HUAWEI Junya Ishino

PC、タブレット、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンに加え、新ジャンルとなるデスクトップモニターの「MateView」シリーズを投入するファーウェイ。米国の制裁を受け、スマホの新製品を投入できていない結果、日本市場でも苦戦を強いられていますが、その逆境を跳ね返すべく、製品ジャンルを一気に拡大している様子が伺えます。タブレットの「MatePad 11」やスマートウォッチの「HUAWEI WATCH 3」には、初めて同社独自OSの「HarmonyOS 2」を搭載し、デバイス間の連携機能を強化しています。

もはやスマホメーカーとは呼べないほど多角化した製品ラインナップを投入するファーウェイですが、同社はどのような戦略で日本市場に臨んでいるのでしょうか。ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントを務める楊涛(ヤン・タオ)氏に単独でインタビューする機会を得たので、その模様をお届けします。インタビューの主な一問一答は、以下の通りです。

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▲PC、モニターからワイヤレスイヤホンまで、幅広い製品を発表したファーウェイ。日本・韓国リージョンプレジデントのヤン・タオ氏がインタビューにこたえた

——MateViewシリーズを発表するなど、製品のジャンルを広げている印象があります。まずは、その狙いを教えてください。

タオ氏:これは、ファーウェイのコンシューマービジネスグループ全体の長期戦略が関係しています。その戦略とは、「オールシナリオのスマートライフ」というものです。ユーザーの体験を5つのシナリオに絞り、製品をベースにした究極の体験を提供しようとしています。その5つとは、「スマートオフィス」「スマートライフ」「エンターテインメント」「スマートトラベル」と「スポーツ&ヘルス」です。弊社の目標は、個々の製品がどれも高品質で革新的、かつ異なる体験をもたらせるような製品作りをすることですが、異なるデバイス同士を連動させ、組み合わせて使ったときに最良の体験ができるようにしようとしています。

スマートオフィスを例にお話ししましょう。普段仕事をしているとき、頻繁に使うのはスマホやタブレット、パソコンですよね。種類の異なるこれらの端末を、いかに便利に、スムーズに連動させて使えるかが重要になります。記者の方も取材のときにはスマホでメモや録音をすると思いますが、カフェで編集作業をする際には、そのデータを素早くタブレットに移したいですよね。さらに、会社に戻ったときには、それを同僚に紹介するために、オフィスにある大きなモニターを使うと思います。(デバイス同士がスムーズに連携すれば)接続が簡単で、ケーブルなどをつなぐ煩雑さもなく、簡単にデータのやり取りができます。

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▲デバイス同士が相互に連携する機能をアピールするファーウェイ。タブレットからスマホを操作できる

エンターテイメントやスマートトラベル、スポーツ&ヘルスにはほかのシナリオもあります。こういった連動によって生まれる体験のために、必要となる製品をそろえていかなければならないというのがファーウェイの考えです。

——とは言え、PCはWindowsですし、発表されたタブレットはHarmonyOSで、スマートフォンはHMS(Huawei Mobile Services)搭載ですがAndroidと、OSがバラバラです。どうやって連携させていくのでしょうか。

タオ氏:確かに、OSはバラバラです。どの端末でも同じOSや同じシステムを使えるのであれば、それが一番連携はさせやすいですし、効率も高い。ただ、実際にはユーザーの使い方や場面によって、異なるOSを使うのが普通だと思います。今、PCは(市場全体で)Windowsがメインですし、タブレットではAndroidのアプリを使う場面が多々あります。そのため、弊社側で開発した仕組みで、端末同士が相互に接続できるようにしています。

例えばPCにおいては、新たにPCマネージャーというソフトウェアを開発しています。これを入れることで、スマホやモニター、タブレットとの連携が素早くできるようになります。同じHarmonyOSを使えるのが一番いいことは確かですが、OSが異なっていても、様々なソリューションを提供すれば、問題なく連携はできます。

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▲タブレットをPCのサブディスプレイとして活用。こうしたOSの違いは、ソフトウェアに手を加えることで実現しているという

——そのHarmonyOSですが、今回、日本市場に投入する製品では、タブレットとスマートウォッチが搭載しています。HarmonyOSになることで、何か変わったこと、逆に変わらなかったことはあるのでしょうか。

