27インチiMac 2020年モデルレビュー。デザインに変化はないが実質フルモデルチェンジ(本田雅一)

Nano-textureガラスはかなりオススメ

本田雅一
本田雅一, @rokuzouhonda
2020年08月14日, 午前 07:45 in mac
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Intelの第10世代CoreプロセッサことComet Lakeを搭載した新しい27インチiMacがリリースされた。

iMacに関しては、今年に入ってから”ストレージをSSDのみとする代わりに狭ベゼルの新デザインを採用する”フルモデルチェンジが行われるとの予想が繰り返されていたが、蓋を開けてみると外観は従来と同じだったわけだ。

iMacが現在のスタイルになったのは2012年のこと。5Kディスプレイが採用されたのは2014年で、それ以降、基本的に外観は一切、手が加えられていない。時を経てもまだ十分に斬新さのあるデザインではあるが、そろそろ画面の額縁を絞り込む、あるいはAppleロゴが入る画面下の領域がなくなるのではないかと想像を膨らませていた読者の中にはデザイン変更がなかったことにガッカリした人もいるかもしれない。

しかし、外観にこそ変更がないものの、新しい27インチiMacはフルモデルチェンジと言っても差し支えない大幅なアップデートとなっていた。CPUやGPUが最新のものになりパフォーマンスが向上しているのはもちろんだが、T2チップが組み込まれたことで内蔵カメラやスピーカー、マイクなども大幅にリファイン。加えてPro Display XDRで採用されたNano-textureガラスのオプションが選択可能となり、Appleが最新Macに提供している技術をひと通り網羅した製品となっている。

今後、AppleはMacのプロセッサをIntelから自社製へと切り替えていくことを表明しているが、言い換えれば今回の製品はWindowsが仮想環境(あるいはBoot Camp)で動作する最後のiMacとなる可能性が高い。ちなみに最高10コアのIntel Core i9プロセッサ、従来の2倍となる128GBのメモリが搭載可能になるなど、スペックの上限も引き上げられている。つまり今回の製品はmacOS / Windows / Linuxが同時に動くコンピュータとして、大きな価値があるアップデートとなっているのだ。

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搭載されるCPUやGPUに関しては、Windowsに同等スペック採用機などがあることから、それ自身に目新しさがあるわけではない。今回のiMacでは6~8コアのプロセッサが標準構成で搭載され、最大10コアまで拡張可能。さらにGPUはAMDのNaviアーキテクチャを採用するRadeon Pro 5000シリーズが4グレードから選択できる(iMac向けRadeon ProのスペックはAMDのページで一覧可能だ)。

購入時に気を付けねばならないのは、標準構成として用意されている3モデルのうち、ローエンドモデルはCPUの変更ができず、ミッドレンジモデルはGPUのアップグレードができないことだ。Radeon Pro 5500XTを標準搭載する上位モデルのみ、Radeon Pro 5700(8GB GDDR6)やRadeon Pro 5700XT(16GB GDDR6)を選択できる。どのGPUを選ぶかは目的と予算で決まってくることだが、高精細な3Dグラフィックスを扱うことがなければ規定のGPUで十分ではないかと推察される(テスト機には最上位のRadeon Pro 5700XTが搭載されていた)。後述するベンチマーク結果も踏まえながら考えていただきたいが、Radeon Pro 5500XTの性能は16インチMacBook Proのオプションで用意されているRadeon Pro 5600Mとスペック上はほぼ同等だ。

しかし、新型iMacがフルモデルチェンジとも言える理由は、CPUやGPUのグレードアップが理由ではない。Apple T2というSSDコントローラー兼セキュリティチップを使ったシステムに更新されたことが大きい。T2チップは高速なSSDコントローラとして動作するだけではなく、様々な入出力の間に介在する。Intelのシステム全体がT2チップの支配下にあるかのような構成となり、内蔵する各種機能の恩恵が受けられるのだ。当初は高速なSSDコントローラ+暗号化、H.264の動画圧縮アクセラレータなどの機能がフィーチャーされていたが、現在はスピーカーの音質・位相補正、マルチマイクの音響処理、内蔵カメラの映像処理なども(Intel側のシステムとは独立して)行っている。

