Mate40

ファーウェイから新しいチップセット「Kirin 9000」を搭載したスマートフォン「Mate 40 Pro」「Mate 40 Pro+」が発表されました。同時に発表された「Mate 40」はスペックを一部抑えた「Kirin 9000E」を搭載します。

ファーウェイはアメリカ政府からの制裁により、Kirinシリーズの請負製造先のチップセットメーカーが対ファーウェイ向けの生産を9月15日以降できなくなり、Kirin 9000 / 9000Eはその時点まで生産した分の在庫しか保有していません。クアルコムのSnapdragon 865より高速という新チップセットを作りたくても、作ってくれるメーカーがないのです。

Mate 40 Pro+は背面に5つのカメラを搭載したカメラフォンとしても優秀な製品で、オンライン発表会を見た人もカメラ性能に目を奪われたことでしょう。5000万画素の広角、2000万画素の超広角、800万画素の光学10倍ペリスコープ望遠、1200万画素の光学3倍望遠、ToF深度測定という組み合わせは現時点で最強ともいえる組み合わせです。

Mate40

ちなみに春のフラッグシップモデルである「P40 Pro+」は5000万画素の広角、4000万画素の超広角、800万画素の光学10倍ペリスコープ望遠、800万画素の光学3倍望遠、ToF深度測定でした。Mate 40 Pro+はより望遠側にフォーカスしたカメラ構成になっているわけです。

DXOMarkではP40 Pro+のスコアはまだ出ていませんが、ペリスコープとToFを外したMate 40 Proが136ポイントでさっそく1位になっています。

Mate40

さて1年前のモデルを見てみると、秋の「Mate 30 Pro」は春発表の「P30 Pro」の超広角カメラの画質を高めた程度の違いでした。つまりMateシリーズのカメラはPシリーズを最新性能に置き換えたというものでした。しかし今年のP40 Pro+とMate 40 Pro+は、それぞれでカバーする範囲を変えることで「広角ならPシリーズ、望遠ならMateシリーズ」と2つのカメラフォンとしてバッティングしない製品になっています。

これはファーウェイがP40 Pro+(およびP40シリーズ)、Mate 40 Pro+シリーズ(およびMate 40シリーズ)を今後長期間併売して販売するために、2つの柱となるようなカメラ構成として作り分けたと考えられます。Kirin 9000の在庫がどれくらいあるかはわかりませんが、販売台数によってはこの2つのモデル(2つのシリーズ)は来年以降もそのまま継続して販売されると思われます。

IDCなど複数の調査会社によると、ファーウェイは新型コロナウィルスの影響を受けて各メーカーの出荷台数が減少する中、今年第2四半期はマイナスを最小限に抑え、サムスンを抜いて初めてスマートフォンの世界シェア1位になりました。しかし地域別にみると中国以外でのシェアを落としています。

ファーウェイのスマートフォンはグーグルサービス(GMS、Google Mobile Serivces)を搭載できません。アメリカ政府の制裁でハードウェアの中心部を入手できなくなっただけではなく、スマートフォンを実際に使う際の基本サービスも利用できないのです。各メーカーが独自にサービスを搭載し、自国の独自サービスが普及している中国ではGMSの搭載が無くともスマートフォンの販売数に影響は出ません。しかし中国以外ではGMS非搭載は大きな痛手です。カメラの性能がいくら良くても、撮影後の写真を主要なSNSにシェアできなくては使い物になりません。

そのため、今回発表されたMate 40シリーズは販売数が見込める中国市場に重点的に投入され、それ以外の市場、特に今回ターゲットエリアとしてグローバル発表会が行われたヨーロッパなどでも数量はあまり投入されない可能性もあります。

日本市場に関しても投入される見込みは現時点では小さいと考えられます。たとえ出したとしてもごく少数をSIMフリー市場で出すくらいかもしれません。昨年の「Mate 30 Pro」はグローバル発表から半年後の2020年3月に日本で発表されました。Mate 40シリーズのいずれかの機種もそれくらいのタイミングを置いて投入される可能性もありえますが、もしも中国市場での販売が好調となれば他国にまわす余裕はなくなるかもしれません。昨年と今年とでは状況は全く変わってしまったのです。

今回はMate 40シリーズと合わせるように「Mate 30E Pro」も発表されました。Mate 30E ProはチップセットをKirin 990からKirin 990Eへ乗せ換えたモデル。高速化などが図られていますが、Mate 40シリーズが出てきたにも関わらず昨年のモデルをマイナーチェンジして再投入するというのです。

