新製品が出れば詳細を確認する間もなく即ポチるというITガジェッターが周囲にたくさんいるITライター業界の片隅において、筆者は珍しく新製品にはほとんど飛びつかないという珍しい(大事なことなので二度)人種なのだが、2020年には久々にいろいろ大きな買い物をしている。
すでに手持ちスマートフォンの5G化計画で2台買い換えたほか、キーボード不良とディスプレイの不具合で使用期間1年程度のMacBook Pro 13インチを2020年モデル(not M1の4ポート版)に買い換えたり、さらには初となるApple Watch(SE)に手を出したりと、もろもろ総額でいえば70〜80万円の投資をしているのだ。
そんな筆者が個人的2020年ベストバイと考えているのが「iPad」。AirでもProではない、2019年9月に発売されたノーマルモデルの第7世代であり、残念ながら今年9月に発表された最新世代(第8世代)でもない。
実はiPadを購入するのは2010年に発売された初代モデル以来のことで、実に10年ぶりだ。第7世代を購入したのは今年6月のことであり、新型コロナウイルスの影響で仕事スタイルが変化を受けてのもの。海外出張の多い筆者はほぼすべての作業をノートPCで完結させており、国内にいる間も原稿執筆を含む作業の多くは家の外で行っている。
持ち出しているのは主にMacBook Proだが、対人取材がオンラインミーティング主体になってくると困ることがでてきた。ZoomやTeamsなどのミーティング用アプリケーションは画面を占有して利用することが前提のため、ノートPCが1台だけだと目の前の画面でほかの作業ができなくなってしまう。
流し聞きが主体で、ときどき画面キャプチャすればいい記者会見であれば問題ないが、インタビューなどでは手持ちの資料を参照したり、相手の発言を事細かにメモしたりする作業が発生するため、どうしても画面が足りない。そこで最初はUSB-C接続のモバイルディスプレイを導入して画面を増やしていたのだが、相性があるらしく作業中に色味がおかしくなったり、あるいはそもそも接続できなかったりする現象に悩まされた。さらにPPIの問題で画面の広さに反してカーソルの移動量がMacBook側と異なることも気になっており、応急処置的な感じで使っていることが多かったのだ。
そうした流れもあり、MacBook Proを買い換えたタイミングでモバイルディスプレイ代わりにiPadを導入してみることにした。
macOS CatalinaではiPadをセカンドディスプレイとして利用できるSidecarという機能が実装されており、両者を組み合わせて手軽にデュアルディスプレイ環境を構築できる。実はモバイルディスプレイを購入した4月にもiPadを使ってデュアルディスプレイ化を目論んでいたのだが、WFH(Work From Home)需要のおかげかほとんどの家電量販店やApple StoreでiPadが売り切れており、仕方なく3万円程度のモバイルディスプレイを購入したという経緯がある。
不満がでてきたので、6月以降にiPadの在庫が復活してきたこともあって買い換えに至った。選んだのが無印iPadなのは、Sidecar以外の機能を使うつもりがなく、大きさも10インチ前後でちょうどいいと考えたから。認証方法が個人的にTouch IDなのもポイントとして大きい。
Sidecarとし使う上で、MacBook ProとiPadの接続方法はWi-Fiと有線の2種類があるが、お勧めなのは有線の方だ。Wi-Fi接続でも問題なく手軽というレビュー記事も見かけるが、実際に試してみると分かるように動画系はまともにストリーミングされず、カーソル移動などのレスポンスも遅い。有線ではLightning経由でiPadを充電しながら利用できるというメリットもあり、Sidecarを快適に使いたいのであれば有線接続が必須だといえる。
Sidecarは設定も非常に簡単で、Sidecar対応のiPadが近くにあれば自動的に接続が可能になる。Sidecarはセカンドディスプレイとして扱われるが、プライマリのディスプレイの延長として利用するか、ミラーリングで同じ情報を同期させて表示させるかの選択が可能だ。
今回はディスプレイ枚数を増やすので前者の設定を選び、かつ左側に接続する設定にしている。iPadのカバーを使った据え置き仕様が原因で、Lightningポートが向かって右側に出ており、有線接続時にはMacBook Proの左側に配置した方がケーブルの取り回しが楽になるという理由からである。
セカンドディスプレイの役割をUSB接続のモバイルディスプレイからiPadに切り替えたことで、いくつか副次的なメリットが生まれた。iPadそのものは独立して動作が可能なため、SidecarではなくiPad上にYouTubeアプリやZoomアプリなどを入れて会見中継を見つつ、MacBook Proでは別のミーティングに参加するという使い方も可能になった。
1台のマシンで同時にミーティング参加となると、マイクやスピーカーが排他で奪い合いになったり、あるいは同時参加のミーティングが同じアプリケーションを指定してきたときなどに不都合が生じるため、分業体制が役に立つ。
また、移動中のミーティング参加はMacBook ProのようなノートPCよりもiPadのようなタブレットの方が都合がいいため、ノートPCを開けない(開きにくい)シチュエーションではiPadの方が活躍してくれる。イヤホン端子がついていて、音声を外に出さずに会見に参加できるのもポイントだ。
筆者は前にBluetooth接続のイヤフォンでオンラインミーティングに参加していろいろ事故に遭遇したことがあり、それ以降無線は信用しておらず、基本的に有線イヤフォンしか利用していない。最近のスマートフォンではイヤホン端子がなくなってきているため、iPadのこの部分は非常にありがたい。
以上のように、iPad導入以後の稼働率は非常に高い。
本稿執筆の直後にもオンラインでのラウンドテーブルが3件ほど実施される予定なので、今日は終日iPadのお世話になることになりそうだ。新型コロナウイルスの影響が今後どこまで続くか不明だが、もし海外渡航が復活するようになっても、おそらくiPadが旅の友であることには変わりないだろう。