アップルを意識するサムスンが「Galaxy Note20」を投入する狙い(佐野正弘)

スマホ首位奪還に向けた動きを解説します

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年08月6日, 午後 05:00 in Samsung
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Galaxy Note20

IDCやCanalysなどいくつかの調査会社によると、2020年4〜6月の世界スマートフォン出荷台数シェアで、サムスン電子に代わってファーウェイ・テクノロジーズが首位を獲得したことが明らかになりました。サムスン電子はスマートフォンで長らく首位を獲得してきただけに、四半期ベースとはいえファーウェイ・テクノロジーズがその座を奪ったことには驚きがありました。

Galaxy Note20
▲<a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000033140.html">Counterpoint Technology Market Research</a>の調査より。2020年第2四半期の世界スマートフォン出荷台数シェアでサムスン電子がファーウェイ・テクノロジーズに首位の座を譲っている

もっとも今回のシェア変動には新型コロナウイルスが大きく影響しており、中国で圧倒的シェアを持つファーウェイ・テクノロジーズが、中国市場の早期回復によって販売の落ち込みを防いだ一方、感染拡大が続き、市場の回復が遅れている欧米などに強いサムスン電子の販売が大きく落ち込んだのが要因のようです。とはいえ米国による制裁がなければファーウェイ・テクノロジーズがいつシェアを逆転してもおかしくない程の勢いがあったのも事実で、サムスン電子には一層の競争力強化が求められていたのも確かです。

そうした中、サムスン電子は米国時間の2020年8月5日に新製品発表会「Galaxy Unpacked 2020」を実施。スマートフォン新製品シリーズをはじめ多岐にわたる製品の投入を打ち出していますが、同社は首位奪還に向け、どのような戦略を取ろうとしているのでしょうか。

Galaxy Note20
▲「Galaxy Unpacked 2020」で発表された製品ラインアップ。スマートフォンやタブレットのほか、ワイヤレスイヤホンの「Galaxy Buds Live」とスマートウォッチの「Galaxy Watch3」も発表されている

今回の発表会で同社が最もアピールしていたのは、やはり「Galaxy Note」シリーズの最新モデルとなる「Galaxy Note20」です。今回はディスプレイが6.7インチ「Galaxy Note20」と、6.9インチの「Galaxy Note20 Ultra」の2モデルを用意しており、いずれもチップセットやカメラなどで非常に高い性能を持つフラッグシップモデルとなりますが、アピールポイントとなっていたのは同シリーズ最大の特徴となるペン操作です。

Galaxy Note20シリーズのSペンは、ディスプレイやソフトウェアの改善などによってペン入力時の遅延をApple Pencilと同じ9ミリ秒にまで短縮。従来より一層、ペンで紙に書くのに近い感覚を実現できるようになったことをアピールしていました。ここ最近はペンをリモコン代わりにしたり、ジェスチャー操作による便利機能が使えたりすることをアピールする傾向が強かったのですが、今回は最も基本的なペン自体の性能向上に力を注いでいる印象です。

Galaxy Note20
▲サムスン電子が新たに発表した「Galaxy Note20」シリーズ。Sペンでの入力時の遅延がApple Pencilと同等となるなど、ペンの基本機能強化を図っている

その傾向をより強く示しているのが、タブレット新機種の「Galaxy Tab S7」シリーズです。こちらもSペンによるペン操作を特徴としてアピールしており、ペン入力時の遅延も9ミリ秒に抑えることでクリエイティブ用途への活用をアピールしていました。

しかもGalaxy Tab S7シリーズは、ディスプレイが11インチ液晶の「Galaxy Tab S7」と、12.4インチ有機ELの「Galaxy Tab S7+」の2機種を用意し、チップセットにもGalaxy Note20シリーズ同様、最新のハイエンド向け「Snapdragon 865+」を採用。さらには漫画やイラストの制作に定評のある「CLIP STUDIO PAINT」と協業して初のAndroid端末向け配信を実現し、一定期間はGalaxyシリーズ限定で配信することをアピールするなど、かなりiPad Proを意識している様子がうかがえます。

Galaxy Note20
▲Galaxy Note20と同等の性能を持つSペンを備えた「Galaxy Tab S7」シリーズ。近年のGalaxy Unpackedでタブレットがここまで大きく扱われたのは異例だ

