ファーウェイにとどめを刺しにきた米国の追加規制。ユーザーのスマホはどうなる?影響は?(本田雅一)

それでもスマホ市場は5G時代へ

本田雅一
本田雅一, @rokuzouhonda
2020年08月19日, 午後 09:15 in politics
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様々なメディアでも伝えられている通り、米商務省はファーウェイ(Huawei Technologies)への輸出規制をさらに強化すると発表しました。

すでに米商務省はファーウェイに対し、Googleからのアップデートソフトウェアの一時的な提供許可を延長しない方針を示しており、またその期限も切れています。このため、ファーウェイはGoogleサービスをインストールしたスマートフォンを開発できないだけでなく、過去製品についても(Google Mobile Servicesを含む形では)アップデートが不可能になります。加えて追加規制により、SoC(プロセッサやGPUを含む主要機能を統合した半導体)の調達が極めて難しくなります。

ソフトウェアの根幹をなす要素技術を利用できなくすることでグローバル市場からファーウェイを締め出し、さらに基幹部品の調達経路を断つことで大きな存在感を持つ中国市場からも退場させること、それが米政府の意図なのでしょう。

その背景を順に追いながら、どんな影響が僕らの周りにあるのかを考えてみたいと思います。

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米商務省の輸出規制により、ファーウェイがGoogleの提供するソフトウェアを使えなくなったのは昨年5月のこと。米企業が取引をする際に政府の許可を必要とする「エンティティーリスト」へとファーウェイおよび68の関連会社を正式に追加したのがスタートです。ただ、即時規制を行った場合、ファーウェイ端末のセキュリティホールが放置され、それが異なる脅威を生み出す可能性があるため、米商務省は一時的な輸出許可を発行していました。

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この一時的な輸出許可は米国内にあるファーウェイ製機器を別の機器へと置き換える時間的猶予を与えることが目的。今年8月に一時的許可の延長が見送られたことで、今後、米国企業が開発したソフトウェアがファーウェイ製品にインストールされる可能性はなくなったと言えます。

一方のファーウェイは、中国で運用していたHMS(ファーウェイ Mobile Services)をグローバルに展開することで米国以外での事業継続を模索していました。うまくいっていたとは必ずしも言えませんが、もともと中国ではGoogleが事業展開できていないため、GMSなしで端末を開発していたわけです。

規制が始まった当初、ファーウェイ側が意外にも落ち着いていたのはそのためです。それに、何よりもファーウェイの主戦場は中国。中国での爆発的なシェアの伸び、そして本業であるネットワークインフラ機器事業があるからこその自信だったのでしょう。

しかし米商務省は、ファーウェイが最先端の半導体技術を持つ台湾TSMCと取引できないようにするため、米国製生産設備を使った部品に対するファーウェイへの輸出を規制しました。ファーウェイの強みは子会社半導体メーカーのハイシリコンが設計する独自SoCにありますが、この規制によりSoCの製造が難しくなります。中国国内のファウンダリにSoCの生産を外注したとしても、半導体技術の世代が古いためこれまでと同等性能のSoCは開発できません。

では他社製SoCを使う場合はどうなのか? 今回の追加規制では米国製のあらゆる製品・技術から生まれる製品が対象となっています。例えばメディアテックにハイシリコンの技術を移転した上でメディアテックの製品を購入する、そんな回りくどい手段を取ったとしても難しいでしょう。半導体設計に欠かせないツールが米国製であることから、おそらくメディアテック、あるいはサムスンからの調達も不可能になります。

ファーウェイは米商務省による追加規制に関連し「新しい措置は半導体チップセットが対象であり、それ以外の部品などは含まれない」ことを強調しています。つまり、イメージセンサーやメモリ、ディスプレイなどは含まれません。とはいえ、SoCが調達できなければ、スマートフォンを生産することは不可能です。

ファーウェイはまた「米当局の許可があれば、ファーウェイへの輸出は可能」とも主張していますが、現状、米当局が許可を出す可能性は、米国に何らかの不利益がもたらされる場合に限る──例えば、既存製品のファームウェアアップデートは米国にとって必要なものでした──と考えた方がいいでしょう。しかし実際は、ファーウェイ製端末が新たに生産できなくなったとしても、米国にとってほとんど影響がありません。

つまり、トランプ政権が"ファーウェイが米国の安全保障上の問題である"と認識している間は、この規制が緩められることはないと考えていいと思います。そして米大統領選を控えるこのタイミングでトランプ大統領が振りかざした拳を収めることもないでしょう。

