一見してまず、もりいくすお氏が描く登場人物達の絵がいい! 癖が強く味のある面差し、おまけに演じる声優陣の技も加わり、濃いおっさん、おばさん目白押し。(もちろん、若者や子供もいます)

本作「ラーメン橋」はそんな濃い感じの人々と関わりながら、戦後間もない1950年代から1990年までの40年に渡り、主人公、寿 秀蔵(ことぶきひでぞう、声・銀河万丈)の半生を体験する、パッケージにも謳われる「人生シミュレーションドラマ」だ。

物語は連続ドラマ風に展開する。1話毎に事件が起き、秀蔵はラーメン作りで事を解決するのだが、まず初めにこれから作るラーメンの名前を決めてしまうのが面白い。曰く、

  • 「空手チョップラーメン」

  • 「男ドアホウラーメン」

  • 「イカすさらさらストレートメン」

  • 「2001年宇宙のラーメン」

  • 「人間のプライドラーメン」

  • 「激辛三途の川ラーメン」

  • 「バカにつけるラーメン」

名前だけでも気になりますよね? 時代が古い物だと、今では手に入らないであろう調味料などが使われていて興味深い。

町を巡り少しずつ食材を集め、試作を繰り返し、一般客の反応を見て、改良を加えてゆき、その回のラスボスを唸らせる一品を完成させた(あるいは期限いっぱいになった)段階で、ラーメン勝負になるのだが、勝っても負けてもゲームオーバーにはならず、物語は続いてゆく。

そうはいってもやはり勝って話を進めたいと思う私。ところがこのゲーム、現代の様なユーザーフレンドリィな仕様などなく、セーブは1話ごと。1話当たりのプレイ時間は30分から1時間程度なので、最後の勝負に負けてやり直すのは、その話の始めからという事になる。これは中々骨だ。

ゲームの制作者はこう言いたいのかもしれない「人生にセーブなどない、どの道を行こうとも、それで良しとしろ!」と。

当時私がプレイした際には攻略本もインターネットの攻略情報もなかったので、ただただ心の赴くままにプレイしていた。町の人々から情報や食材を集める際に、商店なら買い物、飲み屋なら一杯やる。何も手に入らない時など、何杯も飲む羽目になるのだが、実はこれが後々の主人公秀蔵の見た目に影響を及ぼす事になるとは知る由もなく、やたらに酒ばかり飲んでいた私の秀蔵は後年、目じりがさがった鼻の頭が赤い、いかにものん兵衛といった、なんとも絞まりのない顔になってしまった。

そう、冒頭に書いた通り、ゲーム内の時間が40年程流れるので、秀蔵を始め、町の人達もどんどん年を取り、外見が変化してゆくのだが、ただでさえ濃い登場人物達は何というか……どんどんクドくなってゆくのだ。その絵がまたいい!

秀蔵の外見が作られてゆく要素は、私がプレイして知った限りではもう一点ある。一般の客に「まずい」と言われた時に、リアクションを取る事ができ、「何もしない」「脅す」「詫びる」「笑わす」「口説く」「説教する」の六つだ。客にもそれぞれ性格があり、このリアクションによっては、まずい評価を取り下げたりするが、失敗すると怒られてしまう。そして強硬なリアクションを取り続けていると、後年、頑固じじいといった面構えに、弱腰なリアクションだとふにゃふにゃしたじじいの風貌になってしまうのだった。

ここまで、つらつら思い出と共に書き連ねると、プレイした22年前の感じが蘇ってくる。本作はゲームという体裁をとってはいるが、「攻略」とか「速解き」とか「アイテムコンプリート」といった、ゲーマー御用達の概念は似つかわしくない。古いゲームだが、もしプレイする機会があるのなら、ただ、あなたの秀蔵の行く末を体験し、見守ってほしいのだ。

「じゃあネットでプレイ動画を見ればいいか。」だって? いやいや、ぜひ自らの五感を駆使して秀蔵の人生に関わってくださいな。そこがテレビドラマとゲームの大きな違いなのだから。


うえけんWiki

上野 顕太郎(うえの けんたろう、1963年4月18日 - )は、かなりアナログな漫画家である。デジタルなEngadgetとの接点は編集長が20年前、ゲーム誌編集者であったとき連載を担当したからと言われる。よく使うフレーズは「暇だからな!」......というわけで、かつてプレイした方もいるだろうマニアックなゲームを掘り起こし、あの当時を偲んでいただきます。


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