香港の交通系ICカード「八達通」(Octopus)がついにApple Pay対応:モバイル決済最前線

ついにApple Payで乗車可能に

鈴木淳也 (Junya Suzuki)
鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2020年06月2日, 午後 05:15 in news
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Appleが6月2日に配信を開始したiOS 13.5.1のアップデートで、ついにApple Payにおける「八達通(Octopus)」をサポートした。

八達通は香港で利用可能な交通系ICカードで、地下鉄やバスなどの公共交通のほか、コンビニやカフェなどの支払いにも使えるため、香港内を周遊するうえでなくてはならないカードだといえる。

また八達通は継続提供されているサービスとしては世界初の非接触ICカードを採用した交通システムでもあり、FeliCaが採用された最初の事例でもある。

一方で日本のSuicaとは異なり、長らく物理カード形式での提供しか行われておらず、モバイル対応が進まなかった。2014年にCSLのネットワークに対応し、NFC搭載スマートフォンで八達通と同じ機能をエミュレーション形式で提供するプリペイドSIMが7-Elevenで販売開始され、ようやくモバイル八達通の下地が出来上がった。

ただ、Type-A/B環境でFeliCaエミュレーションを実現する仕組みを開発したソニーによれば、こうした形で本来はFeliCaサポートしない端末上に同機能を実装するのは検証などの手間が大きいとの理由であまり拡大せず、最終的にSamsung Payなどの端末メーカーが自身のスマートフォンに直接実装する形式にシフトしていったという。

実際、Androidにおける交通系ICカードの実装は、中国国内でHuaweiやXiaomiが端末で直接サポートを行っているように、ハードウェアベンダーの実装に委ねられている傾向がある。

これはiPhoneでも同様のことがいえ、Apple Payにおける交通系ICカードのサポートとして、中国向けには北京、上海、深セン向けのカード追加機能が付与されている。特に北京の交通系ICカードはT-Unionと呼ばれる複数都市で共通の規格に対応しており、このままT-Unionの対応都市での利用も可能だ。今回、八達通サポートがApple Payに新たに加わったことで、香港を含む中国全土でiPhoneを使ったほぼシームレスな移動が可能になった。

チャージには香港発行のクレジット/デビットカードが必要

Apple Payに八達通カードを追加するには、iPhoneをiOS 13.5.1にアップデートした後、リージョンを香港に設定することでカードの追加メニューに「八達通(Octopus)」が表示される。

なお、八達通が利用可能なのはiPhone 8以降の機種となっている。八達通を選択すると、最初にチャージ(トップアップ)する金額を指定する必要があるが、ここで既存の八達通の物理カードを取り込むことも可能だ。

新規発行の場合、Apple Payに登録済みのクレジットカードまたはデビットカードで決済することになるが、対応するのは香港発行のクレジット/デビットカードのみとなる。

日本と米国のカードを試してみたが、どちらも画像のように無効なカードという扱いで受け付けなかったため、一般的な外国人旅行者はこの方式でApple Pay上で八達通は使えないということになる。

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リージョンを「香港」に設定すると八達通(Octopus)カードの追加メニューが表示されるので、100HKDのトップアップとともにカードを発行しようとしたら、適切なクレジットカードがないとの理由で拒否された

なお今回、香港発行のクレジットカードを持つ方の協力を得て、実際にどのようにチャージが行われるかを少し見てみる。この例では既存の八達通の物理カードをまず取り込んだようだが、Apple Pay上に香港発行のクレジットカードが存在するため、そのまま八達通をメニューで選択した状態で金額を指定してチャージが可能になっている。

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こちらは八達通カード発行の成功例。既存の物理カードタイプの八達通も取り込み可能(画像提供:monosqu)

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香港発行のクレジットカードを所持していれば、このようにチャージも問題なく行える(画像提供:monosqu)

なお、八達通の発行管理を行っているOctopusという会社では、[自身が「Octopus」アプリの提供も行っており、ここで残高の確認のほか、「O! ePay」アカウントや銀行口座経由のFPS(Faster Payments Service)によるオンラインチャージにも対応している。

以前までであれば、オンライン上で単純に物理カードの管理を行う仕組みだったため、Apple Payとの併用で本当の意味で「モバイルウォレット」が実現できたといえる。

iOS用の「Octopus」アプリを使っての残高確認やトップアップも可能(画像提供:monosqu)

またApple Payにおける八達通カードの特徴の1つとして、エクスプレスカードでSuicaを含む複数の交通系ICカードを同時待ち受けに設定できる点が挙げられる。普通であれば地域ごとにエクスプレス対応カードを切り替えるようなイメージだが、「Suica×2」のように明らかに競合するケースでなければ、Apple Payの仕組み上は同時に設定可能だ。

この仕組みのメリットは、都市間移動してもエクスプレスカードの切り替えが必要ないだけでなく、例えば香港と深センのように隣接都市での移動ですぐに交通系ICカードが必要になる場合、そのままスムーズに移動できる点にある。

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エクスプレスカードでは複数の交通系ICカードの同時待ち受けが可能。都市を移動するたびに切り替える必要はない。これは特に香港と深センを移動する場合に大きいと思われる(画像提供:monosqu)

ただし、利用にあたっては香港発行のクレジットカードが必要になるため、前述のようにほとんどの外国人にとってはそのまま利用できない点で残念だ。

また、仮に八達通の物理カードを取り込んでApple Payに登録できたとしても、現状ではほとんどのケースで現金チャージしか受け付けていないほか(コンビニなどでチャージできる)、地下鉄駅などに設置されているチャージ機も物理カードを差し込んで利用するタイプだったりして、モバイル機器での利用を想定していない。

今後、国外発行のカードにも対応することを期待するが、当面は「こういうことも可能になった」と頭の片隅に留めておく感じになるだろう。

いまのところ香港を訪問するだけの外国人にはクレジットカードでトップアップする手段がない。このように物理カードタイプしか受け付けないチャージ機も多く、たとえ現金を持っていてもApple Payに登録した八達通カードが使いにくいのが難点だ

 
 

 

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