Mark Makela via Getty Images
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米Amazonの物流センターは米国で最も危険な職場のひとつと言われています。しかしその汚名は雇用する側の意識が変わらなければ、払拭はできないかもしれません。


Motherboardが新たに報じたAmazon物流センターの"本当にあった酷い話"は「職場健康(working well)プログラム」と題して配布したパンフレットのなかで従業員に対し、自らを巨大な機械に組み込まれた歯車ではなく「産業アスリート」だと考えるよう求めています。

そして、毎日倉庫内を最大20kmは動き回れるよう日頃から体調を管理し、尿の色を見て健康状態を確認せよと指示していたとのこと。

またパンフレットには「従業員の中には1時間で平均400kcalを消費する社員もいます。アスリートとしての生活に備え、食生活や睡眠時間の確保、尿の色に気をつけて脱水状態にならないようにしてください」とあり、あたかもそのような仕事のあり方が当たり前かのように記されていた模様です。

さらに、靴ズレや足の裏にマメができたりしないよう「1日の仕事を終えた帰りに足がむくんだ状態で靴を購入すること」を推奨。これは長距離ランナーや何日も歩き続けたりするハイカーにはおなじみのアドバイスだとしていました。


しかしアスリートは通常、来る日も来る日も競技会があるわけではありません。ベストなパフォーマンスを引き出すにはもちろんトレーニングも必要ですが、それは入念な準備運動や十分な休息の上に成り立っています。

さらにトレーニング時間は長くて半日程度で、毎日シフト制で8~10時間も練習をするわけではありません。食事面も栄養士や調理師が栄養のバランスが良くカロリー管理されたものを用意するでしょう。

一方Amazonの倉庫従業員は、「1時間で平均400kcalを消費」するのなら、一般人の2倍近いカロリーを毎日摂取しなければなりません。しかし、Amazonの従業員の大半は生まれながらのスポーツマンでもなければウェイトトレーニングを毎日積んできたムキムキマッチョでもなく、その職場に来るまでに高度な肉体労働を経験してきているわけでもありません。

だとすれば、毎日ヘトヘトになりながら倉庫を駆け回っているあいだに集中力が尽き、どこかの時点で災害に至ってしまうのは致し方ないことと言えるでしょう。

Amazonの倉庫における重傷災害件数は、2017~2019年に比べて2020年では顕著に改善しているとされます。しかしそれでも他の倉庫労働者にくらべて2倍の重傷災害が発生しています。


日本の一般的な肉体労働の職場では、始業前にしっかりと準備運動やストレッチなどを行って身体をほぐし、仕事中も所定の時間には必ず休憩をとるよう推奨しているはずです。また脱水などを起こさないよう給水はマメに行うよう指示し、作業監督者は体調の悪そうな従業員を見かけたらすぐに作業をやめて休息を取るか、または自宅に帰す、病院へ連れて行くといった対応をするのが普通です。

”アスリート”という格好の良い言葉を用いつつ、従業員に自主的に尿の色を確認させるようなことが、本当に職場の健康環境の改善につながると思っているのであれば、それは著しく誤っているように思えます。雇用者が本来すべきことは、従業員の体力的に無理ないペースでの仕事配分と、健康維持のためのサポートの人材を提供するべきと言えるでしょう。


ちなみに、Motherboardへの情報提供者で元従業員のBobby Gosvenor氏は、昨年12月20日にベルトコンベアが誤作動を起こしたことで怪我を負い、痛みが取れなくなりました。その痛みの原因が椎間板ヘルニアとわかったとき、Amazonは痛み止めを飲んでとにかく仕事をするよう指示したとのこと。

そして、痛みや吐き気、異常な発汗などに耐えつつ繁忙期をやっとの思いで乗り切った1月4日、Gosvenor氏は出社してしばらく軽作業をこなした後、医師の診察を受けるために外出、職場へ戻ったところ「もうあなたには仕事がない」と解雇を言い渡されたと述べました。

Gosvenor氏は首の椎間板を除去する手術を受けましたが、Amazonから傷病認定を得るためには2人の別々の医師による診断書を提出するよう言われたとのこと。それでもさらに、会社が契約している外部の保険会社から電話がかかってきて「Amazonがセカンドオピニオンを受けるよう求めた」と言われ、手続きはさらに3か月遅れたと述べています。


AmazonはMotherboardに対し、このパンフレットは作られた後すぐに廃棄されたと述べました。しかし、Gosvenor氏は2020年11月にこのパンフレットを目にしたのち、数週間後には倉庫で大量にコピーが配布されていたと主張しています。

Source:Motherboard