その中身は明確に発表されていないが、とある世代のApple Aプロセッサそのものではないかと言われている。つまりiPhone向けに開発された信号処理、ハードウェアとソフトウェアによる価値をIntel搭載Macに届けるための仕掛けと読み替えることもできるわけだ。

画質が大幅に向上した1080p FaceTimeカメラ

公式にハードウェアがどのように変化したのかAppleは公表していないが、内蔵するカメラは720pから1080p、すなわちフルHD解像度に更新された。Macの内蔵カメラが1080pに対応するのは今回が初となる。ただし、得られる画質を見る限り、単に解像度が上がっただけではないようだ。センサーサイズの拡大や世代更新なども行われているのだろう。T2チップ内蔵のISP(イメージ信号プロセッサー)による映像処理、露出制御、顔認識なども相まって、明らかに画質が上がっている。

同じくT2チップを搭載する16インチMacBook Pro(720pではあるが)と比較しても、階調・色ノイズ、輝度ノイズなどがいずれも優れており、コントラストや黒レベルの沈みも全く違う。特に暗所での画質が向上している印象だ。単純にT2チップ搭載で画像処理の質が高まったというだけではなく、センサーそのものが高品位になっているということなのだろう。

iPhone向けに開発されている半導体回路が活躍しているという点では、音声関連の品質向上もそうだ。通話品質を高めたり、小さく薄いiPhoneのスピーカーで満足できる音質を出したりするために開発されたハードウェアとソフトウェアがここで活躍している。加えて、内蔵マイクはこれまでカメラ付近に配置されているのみだったが、新しい27インチiMacでは画面下部にも2か所追加され、複数マイクを組み合わせることで指向性を制御。音質面を大きく向上させている。基本的には16インチMacBook Proに搭載された技術をデスクトップ向けに調整したもののようだが、デスクトップ機の内蔵マイクとしては破格の品質だ。

カメラとマイク、この2点はとりわけテレワーク環境においてはとても重要。同様にスピーカーに関しても音域バランスや低域の強調、位相調整などが施され、独自のバーチャルサラウンドと相まって、Apple TV+などのサラウンドあるいはイマーシブサウンドが楽しめる。ただし、スピーカーに関しては16インチMacBook Proほどの感動や、バーチャルサラウンドでの立体感は残念ながら感じられない。筐体設計やスピーカー自体の設計変更がされていないこともあるのだろう。

音域バランスに関しても、トータルでの印象はMacBook Proほどではない。とはいえ、従来のiMacからの改善は明らかだ。音楽を聴くならば、別途、お気に入りの外部スピーカーを探すことを勧めるが、映像配信サービスの音声を快適にということであれば十分な音質に仕上がっている。

FaceTimeカメラおよび内蔵マイクの性能は以下の動画を参照してみてほしい。

高価だが極めて効果的なNano-textureガラスの反射抑制効果

おそらく新しいiMacを選ぶ上で、最も悩ましいのがNano-textureガラスのオプションだ。32インチサイズのディスプレイPro Display XDRで7万円に設定されているこの選択肢は、27インチiMacでは5万円と抑え目の価格。とはいうものの、画面の表面処理オプションとしては極めて高価であることに違いはない。

Nano-textureはガラス表面にエッチング処理を用い、5Kディスプレイの精細度やコントラストに悪影響を与えない極めて微細な凹凸処理を施したものだ。名前の通り、ナノメートルレベルの微細なテクスチャを加え、外光反射をさまざまな方向に分散させることで映り込みを軽減する。

すでにPro Display XDRでその良さを体感したことがある方がいるかもしれないが、極めて効果的で、天井の照明、あるいはユーザー背後の窓などがあっても画面が見にくくならならない。「すりガラスと同じでは?」と思うかもしれないが、テクスチャが微細であるため驚くほどシャープなのだ。一方で光沢感もなく、透過型ディスプレイにもかかわらずシルキーな見え味……なのだが、実物を確認しないまま5万円と言われれば、多くの人は選ばないと思う。

