[名称] Magneto-Optical Disk(MO Disk)
[種類] 光磁気ディスク
[記録方法] 光強度変調方式、MSR(Magnetically induced Super Resolution、磁気超解像)方式
[サイズ] 約86mm
[容量] 1.3GB
[登場年] 1999年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「GIGAMO」(1.3GB MO)は、富士通とソニーによって開発された、3.5インチ光磁気ディスク。磁気超解像(MSR)という技術を使い、第1世代となる128MB MOの約10倍、ひとつ前の640MB MOと比べても約2倍という大容量を実現しました。

MOは、高温(キュリー温度)で磁性が失われ、低温で磁力を保持する磁性体材料を記録層に採用。書き換えたい部分にレーザーを照射して加熱し、外部から磁界を加えながら冷却することで記録しています。この記録された磁性の向きがデータとなるわけです。

従来MOについては、すでに紹介している最初の128MBZCAVを採用した230MBマークエッジ記録となった640MBの各記事を参考にしてもらうとして、GIGAMO最大の特徴となる磁気超解像(MSR)について簡単に紹介しましょう。

同じ面積で容量を増やすには、記録密度を高める必要があります。最もわかりやすいのが、使用するレーザー波長を短くすること。赤色レーザーから青紫レーザーになったBDで大容量化を果たしているのがいい例でしょう。ただし、この方法では従来のメディアが読み書きできず、下位互換性がありません(ちなみにBDドライブは、DVDやCD用の赤色レーザーも搭載して対応しています)。

MOは640MBの時点で光の回折限界……つまり、データのサイズが読み取れる限界まで小さくなっていました。これ以上小さくすると複数のデータがレーザーのスポットに入ってしまい、正確なデータが読み取れないわけです。

そこでGIGAMOが採用したのが、磁気超解像(MSR)。MSRにはいくつかの種類がありますが、使われているのは「ダブルマスクRAD」(D-RAD、Double-mask Rear Aperture Detection)です。これは磁気的結合が強い記録層、中間層、再生層の3層構造となった磁性膜を採用し、温度特性の違いにより、読み取りたいデータだけを記録層から再生層へと転写できるというもの。

再生層には読み取りたいデータだけがある状態なので、前後のデータがジャマになることなく、正確に読み取れるわけです。

もうちょっと具体的に説明しましょう。

この磁性膜は、温度が上昇していくと記録層と中間層の結合が弱まり、さらに温度が上昇すると結合が強くなる、という特性があります。

外部から磁界をかけつつ温度を上げていくと、記録層と中間層の結合が弱くなり、中間層が外部磁界と同じ向きにそろいます。この変化に引っ張られ、再生層も磁性の向きがそろいます。(1)

さらに温度が上がると、今度は記録層と中間層の結合が強くなり、中間層は外部の磁界とは関係なく記録層の磁性に引っ張られて変化し、再生層へとデータが転写されます。(2)

もっと温度が上がると、中間層が磁性を失うキュリー温度に達し、再生層との結合が失われるため、再生層は外部磁界と同じ向きにそろうことになります。(3)

(1)と(3)によってデータの前後がマスクされ、(2)で転写されたデータだけが読めるようになる、というわけです。

GIGAMOの特徴についてはこのくらいにして、実際のカートリッジがこちらです。

カートリッジサイズは90×94×6mmと従来のMOと全く同じ。横にスライドするシャッターを備え、ディスク面を守っているという構造も同じです。

リムーバブルメディアでよくあるドライブの下位互換性は、1つ前世代の読み書き、2つ前世代の読み込み、3つ以上前世代は非対応……というものなのですが、GIGAMO対応ドライブは違います。128MBから640MBまで、過去のすべての3.5インチMOを読み書きできるようになっていました。

過去の規格を捨てないというのはユーザーとしてはうれしいものの、進化の妨げともなってしまうため、どちらがいいのかは何とも言えません。

セクタサイズは、前世代となる640MBのMOから2048バイト/セクタへと変更されましたが、GIGAMOでも2048バイト/セクタを継承しています。一方、互換性のために残されていた512バイト/セクタ(前世代でいう540MB)はなくなりました。

シャッターを開いたディスク面は、従来とそれほど変わりません。記録密度がほぼ一定になるZCAVとなるため、区切りとなるマークが少しずつズレているのが分かります。

GIGAMOでの大きな変化のひとつが、書き込みが内周からではなく、外周からへと変更になったこと。これにより、最初から最大速度で書き込めるようになりました。通常、メディア満杯までデータを書き込むというのは稀なので、従来は最大速度で使えることが少なかったわけですが、GIGAMOではこの点が改善されました。

カートリッジをよく見ると、「1.3GB」と「2048 byte/sector」の文字の下に、「Media ID」というのがあります。これはMOでコンテンツ保護機能を実現するため、カートリッジ固有の番号を付加するというもの。音楽や映像などのデジタルデータ書き込み時、このMedia IDを使って暗号化することで、他のメディアへの不正コピーが防げるわけです。

元々純粋なストレージとして登場しており、コンテンツ保護が考えられていなかったための後付け機能ですね。なんとなく、ID付きスマートメディアを思い出したりしました。

MSRという技術の導入で容量を約2倍に増やしたGIGAMOですが、その代償として、書き換え回数が従来より激減。従来は1000万回以上とされていましたが、GIGAMOは100万回以上と1桁少なくなってしまいました。

そうはいっても、100万回。相変化記録のDVD-RAMが10万回以上、CD-RW/DVD-RWは1000回以上といわれているのと比べれば、光磁気ディスクが優秀だというのは変わりません。

ただし、従来の限界を超えた新メディアとして登場したGIGAMOですが、登場時期がCD-Rの低価格化とほぼ同じで、安く大容量データを扱いたいという人にとっては魅力が薄くなってしまいました。

640MBまではMOを使っていてもGIGAMOには乗り換えず、CD-R/RWへと移行したという人も多かったのではないでしょうか。

連載:スイートメモリーズ

参考:

富士通とソニーが、1.3GBの3.5型光磁気ディスクシステムを共同開発, ソニー
世界で初めて、MSR方式を採用 大容量1.3GBの3.5型光磁気(MO)ディスク装置を新発売, 富士通
“GIGAMO(ギガモ)”規格に準拠し、1.3GBを達成した3.5型MOディスク発売, ソニー
磁気超解像による光磁気ディスクの高密度化, 応用物理 第64巻 第5号 1995, J-STAGE
高密度ストレージ技術, 富士通
3.5型MOの「メディアID」機能を推進することで合意, 富士通