[名称] Hi-MD
[種類] 光磁気ディスク
[記録方法] レーザーストローブ磁界変調方式
[サイズ] 64.8mm
[容量] 1GB
[登場年] 2004年~2012年

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「Hi-MD」は、ソニーによって開発された光磁気ディスク。音楽用のMDから始まったMiniDisc(MD)の最終形といえるもので、1GBの大容量というだけでなく、音楽とデータ、どちらの用途としても使えるようになったのが特徴です。

最初のMDは、データ用としてMD DATAという容量140MBの規格があり、音響機器やデータ機器で採用されたほか、PC用のドライブも登場していました。しかし、フォーマットが独自だったことに加え、PC用ドライブでは読み書き速度が遅く、汎用ストレージとして使うにはかなり厳しいものでした。

続くMD DATA2という規格では、容量が650MBへと増加。速度もある程度改善されていたものの、対応機器が「MD DISCAM」(DCM-M1)というビデオカメラしかなく、PC用のドライブがなかったこともあって普及には至りませんでした。

その後、Net MDというPCと接続できる規格も登場しましたが、これは基本的には音楽MD用。音響機器からしかMDへと録音できなかったものを、PCから音楽ファイルの転送で録音できるようにしたものです。あくまで音楽用ですからデータは扱えませんが、PCで音楽管理をしたいという人には便利なものとなりました。

MDが音楽用以外で成功していない理由を振り返ってみると、オープンなところへ自社製品の独自規格を持ち込もうとした、という部分にありそうです。とくにPCは汎用的なハード・ソフトの集合体ともいえるものだけに、独自規格のものは使いにくく、なかなか普及しません。

そこでHi-MDは従来から大きく方針を変え、フォーマットに汎用的なFATを採用。対応ドライブを接続すれば、PCからリムーバブルメディアとして使えるようになりました。また、音楽ファイルもこのFAT上に暗号化して保存する方式へと変更されています。こうすることで、音楽・データの区別なく使えるようになったわけです。

今までの音楽中心のMDから考えると大きな変化ですが、実は、すでにフラッシュメディアで取られてきた方法と同じ。成功しているものから学んだ結果とも言えます。

といったところで、1GBのHi-MD専用メディアを見ていきましょう。

基本的な外観は、従来MDと変わりません。MD DATAやMD DATA2では右上の角が斜めにカットされていましたが、Hi-MDでは丸くなっているのが違いといえば違いでしょうか。

とはいえ、この丸くなってるのは音楽MDと同じですけどね。ある意味、データ用との区別をしないという意気込みかもしれません。

裏面を見てみましょう。

初期のMD DATAやMD DATA2のような中央部分まで守ってくれるシャッターではなく、音楽用と同じ、短いシャッターとなっている点が大きな違い。

それ以外にこれといった特徴はないですが、強いて言いうなら「Hi-MD」というロゴが大きく刻印されているのが印象的ということでしょうか。

Hi-MDのメディアは初期モデルの「HMD1G」と、後継モデルの「HMD1GA」の2種類ありますが、この写真は初期のもの。後継モデルは、青く内部のディスクが透けて見えるデザインが採用されています。ちなみに後継モデルでも、背面のHi-MDロゴの刻印は健在でした。

内部のディスクは、色が少々金色がかっています。せっかくなので、MD DATAのものと比べてみましょう。

実は色が違うだけでなく、Hi-MDは従来のMDと物理的に大きく異なります。

通常、データ容量を増やすには高密度化すればいいのですが、いくら高密度に記録ができても読み出せなければ意味がありません。Hi-MDの記録密度はレーザーのスポットサイズよりも小さく、従来の方法では読み出せないほどになっているので、まさに、この問題にぶつかったわけです。

この問題を解決するため、Hi-MDでは「DWDD」(Domain Wall Displacement Detection、磁壁移動検出)という技術を採用しました。

言葉で説明するのは難しいのですが、ザックリと説明してみます。

まず、ディスク面が、データを読み取るための移動層、一定以上の温度で磁力が消える切断層、データが書き込まれている記録層の3つの層からなるとしましょう。

通常は記録層のデータ(磁化情報)が移動層まで転写されているのですが、レーザーを照射すると温度が上がり、中間にある切断層の磁力が失われてしまいます。すると記録層のデータが移動層まで伝わらなくなり、移動層は簡単に書き換わるようになります。

この書き換わりやすくなった部分へ周囲の磁壁(データの端)が移動してくるため、まるでデータが引き延ばされたかのようになります。この引き延ばされたデータはレーザーで読み取れるサイズとなるため、通常では読めない小さなデータも読めるようになる、というわけです。

Hi-MDのディスクはこのDWDDを実現するため、通常のMDとは異なる層構成となっており、それが色の違いとして見えているのでしょう。

なお、磁気超解像のD-RADを使うGIGAMOとは原理は異なるものの、レーザーのスポットより小さなデータを読み出す技術という意味では同じですね。

Hi-MDは専用メディアを使うことで1GBの大容量を実現していますが、それ以上に注目されたといっても過言ではないのが、従来の音楽用MDをデータ用として転用できたこと。80分のMDで約305MBのファイルを保存できますから、ちょっとしたデータの受け渡しなどには十分です。

ここで詳しい人なら気づいたかもしれませんが、MD DATAの容量は140MB。いくら80分のMDとはいえ、2倍以上の容量になるのは不思議です。

実はこれ、Hi-MD用のフォーマットのおかげです。物理的には従来のMDと同じなのですが、データ変調方式やビット長などを変更することで、記録容量を大きく向上させることができました。

主な仕様をMD、MD DATA2、MDのHi-MDフォーマット、Hi-MDの1GBディスクの4つでまとめてみたので、参考にどうぞ。一部、正確な情報が分からず予想が含まれているので注意してください。

こうして見ると、レーザー波長の異なるMD DATA2は、物理的に全く異なるものだというのがよくわかります。Hi-MD対応ドライブがMD DATA2をサポートしていなかったのも、当然ですね。

もしHi-MDがPC用のストレージとしてもヒットしていれば、ランド&グルーブ記録のサポート、レーザー波長の変更などによる大容量化もあったかもしれません。

ただ現実はそんなに甘くはなく、せっかく使いやすくなったとはいえ、すでに低価格なメディアとしてはCD-RやDVD-R/RWが登場済み。また、フラッシュメモリーを使ったメディアも高速化、大容量化、低価格化が進んでおり、これらに対抗するのは厳しいものがありました。

なお、最長45時間録音(ATRAC3plus 48kbpsモード)、リニアPCM対応(16bit/44.1kHz、1時間34分)、MP3対応(後に追加)など、音楽用として見ると使い勝手は悪くなく、以前からMDを使っている人であれば、悪くないアップグレード先といえるでしょう。

そこそこ対応機器は登場しましたが、そのほとんどが音楽向け。PC専用ドライブとして「DS-HMD1」という製品が登場したりもしましたが、PC用のストレージとしてはほとんど使われませんでした。

連載:スイートメモリーズ

参考:

MDをブロードバンド時代対応の汎用メディアに進化させた「Hi-MD」規格を策定, ソニー
磁壁移動検出(DWDD), J-STAGE

ソニー、1GB記録が可能なMD新規格「Hi-MD」, Impress
「Hi-MD」規格対応 MDウォークマン3機種、デスクトップオーディオ1機種 計4機種発売, ソニー
「Hi-MD」, ソニー
HMD1GA/3HMD1GA, ソニー
DCM-M1,MMD-650A, ソニー
DS-HMD1, ソニー
Hi-MDディスク『HMD1GA』出荷完了の時期変更のお知らせ, ソニー