Pixel 6 Masahiro Sano

秋から冬に向けたスマートフォン新機種の発表シーズンが近づきつつありますが、中でもいち早く大きな動きを見せたのがグーグルです。グーグルは2021年8月3日、突如SNSなどでスマートフォン新機種「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」を披露。その後Google StoreにもPixel 6シリーズの概要が掲載され、同シリーズの正式投入を明らかにしています。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲Google Storeには「Pixel 6」シリーズの情報が掲載。発売はまだ先ながらも外観をはじめいくつかの情報が掲載されている

ただ現状公表されている情報はあまり多くなく、発売時期も「2021年後半」とされているのみ。グーグルは既に「Pixel 5a」を日米で販売すると報道されていることから、そちらも含めた詳細は恐らく、今後実施されるであろう発表イベントで明らかにされるのではないかと考えられます。

ただ少ないながらも、現在公開されている情報からいくつか特徴は見て取ることができます。1つはPixel 6シリーズの色と外観で、カメラは採用するセンサーが大きくなったせいなのか、スクエアではなくバーのように横一線に出っ張った、かなり目立つデザインへと変更されています。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲背面のデザインは、カメラ部分がバーのような形状に変更。カメラ性能の向上が期待できる一方、出っ張りはかなり目立ちそうだ

そしてもう1つはAndroidの最新バージョン「Android 12」の搭載で、こちらは従来のPixelシリーズが最新のAndroidを搭載していたことを考えれば妥当といえるでしょう。ですが従来とは明らかに違っていたのがチップセットです。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲統一感のあるデザインに刷新されたAndroidの最新バージョン「Android 12」を搭載することも明らかにされている

というのもPixel 6シリーズは、いずれもグーグル独自の「Tensor」というチップセットを搭載するというのです。従来のPixelシリーズはいずれもクアルコム製のチップセットを採用してきましたが、ここにきてグーグルは独自のチップセット採用に舵を切った訳で、かなり思い切った方針転換を図っているのです。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲Pixel 6シリーズは既製のチップセットではなく、グーグルが独自に開発したチップセット「Tensor」を搭載しているのが最大の特徴といえる

そうしたことからPixel 6シリーズは、Tensorが大きな鍵を握ると考えられますが、Tensorが何に力を入れたチップセットなのかというのは、その名前から見て取ることができるでしょう。というのもグーグルは既に、オープンソースの機械学習プラットフォーム「TensorFlow」を提供しており、機械学習に特化したプロセッサ「TPU」(Tensor Processing Unit)をクラウド向けに開発しているからです。

それゆえTensorの名前を冠しているこのチップセットは、TPUの技術を取り入れてAIや機械学習関連の処理に力が入れられたチップセットと見ることができる訳です。グーグルはTensorの活用であらゆる機能の強化を図るとしていますが、中でも明確にされている1つがカメラです。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲グーグルはクラウド向けにTPUという機械学習に特化した独自のプロセッサを開発しており、Tensorもそれらの名称から取られたものと考えられる

グーグルはこれまでのPixelシリーズでも、機械学習をフル活用したコンピューティショナルフォトグラフィーによって夜景を綺麗に撮影したり、被写体を認識したりするなどの取り組みをしてきました。そうしたことからPixel 6では、Tensorを生かしたコンピューティショナルフォトグラフィーのさらなる強化で、撮影機能の大幅な強化が図られるものと考えられそうです。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲グーグルはPixelシリーズのカメラに機械学習技術を積極活用し、夜景撮影の強化や被写体認識などの機能を追加してきた

そしてもう1つは「音声認識」です。グーグルはAndroidスマートフォン向けに、英語のみですが音声を字幕にしてくれる「自動字幕起こし」を提供しているほか、Pixelシリーズ向けにも、やはり英語のみですが音声をテキストに変換してくれるボイスレコーダーアプリを提供するなど、ここ最近音声認識を活用した機能力を入れています。

そして音声認識は機械学習が大きな効果を発揮する分野の1つでもあることから、Pixel 6シリーズではTensorの活用により、音声認識を生かした機能の大幅な強化を図ることが考えられる訳です。とりわけ職業柄文字起こしの機会が多い筆者としては、ボイスレコーダーアプリのテキスト変換の日本語対応に強く期待したい所です。

Pixel 6 Masahiro Sano
▲グーグルはPixelシリーズ向けに独自のボイスレコーダーアプリを提供、英語のみだがテキストの文字起こし機能を備えている

そうしたことからTensorを搭載したPixel 6シリーズの進化には期待が集まる所ですが、機械学習処理をはじめとしてチップセットの性能が年々向上している中にありながら、スマートフォンでシェアが大きいとは言えないグーグルが、なぜ多額のコストをかけて独自のチップセットを手掛ける必要があったのか?という点には疑問も残ります。

そこにはグーグルのハードウェア戦略が大きく影響しているといえそうです。グーグルは「Nexus」から「Pixel」シリーズに移行して以降、自社製スマートフォンを「Androidの標準機」から「AI技術をフル活用したグーグルのオリジナルスマホ」へと位置付けを大きく変えており、強みとする機械学習技術を生かした独自性を打ち出す事に力を入れてきました。

ですが既存のチップセットを使っていては、その強みとなる機械学習の部分で他社と横並びになってしまい、差異化にも限界があります。一方でアップルや(かつての)ファーウェイ・テクノロジーズなどは、自社独自のチップセットを開発して機械学習などの性能を強化し、それを自社スマートフォンの強みへと生かしてきました。

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▲米国の制裁でチップセット開発が思うように進められなくなったファーウェイ・テクノロジーズだが、かつては機械学習処理を強化した独自のチップセットを開発し、他社との差異化を図っていた

そうしたことからグーグルも、独自のスマートフォンで差異化を図るには独自のチップセットが必要と判断、Tensorの開発に至ったのではないかと考えられる訳です。ただ一方で、グーグルはAndroidを多くのハードウェアメーカーにライセンス提供している立場でもあり、独自のチップセットでスマートフォン事業を強化すると競合からの反発も出てくる可能性もあるでしょう。

そこでグーグルはPixel 6シリーズを、ミドルハイで比較的購入しやすかった前機種のPixel 5とは異なり、ハイエンドモデルとして提供することで他社と差異化していくのではないかと考えられます。日本では国内メーカーが力を入れていることからハイエンドモデルは競争が激しいですが、海外に目を移すとハイエンドモデルで存在感を発揮しているのはアップルとサムスン電子くらいで、あまり競争が激しくない分野でもあります。

そうしたことからグーグルは、Pixel 6シリーズをハイエンドモデルとして投入し、ある意味自社技術のショーケースとして打ち出すことで、他社からの反発を抑えるのではないかと筆者は推測しています。ただいずれにせよ、Pixel 6シリーズはTensorの搭載で従来のPixelシリーズから大きく変化したモデルとなることは確かでしょうから、今後の発表内容にはぜひ注目しておきたい所です。


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