IIJ Junya Ishino

IIJは、格安スマホサービスのIIJmioに、4月1日から新料金プラン「ギガプラン」を導入します。2GB、780円とアグレッシブな価格を打ち出したことで、2月24日に開催された発表会は大きな話題を集めました。料金体系を一新し、データ容量シェアも、各プランを合算する仕組みに変わる予定。eSIMなら2GB、400円からと、通常のデータ専用SIMより、さらに低価格になるのもポイントです。

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▲4月1日からIIJmioが導入するギガプラン。音声通話対応で料金は2GB、780円から

大手キャリアが相次いで値下げをする中、それを一段下回る価格を提示できた格好のIIJですが、なぜそれが実現できたのでしょうか。新プランを導入する狙いを、IIJの執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏や、MVNO事業部 コンシューマーサービス部長の亀井正浩氏、MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏がグループインタビューで語りました。

元々、IIJは、新料金プランの検討を進めていました。矢吹氏は、「本来であれば、来年の夏ぐらいには改定しようと思っていた」と語ります。ただ、「システム設計を抜本的に直さなければいけないことが分かり、スケジュールを後ろ倒しにした」(同)といい、サービス開始の延期を余儀なくされてしまいました。昨年11月ぐらいの段階では、21年6月ごろに新料金プランを導入する方向で、計画を立て直していました。

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▲矢吹氏は、システムを抜本的な改定が必要になり、スケジュールを後ろ倒しにしていたことを明かした

ところが、昨年12月に事情は一転。政府の要請を受ける形で、大手キャリアが続々と料金値下げに踏み切りました。矢吹氏は、「12月以降のマーケットの動きは非常に速かった」と当時を振り返ります。中でも、インパクトが大きかったのは、ドコモのahamoだったといいます。佐々木氏は、幻に終わってしまったUQ mobileやワイモバイルの20GBプランを挙げつつ、「20GBで3980円(ワイモバイルは4480円)という水準だったが、2980円はさすがに差があり、意表を突かれた」と語ります。

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▲ahamoの料金は想定を下回り、「意表を突かれた」と語る佐々木氏

ahamoも発表で料金プラン合戦が勃発し、その後はUQ mobileやワイモバイルも巻き込み、低価格化が一気に進みました。そのため、IIJは当初計画していたスケジュールでは、新料金プランの導入が遅すぎると判断。「少しでも前倒しできるものは前倒しにした」(矢吹氏)形で、4月1日に新料金プランを導入することにしました。ギガプランでは、データ容量シェアや5Gへの対応などが6月になっていますが、これらのサービスは遅れたのではなく、料金プランの先行導入に合わせた前倒しができなかったというわけです。

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▲データ容量シェアや5G対応など、一部が6月スタートなのは、当初の計画通りだという。料金部分のみ、4月に前倒しした

前倒しの結果、なんとか大手キャリアの新料金プランにスケジュールを合わせることができたIIJですが、価格面では、期待を大きく上回っていた感があります。現行の料金プランは、3GBの「ミニマムスタートプラン」が1600円。ギガプランでは、1GB多い4GBプランでも、価格は980円にまで下がります。この料金を打ち出せた背景を、矢吹氏は「来年、再来年ぐらいにMVNOの標準になっているもので、将来を予見して積極的なプライシングをした」と語ります。

MVNOのコストは、大手キャリアから借りる回線使用料が大半になりますが、IIJは、この値下げ幅を予想。それを先取りつつ、料金プランにダイレクトに反映させることで、ギガプランを打ち出すことができました。「コストに関しては、社会情勢を考えながら予測値を出した」(亀井氏)といいます。例えば、音声通話対応のSIMの場合、データ通信の接続料とは別に、大手キャリアに対して基本使用料が発生します。

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▲亀井氏は、大手キャリアの値下げを予想しつつ、それを先取りで反映させたと説明する

ドコモの場合、この金額は666円に定められていましたが、大手キャリア3社とも、卸価格は値下げしていく方針を示しています。金額自体はまだ出ていないものの、「600円強取られて700円で提供していたところからは、かなり小さくなっている」(佐々木氏)といいます。ギガプランでは、こうしたコストを反映させたため、音声通話対応SIMとデータ通信専用SIMの価格差が、わずか100円になっています。

データ通信も同様です。総務省のアクション・プランでは、3年で現行の半額程度まで接続料を引き下げる方針が示されていますが、IIJではこれを先取りしつつ、帯域を増強。「新プランを導入する4月1日の予想は私たちなりにして、各キャリアには増強の申し込みをし、足りない部分も発表の反響を受けて準備している」(亀井氏)といいます。

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▲総務省のアクション・プランでは、接続料を3年で半額程度にすることがうたわれている。IIJは、これを先取りした

さらに、eSIMでは、データ通信専用SIMより低価格な料金を打ち出しました。これは、「eSIMをとにかく使ってほしい」(同)という思いがあったからだといいます。2GBで400円、20GBで契約しても1500円という金額は、音声通話が不要なユーザーにはインパクトが大きいはず。他キャリアの物理SIMと組み合わせて、バックアップ回線的に使うのにもよさそうで、eSIMのプロモーションとしては成功している印象も受けます。

一方で、いくら安くても、通信が安定していなければ、安物買いの銭失いになってしまいかねません。MVNOは大手キャリアとの接続点がボトルネックになり、お昼休みや通勤時間帯などの混雑時に速度が低下しがち。IIJmioも、例外ではありません。こうした懸念を払拭すべく、IIJでは、新料金プランの導入にあたり、「単に値引きするだけでなく、帯域設計を再設計している」(同)とのこと。ユーザーの使い方にもよるため、ふたを開けてみるまでどうなるかは分かりませんが、トラフィック増加に備え、帯域自体も増強しているようです。

大手キャリアが一斉に値下げしたため、MVNOの苦戦が予想されていますが、IIJはギガプランの導入で、一矢報いた格好です。さらに、矢吹氏は「総務省のアクション・プランでは、スイッチング(乗り換え)コストの低減など、過去の縛りが取り除かれていくため、積極的に努力していかなければいけない」と語ります。大手キャリア各社は、マルチブランドでグループ内にユーザーを留める戦略ですが、逆に、キャリアから抜け出しやすい環境も整いつつあります。今後は、その一歩を後押しできるMVNOが生き残っていくことになるのかもしれません。