ファーウェイ製端末の使用継続で留意すべきこと

米政府のやり方は制裁の枠を超え、中国以外の企業にも影響を与えることになるでしょう。例えば米政府の規制が強まった後には、iPhoneの売り上げが中国市場で落ちるといったことがありました。その後、iPhone 11シリーズはヒットすることになりますが、中国国内での反発が強まれば、中国における米国製品の売り上げには良い影響は出ないと考えられます。

また、いずれ他のメーカーがその穴を埋めることになるとしても、ファーウェイ製端末の生産が止まる(あるいは減産する)ことになれば、それらに搭載するディスプレイ、メモリ、イメージセンサーの調達が減るため、そういった部材をファーウェイに供給するはずだったメーカーは部品の生産数を絞り、業績を下方修正しなければならなくなります。実際、ソニーはイメージセンサーの生産調整を行うことを表明しています。

でも本誌読者が一番気にしているのは、ファーウェイ製端末が今後どうなるのか。そして、他メーカーも含めてどうAndroid端末の勢力地図が変化するのか、といったところでしょうか。

僕が一番懸念しているのは、日本で販売されたファーウェイ製端末のファームウェアアップデートです。Android系端末は概してiPhoneよりもアップデート期間が短く、数年もすればセキュリティパッチが提供されなくなることもありますが、ファーウェイはそうした中でもそれなりにアップデートを提供してきた方だと思います。

しかし、今後GMS入りでのアップデート提供が不可能になると、セキュリティパッチが提供されないままに放置されてしまう可能性が高まります。現状の端末バックアップを取った上で、HMS版の新しいファームウェアへの切り替えを促すという力技も不可能ではないかもしれませんが、日本で使う端末をGoogle Play非対応にすることを望むユーザーはおそらくいないはず(それにGMS非搭載になることで動かなくなる他社製アプリもあります)。その結果、セキュリティホールが放置された端末が増加することになる可能性があります。

もっとも、アップデートの提供をほとんど行わずに放置するメーカーもありますから、それらと変わらないと言えば変わらないのですが……ファーウェイには「影響がない」ことを訴求する前に、既存ユーザーに対して「心配ない」宣言と、どう対応していくかを表明してほしいものです。一方でP30 ProなどHMSが標準(GMS非搭載)の端末については、長期的に見れば影響がある可能性は否定できませんが、現時点ではあまり変化がないはずです。

事業継続できるかどうかが分かれ道

エンドユーザーの視点では手にする端末や、端末を通じて受けるサービス、あるいはファーウェイがリードしてきたカメラ画質や機能のリーダーシップが今後どうなるか? あたりが気になるところですが、経済誌などではファーウェイとの取引がある企業の業績に対する影響が話題になっています。

ファーウェイが持っている部品在庫は年末までに切れるため、それ以降は端末の生産が行えなくなるという観測もあります。確かにメディアテック製SoCの調達も行えなくなれば、ファーウェイ製端末を下支えする中国におけるエントリークラスからミドルクラスまでのスマートフォンが作れなくなってしまいます。

また独自設計のSoCに関しても、これまで使っていた設計ツールを一新するなどの手間がかかるため、一時的に開発ペースが落ちてしまうと考えられます。またハイシリコンの設計するSoCを量産するファウンダリ探しに関しても、TSMCもサムスンも使えないとすれば、いったいどこでどう生産するのか想像できません。

そして、この困難を乗り越えてまで端末メーカーとして生き残る必要があるのか、という経営判断も行わねばならなくなるでしょう。もともと、ファーウェイはネットワーク通信機器を得意とする通信インフラの企業であり、エンドユーザー向け端末の事業は”あとからついてきた”ものです。

ファーウェイが自社製端末のメンテナンスを急減速させる心配は今のところないと思いますが、長期的な端末事業の展望がなくなれば、投資が絞られて徐々にフェードアウト……となっても不思議ではないですね。

もちろんファーウェイが事業継続している間にトランプ大統領の気が変わる何かが起きて、以前に戻る可能性もゼロではないでしょう。あるいは来年まで持ち堪えられれば、民主党政権に変わって規制が緩和される可能性もあります。

この1年、ファーウェイの端末事業は生き残ることが大前提となっていて、そのバックボーンとして大きな中国市場がありました。しかし端末が生産できなくなるであろう新たな規制の中、ファーウェイ製端末のユーザーにとって事業そのものの継続性がしばらくの懸念事項となっていくことは間違いありません。

米中の殴り合いでファーウェイという企業が影響を受けるだけでなく、部品メーカー、そして消費者にまで迷惑をかけるだけの価値が今回の輸出規制にあるのか、米政府が掴んでいるはずの何かが明らかではない現時点では、消費者側にはただただ迷惑な話としか言いようがないですね。せめてセキュリティリスクへの対応ができる程度には、対応の余地を残してほしいものです。

 
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