タオ氏:新しいシステムを製品化するにあたっては、今までのユーザーの利用習慣や利用体験を考えなければなりません。ユーザーインターフェイス(UI)においては、ユーザー体験を維持するため、これまでと大きく変えるようなことはしていません。もちろん、変化したこともあります。大幅な最適化を行ったことで、性能が上がり、操作の滑らかさも大きく向上しました。また、HarmonyOSは異なる端末間が連携することを実現するために作られたOSです。HarmonyOSに対応していれば、よりスムーズな相互連携ができるようになります。

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▲HUAWEI WATCH 3も、HarmonyOSを搭載したデバイスの1つ

——その連携の中心になるのは、おそらくスマホだと思いますが、残念ながら日本にはHarmonyOSのスマホがありません。

タオ氏:確かに中国では、すでにHarmonyOSのスマホは出ていますが、海外(中国以外の国)での展開は今、検討しているところです。同時に、海外展開にあたってはユーザーの利用習慣を考慮しなければなりません。何か動きがありましたら、改めてご報告したいと考えています。

——次に、個々のジャンルについて伺っていければと思います。MateBookシリーズについてですが、ファーウェイはPCでは後発です。日本市場をどう攻略しようと考えているのでしょうか。

タオ氏:日本は、PC市場の競争が非常に激しい市場です。このような市場で成功するには、いくつかの要素を考えなければなりません。製品自体の品質が高く、革新的でいい体験ができるのはもちろんですが、さらにファーウェイのPCとして他社と差別化できる特徴を持たせることが必要です。そのために、例えば、フルビューディスプレイや軽量・薄型、高性能といった特徴を持たせて、デザインにも非常にこだわっています。使用している素材も品質がよく、高級感のあるメタルボディです。さらに、PC、ディスプレイ、タブレット、スマホを組み合わせて使ったとき、今までにない体験ができることで差別化を図っています。

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▲「MateBook X Pro」など、PCを2機種発表した

一方で、市場で成功するためには、ブランド力も必要になります。消費者に知っていただくことも重要で、ブランディングへの投資は引き続き行なっていきます。また、リテールへの取り組みも欠かせない要素です。消費者に見て、触っていただけるよう、家電量販店との提携関係も結び、店頭への展開にも力を入れていきたいと考えています。

もう1つ欠かせない要素がサービスです。サービスの能力はしっかり構築していかなければなりません。製品の品質だけでなく、サービスの品質も向上させ、総合的な力できちんと日本の消費者に対して、製品やサービスを提供していきたいと思います。

——次にタブレット市場についてですが、今回投入したMatePad 11はいわゆるハイエンドタブレットです。この製品を投入する狙いを教えてください。

タオ氏:先ほどお話ししたオールシナリオでのスマートライフにおいて、タブレットは重要な要素です。エンターテインメントやスマートオフィスといったシナリオの中で、頻繁に使われるデバイスだからです。本日発表したMatePad 11は、非常にスペックが高く、リフレッシュレートも120Hzです。ディスプレイの解像度が高く、音質もいい。こうしたシナリオの中で使われるには十分なものです。また、M-Pencilと一緒に使うと、創作活動やビジネスでのちょっとした作業をするときの効率も上がります。

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▲MatePad 11は、Snapdragon 865を搭載したハイエンドタブレット

——精度の高い手書き対応でクリエイター向けという意味でいうと、Androidタブレットはあまり選択肢がなく、iPadの一強になっているような印象もあります。こういった市場も狙っていくのでしょうか。

タオ氏:タブレットは、仕事にも頻繁に使う、生産性を高めるためのツールでもあります。特にモバイルに関するニーズが高く、ビジネスにしろ創作活動にしろ、活躍できる場面は増えています。弊社としても、こういったニーズを満たすため、高性能で高スペックなタブレットを出していきたいと考えています。一方で、タブレットはエンターテインメントに使うことも多い端末です。MatePad 11はディスプレイに優れ、4基のスピーカーを搭載するなど、性能面でも妥協していません。ゲームをするにも最適なデバイスになっています。

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▲M-Pencilに対応し、イラスト作成などの用途にも利用できる

