Christopher Dutton
Christopher Dutton

われわれの腸内には微生物が塊になって生息する腸内細菌叢(腸内フローラとも)があり、これらの細菌は食物の消化に役立つだけでなく、近年では免疫や健康状態そのものへの影響があることも研究によって明らかになりつつあります。人によっては、腸内細菌の構成バランスによってメラノーマやアルコール依存、自閉症にまで影響があると考えられており、糞便移植によってこのバランスを改善することで有益な効果がもたらされることもわかってきました。

フロリダ大学、イェール大学などからなる研究チームは、野生動物の世界ではこの腸内細菌がどのようにして受け継がれているのかを調査するため、アフリカのカバが密集する水辺の状況を調べることにしました。

そうしてたどり着いたのが、アフリカの ”マラ川” 。この一帯には4000頭を超えるカバが生息しており、水辺は押しくらまんじゅう状態です。チームを率いるフロリダ大学のクリストファー・ダットン氏いわく「カバのプールになっているところへ行くと水面には大量のウ〇コが浮いていて、その下が水なのか汚泥状にグッチャグチャなのかもわからない」とのこと。

アフリカに生息するカバは夜行性で、昼間の暑い時間帯は長くて16時間も川の水に浸かって過ごし、夜になると陸に上がって草を食べる生活を送っています。その大きな身体を維持するために食欲は凄まじく、毎日およそ45kgもの草を食べるといわれています。

ものすごく食べるなら、そのあと出るほうもものすごいことが容易に想像できます。当然、昼間はそのまま水中で排出するため、腸内細菌も一緒に水中に放出されることになります。

すべての動物は、個々の腸に固有の微生物叢を持っていますが、研究チームは、これが外部の共有環境に放出されるとどうなるのか。研究チームはこれを調べるため、RNA-Seq(RNAシーケンス)と呼ばれる手法などを用いて、カバプールの底にある細菌を分析しました。その結果、カバのプールの底の細菌の状態が通常の川よりもカバの腸に似ていることがわかりました。

カバたちは自分の腸内細菌叢を群れが共有する水辺に放出することで、その水辺を一種の「メタ腸」にし、その水を(無理やり名付ければ)「プロバイオティクスシェイク」状態にしていました。ダットン氏はこの環境が「カバが微生物を互いに共有し、水を作るのに役立っている可能性がある」と述べています。しかし一方では、この水質がそこに棲む魚などほかの生物にも影響を及ぼす可能性もあるとしました。

さらに、カバ糞濃度が最も高い水域では、そこからわいて出るメタンガスの濃度が「クソ高い」のがわかったとのこと。ダットン氏は「もし米国でこの濃度を検出すれば爆発の危険があると宣言される」レベルだと付け加えました。

研究チームは「近年、動物のウ〇コが生態系内の栄養循環や生物化学に影響を与えているとの認識が広まってきている」として、今回発見したような「メタ腸環境」が食物連鎖に与える影響、そこにいる魚類や無脊椎動物に与える影響を引き続き調査したいとしています。またカバ以外の動物のメタ腸環境を探し、さらに踏み込んだ調査研究をすることを考えて興フンしていると述べています。

Source:Scientific Reports

via:University of Florida