Mate40

この理由は「Mate 30 Proの販売が不調で部材が余っている」「今後の新製品が少ない中で、2020年モデルを増やす」からとも考えられます。

Mate 30 Pro(および「Mate 30」)からファーウェイはGMSの搭載をやめ、HMS(Huawei Mobile Serivces)に切り替えています。例年であれば最新のチップセットを搭載し、ビジネスユースも意識したデザインのMate 30シリーズはヒット製品になるはずでした。しかしGMS非搭載により中国以外での販売数は伸びなかったのでしょう。

ファーウェイのコンシューマービジネスグループCEO、リチャード・ユー氏は昨年9月のMate 30シリーズの発表会で、2018年モデルの「Mate 20」シリーズの出荷台数が1年で1600万台に達したと発表しています。一方、昨年11月に同氏はMate 30シリーズが発売後から60日で700万台出荷したと語りました。その後中国メディアの報道で、2020年頭にMate 30シリーズは1200万台が出荷されたとされています。ただしこの数は推測値にすぎません。実際は1000万台に届かなかったかもしれないのです。

そして2020年の2月以降は新型コロナウィルスにより市場が急激に縮小しました。さらにGMS非搭載のファーウェイのスマートフォンを選ぶ消費者も中国以外では減っています。その結果、Mate 30シリーズの出荷台数はMate 20シリーズに遠く及ばなかったと筆者は推測しています。ファーウェイとしては年々出荷台数を増やしていく中で、Mate 30シリーズはMate 20シリーズよりも多い販売数を見込み、部材の発注も行っていたことでしょう。

しかしMate 30シリーズをそのまま継続して販売するのでは、1年前モデルの古い製品と言う印象を与えてしまいます。マイナーチェンジとはいえ2020年モデルとしてMate 30E Proを投入すれば、Mate 40シリーズを補佐する「Mateシリーズ」の一員となり、他メーカーとの競争に少しでも対抗できるはずなのです。

このようにアメリカ政府の規制を受けた状況のままでは、ファーウェイはスマートフォン新製品を今後開発はできても思うように生産することは難しくなります。例年春に発表されるPシリーズの新製品も、2021年春に「P50」(推測)が出てくる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

そうなるとファーウェイは2020年後半から2021年にかけて、フラッグシップモデルとして
・P40シリーズ
・Mate 40シリーズ
・Mate 30E Pro

という3つの柱で製品を継続販売していくと考えられます。もしかするとカラバリを増やすなど、マイナーチェンジを図るかもしれませんね。過去には2019年秋にP30の新色を追加して販売のテコ入れを図っています。

Mate40

ミドルレンジ以下のスマートフォンはメディアテックのチップセット「Dimensity」を採用したモデルを増やしていますが、これも同チップセットのファーウェイの内部在庫が尽きると生産は厳しくなります。ファーウェイとしては手持ちのチップセットがなくなる前に、状況が改善されることを祈るしかありません。

個人的には折りたたみスマートフォンの後継機となる「Mate X2」(推測)に期待していますし、Mate 40シリーズと同時に発表されたデザインモデル「Mate 40 RS Porsche Design」の美しい外観にも興味があります。カメラ性能だけではなく、モデムや電池の持ち、新しいディスプレイの採用やコラボモデルを作り上げるなど、ファーウェイのスマートフォン開発能力は業界でもトップと言えます。

Mate40

今後の動向が全く読めない状況の中、ファーウェイのスマートフォン新製品の日本投入の見通しもわからない状況が続きます。今回のMate 40シリーズの発表会では新しいヘッドフォン「Huawei FreeBuds Studio」や、ポルシェデザインコラボとなる初のスマートウォッチ「Porsche Design Huawei Watch GT 2 Pro edition」なども発表になりました。

Mate40

スマートフォンの展開が難しいようであれば、これらのウェアラブルの投入や、また中国で展開しているスマートホームやスマートTV関連など、他の製品をぜひ日本にも持ってきてほしいものです。ファーウェイのスマートTVは独自OS「HarmonyOS」で動きますから、そこにメジャーアプリを対応させて高性能TVとして販売する方法もあるでしょう。状況の行方はわかりませんが、再びファーウェイのスマートフォンが次々と発表され、市場を盛り上げてくれるようになることを願いたいものです。