NASA, ESA, T. Brown, S. Casertano, and J. Anderson (STScI)
NASA, ESA, T. Brown, S. Casertano, and J. Anderson (STScI)

ブラックホールといえば、光でさえも逃げ出せないほどの強大な重力が人々の興味をそそる天体です。宇宙に散らばるほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在すると考えられており、そこがどのような世界なのかは想像もつきません。一方で、小さなブラックホールというのも宇宙にはたくさん存在しています。

NGC 6397と呼ばれる球状星団を観測していた天文学者は、星団の中心に予期していなかった小さなブラックホールの密集地帯を発見しました。NGC 6397は地球からの距離が約7800光年という、球状星団の中ではかなり近い星団で、約40万もの恒星が、特に中心近くでは非常に密に存在しているため、核崩壊の過程にあると考えられています。

学者らは当初、この星団の中心には中間質量ブラックホールが存在していると考えていました。というのも、ブラックホールは前述の超大質量ブラックホールのほかには、それが崩壊したあとにできる恒星質量ブラックホールの存在が確認されているものの、その間の質量をもつ、中間質量ブラックホールはほとんど見つかっておらず、NGC 6397のような球状星団が核崩壊した後に恒星質量ブラックホールが周囲のガスや塵を集めて形成される可能性が考えられるためでした。

ところが、NGC 6397の中心近くにあるとみられるブラックホールが示すはずの質量が、詳しく観測すると”点”としてではなく、クラスター状に星団の大きさの数パーセントほどの範囲にまで拡がって存在することがわかりました。パリ天体物理学研究所(IAP)のエドゥアルド・ヴィトラル氏はこの結果に驚き、過去のハッブル宇宙望遠鏡によるデータを見直し、星団内の星が動いて見える速さを使って、大小の恒星やブラックホールだけでなく、全質量の分布を算出してみました。

その結果「星団内での星の動きは全体がランダムに近い動きをしており、円形や長楕円軌道ではないことがわかった」と研究チームのひとりでIAPのGary Mamon氏は述べています。また目に見えない質量成分はその分布からして、白色矮星、中性子星、ブラックホールが崩壊した残骸としか考え難いとしました。これらある程度の質量を持つ星の死骸は、近くにあるそれほど重くない星との重力相互作用の後、星団の中心に向かって徐々に集合します。一方、質量の低い星は星団の外周部に移動していきます。

IAPの研究者であるゲイリー・マモン氏は、恒星進化論の観点から、発見された見えない質量の多くがブラックホールと考えられるとしています。最近のほかの研究でも、球状星団の内部領域には恒星の残骸から発生した恒星質量ブラックホールが存在する可能性があると報告されていました。

今回の発見は、ブラックホールと周辺環境が生み出す現象についての理解を広げることになるかもしれません。このようなブラックホールの密集地帯が、たとえば重力波の主要な発生源になっている可能性も考えられなくはありません。

Source:NASA