——今回のMatePad 11には、クアルコムのSnapdragon 865が搭載されています。ファーウェイのKirinを採用するのは難しかったのでしょうか。

タオ氏:弊社の製品で使われている部品やタブレットは、調達先を多元化しています。Kirinの開発はしていますが、一方でクアルコムやメディアテックとの提携関係は続いており、この2社のチップセットはずっと採用し続けてきました。調達先の多元化によって、パートナー企業を増やすことで、安定した供給が実現できます。

——一方で、KirinはAIの処理能力を高めるなど、性能面でSnapdragonとの差別化を図っていました。Snapdragonを採用することで、こうした機能が利用できなくなるといった影響が出たりはしないのでしょうか。

タオ氏:どのチップセットを採用するにしても、全体の使用体験や性能が等しくなるよう、心がけています。些細な違いはあるかもしれませんが、全体的に同じようになるよう開発しています。

——ここまでのお話の中で、ほとんど「FreeBuds 4」について触れられていませんが、ファーウェイがイヤホンに注力している理由を改めて教えてください。

タオ氏:スマートオフィスやスマートトラベル、エンターテインメント、スポーツ&ヘルスというオールシナリオで、オーディオは欠かせないからです。非常に優秀なオーディオ製品が必要になるので、弊社でそれを出し、戦略に沿ったラインナップにしています。

発表したFreeBuds 4は非常に音がよく、装着感もいい上にノイズキャンセリングもできます。仕事やスポーツで長時間使うようなときに、非常に適した製品になっています。1世代前の製品と比べると、機能面では様々な改善があります。2つのデバイスと同時に接続できるため、例えばスマホをつながっているときは音楽を聞き、オンライン会議が始まったら素早くPCに接続を切り替えることができます。

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▲ノイズキャンセリングの性能を強化したFreeBuds 4

スポーツ&ヘルスのシナリオにおいても、音楽を聞きながら走る人は多い。スマートウォッチとの連携も取れるので、わざわざスマホを持って走らなくてもよくなります。

——一方で、ファーウェイはいわゆるオーディオメーカーではありません。ファーウェイならではの、オーディオ製品はどういったこだわりで作られているのでしょうか。

タオ氏:オーディオに関してはかなり研究開発に投資をしてきました。製品を開発するにあたり、考えるべきポイントはいくつかあります。我々の研究開発部隊は、商品力を上げるため、ハードウェアにおける音響学的なデザインと、ソフトウェアのAIの力を組み合わせました。FreeBuds 4には先ほどお話ししたとおり、ノイズキャンセリングの機能がありますが、開放型のイヤホンにも関わらず、かなりのノイズを消すことができます。これは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、独自の工夫を施しているからです。

製品を作るにあたり、約1万人の耳を分析しています。ノイズキャンセリングをオンにすると、自動的に耳の形を検出して、外圧を測ります。キツイのか、緩いのか、様々なパラメーターを作ってノイズキャンセリングをしています。

——スマホ一本だったころと比べると、製品のバリエーションが大幅に広がっています。その中で、もっとも注力している分野はどこになるのでしょうか。

タオ氏:弊社の一番の狙いは、様々なデバイスを組み合わせたときに、最良で最適な体験を提供することです。個々の製品に関しても、それぞれ体験をよくしていかなければなりませんし、均等に注力しています。いずれかの製品に対して重きを置いているということはありません。どれを取っても、戦略の中で非常に重要な構成要素だからです。

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▲ファーウェイの戦略を語るヤン・タオ氏

■ 取材を終えて

ファーウェイの新製品群は、デバイス連携に特徴があります。タブレットからスマホを操作したり、PCとタブレットが簡単に連携したりする機能は、その1つ。これをよりスムーズに実現するために開発されたのが、デバイス同士を“調和”させるためのHarmonyOSです。一方で、タオ氏が語っていたように、HarmonyOSは必ずしも必須というわけではないようです。既存のOSの上にソフトウェアを乗せ、デバイス連携を実現するケースもあるとのこと。Windows PCのMateBookシリーズはその代表例と言えるでしょう。

ただ、連携の中核となるスマホについては、米国からの制裁もありグローバルで新機種が投入できていません。タオ氏によると、HarmonyOSの中国以外での展開方針についても決まっていないようです。デバイス間連携での中心的な役割を担うデバイスなだけに、スマホの今後についても明確にしてほしいと感じました。


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