またペンに共通した特徴を持たせていることもあって、今回の発表ではGalaxy Note20シリーズと、Galaxy Tab S7シリーズをほぼ同列で紹介していたことも注目ポイントと言えるでしょう。これまでのGalaxy Unpackedではタブレットにフォーカスが当たる機会が少なかっただけに、ここまでタブレットに注力してきたということは、それだけアップルを強く意識しており、クリエイティブを主体としたビジネスユースに入り込みたい狙いがあると言えそうです。

そしてもう1つ、アピールしていたのがマイクロソフトとの協業による連携強化です。サムスン電子は前機種となる「Galaxy Note10」シリーズを発表した2019年にマイクロソフトとの提携を発表し、Windowsなどとの連携強化を進めていますが、今回はさらなる連携強化が進められている印象です。

実際、今回の発表では、Galaxy Noteシリーズに搭載されている「Samsung Notes」と、マイクロソフトの「Outlook」や「OneNote」と同期する機能を近日中に提供するとしたほか、Samsung Notesから「Word」だけでなく「PowerPoint」形式でのエクスポートが可能になっています。

Galaxy Note20
▲手書きメモの「Samsung Notes」はマイクロソフトのサービスとの連携を一層強化。OneNoteとの同期や、PowerPoint形式でのエクスポートなどが可能になるという

そしてもう1つ、新たな連携策として打ち出されたのが「Xbox」です。マイクロソフトはGalaxy Note20シリーズやGalaxy Tab S7シリーズで、現在海外でベータ版のサービス提供がなされているクラウドゲームサービス「Project xCloud」を利用できるようにすることを発表。サブスクリプションサービスの「Xbox Game Pass Ultimate」を利用している人がその対象となり、100以上のクラウドゲームがプレイできるとしています。

Galaxy Note20
▲マイクロソフトは「Project xCloud」をGalaxy Note20シリーズなどに向けて提供することを発表。専用のコントローラー同梱パッケージも提供されるようだ

マイクロソフトとビジネスだけでなくゲームでも連携を図ってきたことには驚きがありますが、スマートフォンメーカーのなかでは非常に高いシェアを持ち、以前よりサービス面でも独立志向が強かったサムスン電子だけに、マイクロソフトという強力なパートナーを得たことで、コンテンツ・サービスの面でも独自性を発揮し製品の魅力を高めたい狙いがあると言えそうです。

こうした傾向を見ると、サムスン電子が新製品でライバルに据えているのはやはりアップルではないかと感じてしまいます。アップルはiPadのビジネス化を推し進めて一定の成功を収めていますし、最近では「Apple Music」などのサービス面でも人気を獲得し、コロナ禍でハードの販売が落ちてもサービスがそれを補うという体制を作り上げていますが、今回の一連の取り組みからは、そうしたアップルの強みに対抗するべく、ペン操作やマイクロソフトとの連携強化を進めているように見えるのです。

なぜ首位を奪われたファーウェイ・テクノロジーズに直接対抗するのではなく、アップルへの対抗を打ち出すのかと言えば、それは市場環境にあると言えそうです。というのも現在、米国や中国の市場は政治の影響を強く受けているため、サムスン電子が企業努力だけで中国でのシェアを伸ばすのは難しい状況にあります。それだけに自身が強みを持つ米国などで、アップルからシェアを奪うのがサムスンの狙いどころとなっているのではないでしょうか。

もちろん、強度面での弱点を克服しディスプレイの強化が推し進められた折り畳みスマートフォン「Galaxy Z Fold2」をあえて正式発表前にチラ見せしたことは、折り畳みスマートフォンでライバルとなるファーウェイ・テクノロジーズとの対抗と見ることができるかもしれません。ですが米中対立が市場に大きな影響を与えている現状では、競争相手を政治的影響に左右されにくいアップルに据えた方が現実的と、サムスン電子は捉えていると言えそうです。

Galaxy Note20
▲「Galaxy Z Fold2」は外側のディスプレイを6.2インチに大画面化し、内側ディスプレイのフロントカメラをパンチホールに変更するなど強化が図られ、さらに強度を高めるための工夫も多く取り入れられているという。詳細は9月に改めて発表するとのことだ


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