しかし、実際に目にした立場から言うと、個人的にオーダーするならばNano-textureでオーダーする。それほど鮮烈で素晴らしい品質だと感じたからだ。過去に様々な画面処理のオプションが業務用を含め用意されてきたが、あらゆる選択肢の中で最も優れていると断言したい。27インチiMacが備える5K解像度、コントラストやDisplay-P3対応の色再現域には影響を与えないことも強調しておきたい。iMacでグラフィックスデザインや写真現像、レタッチ処理などを行うユーザーには特に積極的に勧める。

また、周囲の照明環境に合わせて画面の色温度を最適化するTrueToneにも対応。ここまで完成度の高い、しかも5Kのディスプレイ環境は一体型以外では得にくく、またiMacほど装備が充実し、色再現も含めて品質が固められた製品はない。そういう意味ではWindows機を含めて明確なライバルがいないというのが率直な感想だ。

選択肢が広くローエンドはお買い得、では弱点は?

今回試用したモデルはCPU / GPUが最上位。冷却性能にも余裕があり、10コアのCore i9に加えてTDPが150WのRadeon Pro 5700XTを搭載したモデルでも、その性能をいかんなく発揮してくれる。

Luminar 4でRAWファイル現像時の様子

Luminar 4でRAWファイルを現像しながら、Intel Power Gadgetでプロセッサの動作状況をモニターしてみたが、GPU併用処理にもかかわらずTurbo Boostの上限5GHzに対して平均動作クロック周波数で4.5GHzを超えていた。

Cinebench R20実行時の様子

これは動画エンコードなどでも同様で、TDP125WのCPUに対して、冷却システムがきちんと機能している。試しにCPU負荷が高いCinebench R20でも同様のテストを行ったが、一時的にパッケージの消費電力は定格値を超える160Wにまで跳ね上がり、4.5GHz程度で粘りつつも最終的には4GHz近くまで動作周波数が落ちていく(CPUの温度が100度に近づいてくため)というグラフを描いた。

Fusion Driveを内蔵しなくなり、内部に空間が生まれたことで熱に対する適応性が増しているのかもしれないが、高負荷時に上限に近いクロック周波数でコンスタントに動作する熱設計の余裕があるようだ。今回は10コアのモデルでテストしているが、8コアCPU搭載モデルではもう少し上のクロック周波数で回ってくれるかもしれない。

他にもいくつかのテストを行ったが、断続的な負荷が続く処理の場合、クロック周波数は4.6GHz周辺に落ち着き、短時間であれば5GHzでの動作もしっかりこなす。熱設計には十分な余裕があるようなので、ベースクロックが低い下位モデルでも、実際にはずっと上の周波数でコンスタントに能力を発揮してくれそうだ。

なお、評価機には32GBのメモリが搭載されていたが、実際に購入する際は8GBモデルがいいだろう。なぜなら27インチiMacは、Mac Proを除く製品で唯一、メモリを自分で追加、あるいは交換できるからだ。メモリ増設のコストはサードパーティ製品を用いれば半額以下に抑えることができる。

では弱点は? というと、現行デザインのiMacが発売されてから、ずっと抱き続けてきた疑問はそのままだ。当時のレビューでも書いたのだが、机の上にiMacを置くと、視線がやや上になってしまう。

身長180cmの筆者でも視線が上向きになりがちなのだから、身長が低い方なら尚更だろう。普段ノート型で下方向への視線に慣れていると、この位置関係は辛い。頸部への負担も大きい。何しろアップル自身が推奨しているパソコンの使用環境(目線は水平か少し下方向)からも逸脱している。

この問題を解決するには、VESAマウントモデルを選んでモニターアームで位置調整するか、机の下に別の台を作るなど設置場所の工夫が必要になる。一番いいのは高さ調整機能を加え、さらに画面下の余白部分を削除したデザインに作り直すこと。Appleにはぜひ、iMacのディスプレイ位置が上すぎる問題に対して良い答えを用意してほしい(もちろん次回作以降になるのだろうが)。

一方で、長らく使った工業デザインということもあり、ローエンドモデルは低価格に仕上がっている。これだけの品質を持つ5Kディスプレイを内蔵しながら20万円を切る価格設定は安い。例によってオプションを積み上げると高価になっていく(テスト機の構成は50万円近い)が、同じデザインを守り続けることでエントリーモデルの価格が抑えられていることは評価すべきだろう。


 

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