い線」に凹みがある点を見てほしい

これはFold3の「Galaxy Notes」アプリで、線をささっと描いてみたものを、画像として書き出したものだ。上のいかにもペンを素早く動かしたであろう部分にはなんの問題もない。だが、黄色い線に凹み」があるのにお気づきだろうか。

水色の線と黄色の線は、それぞれ定規を当てて引いた直線だ。違いは、水色がサッと素早く引いたものであるのに対し、黄色がゆっくりと引いたものである、ということである。要は、「ゆっくりと線を引くと、2つ折りの真ん中(見開きの印刷物でいう「ノド」の部分)で意図しない描線になる」ということだ。

種明かしをすると、理由は2つある。

もっとも影響が大きいのは、ディスプレイのノドのところにある「折り目」だ。折り目に沿って線が動くので、それが凹みに変わってしまいやすい。素早く動かせば凹みは気にならないが、ゆっくり描くと影響は出やすい。

また、中央部はペンの動きから補完的に描いているようで、ゆっくりペンを動かすとセンサー検知の「ぶれ」の影響を受けて線が若干不自然になる。この点も影響しているように思える。

別にこれが致命的だ、という話をするつもりはない。素早くメモを書く時、こうしたことはソフト補正のおかげでほとんど気にならない。Fold3におけるペンの主な用途はメモであり、そこでは問題ない、といって差し支えない。

ただ、「ノド」の部分でゆっくりと線を描くときにのみ影響が出る。イラストを描く人の場合、「細かくゆっくりとした描画をする際は、画面の中央を使わない」という配慮は必要だろう。

そもそも、イラストのために使うなら、折りたたみでないデバイスの方が向いているわけで、そういう人はiPad miniを選ぶべきなのかもしれない。

読みやすいサイズだが、課題は「アプリの対応」に

電子書籍を読む場合にはどうだろう?

こちらは写真を見ていただくとわかりやすい。どちらもKindleで拙著を読んでみた画面だが、片手で持って読みやすい。Fold3はちょっと折って「書籍的」に持つのが楽だ。iPad miniは横に持って読むパターンでもいいだろう。

▲Kindleで電子書籍(拙著・講談社新書「ネットフリックスの時代」)を表示。こう持つと、Fold3は実に「本」っぽい
▲きちんと開いてみた。タブレット的に使うならこれでも悪くない
▲iPad miniで同じ本を開くとこうなる
▲iPad miniで同じ本を読んでみる。こちらはいかにもタブレットでの読書。縦か横かはお好みで

ただ、コミックになるとちょっと変わる。

コミックの場合、本体を「縦」に持った場合、どちらも「1ページ」表示になる。Fold3はいかにも「本のように開いて見開きで読める」かと思いがちだが、そうではない。アプリ側の問題で、本を見開きで読めるのはFold3を「横に持った時」(すなわち、折る方向が「縦」の状態)だけだ。

このことから、電子書籍については見た目の印象とは異なり「完全に開いて横持ちで読む」のが最も汎用性が高い。

アプリ側の対応の問題、といってしまえばそれまでなのだが、まだまだ課題は多いようだ。

画面の広さを活かす「アプリ」対応が課題

「アプリの問題」は、Fold3を評価する上で常について回る課題である。

最適化が行われていると、縦持ち・見開きの画面を活かして情報をうまく扱えるのだが、そうでないと、他のスマホアプリと同じように「全画面」を素直に使う形になってしまう。

例えば「設定」。Fold3の基本機能なので、もちろん以下の画像のようにちゃんと左右に情報が分かれる。

▲設定画面などは、ちゃんと画面の広さを活かした作りになっている

だが、他のアプリは必ずしもそうではない。

例えばGmail。縦だと単にメールが並ぶだけだが、横に持つとメールの内容が隣に表示され、画面の広さを有効に使う。

▲Fold3の縦画面でGmailを使った場合。モザイクが多い点、ご理解を
▲Fold3の横画面でGmailを使った場合。縦持ちだとスマホでの画面が横に広がっただけだが、横持ちだとメールの内容一覧がつく

Outlookはその辺ちゃんとしており、縦画面でもその広さを有効に使ってくれる。

▲Outlookは折りたたみスマホへの最適化が進んでいるので、縦持ちのままでも画面を有効に使える
▲こちらはOutlookを横画面で表示した様子

この辺は特にFold3が「スマホである」から……という部分はあるかと思う。iPadも縦画面では間伸びしたアプリが多いのだが、iPadは「タブレットである」ことを想定し、より大きいモデルに合わせて作られたアプリも多い。その関係で、表示対応はFold3より納得感がある。

Fold3のように画面の広いスマホが増え、適切な対応をするアプリも増えてくると、この辺の事情は変わりそうだ。

もし「Galaxyキーボードが打ちづらい」と感じたら……

それらの点を除けば、Fold3はとても快適なスマホだと思う。なにより使っていてドキドキする。こういう新鮮さのあるデバイスはやはり楽しい。

一方、文字入力をしていてどうにもミスタイプが多いのが気になった。なぜだろう……と考え、キーボードを見比べて分かった。標準の「Galaxyキーボード」は、最下列とその上の列の並び方にクセがあるのだ。

▲一般的な配列の例として、MacBook Proのキーボード。「A」「S」「D」「Z」「X」「C」あたりの配列に注目。

▲iPad miniやiPhoneのソフトウエアキーボード。配列はMacBook Proに近い
▲Fold3標準の「Galaxyキーボード」。「A」「S」「D」「Z」「X」「C」あたりの並びがかなり違う
▲Fold3標準の「Galaxyキーボード」。キーボードを左右分割した時とそうでない時でも違う

一番上がMacBook Proの物理キーボード、次がiPad miniのソフトウエアキーボード、そしてその下がGalaxyキーボードだ。「S」の下のキーは並びが違うのがお分かりいただけるだろうか?

スマホの横幅だとあまり気にならなかったのだが、Fold3の幅だとこの「ずれ」が気になる。iPad miniと行ったり来たりしながら使っていると、「あれっ?」という違和感を感じ、冷静にチェックして違いを見つけた次第だ。

でも、解決策も簡単だった。「ATOK PASSPORT PRO」を入れることだ。日本語入力ソフトウエアの「ATOK」のAndroid版であり、プレミアム版に含まれるものだが、もともと契約していたので、Fold3の日本語キーボードをこれに入れ替えて使った。

この場合だと、真ん中を分割したキーボードであってもレイアウトの違和感が少なくなり、タイプミスが急に減った。

▲ATOK Passportのキー配列。よりPCの物理キーボードに近い
▲ATOK Passportのキー配列。キーを左右分割しても配列の差は小さい

これが気になるかどうかは、正直個人の好みかと思う。だが、意外とバカにできない違いではないかと思うのだ。QWERTYでタッチ入力する人は、ご自身もちょっとチェックしてみることをおすすめする。

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