そろそろ2020年も終盤戦。今年もたくさんのガジェットが発表され、弊誌にてレビュー記事が掲載されました。そんな記事のなかでも、著者や編集部がイチオシと考える製品をピックアップしてもう一度お届け致します。

これは2020年10月21日に掲載された記事の再掲載です。記事中に登場する価格や機能、画像などは当時のもので、現在は異なる可能性があります。

IT機器の買い時は難しい。ぶっちゃけ、難しいから情報を生業にする筆者のような仕事が食べていける部分はあるのだけれど、消費者にとってはめんどくさい話であるのもまた事実だ。

iPad Air(第4世代)は、とてもいい製品だと思うが、タイミングの問題から「いい製品だけど他の機種との位置付けが気になってどう選べばいいのか」という問いの真ん中にあるようにも思う。

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▲第4世代iPad Air。色はスカイブルー。Wi-Fi版だ。

というわけで、実機を触りつつ、その辺を考えてみた。

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Proとの違いは「使えば確実に違う」のだが……という世界

デザインからお分かりのように、iPad Airは「iPad Proと同じ世代」の設計になっている。筆者は日常的にiPad Proの12.9インチモデルを使っているので、このデザインには非常に馴染みがある。パッと見、ディスプレイにもほとんど違いは感じない。

▲Magic Keyboardをつけて撮影。こう見るとiPad Proの11インチとほとんど違いがないように見える。

いや、実際にはちゃんと違いはあるのだ。それは何かと言えば、iPad Proはディスプレイが毎秒120フレーム描画で、iPad Airは60フレーム描画。スクロールさせると「ああ、ちょっと滑らかさが足りない」とは思う。ただそれはすでに筆者が贅沢な環境に慣れているからだろう。同様に、ディスプレイ側の影響を受ける形で、Apple Pencilの入力遅延もAirの方が少し大きくなる。これも、横に置いて使うと「ああちょっと違うなあ」と思うくらいには違う。

とはいえ、だ。発色などの違いは感じられないし、フレームレートに起因することも「あればありがたいが……」というレベルである。ProとAirの間には2万円近い価格差があり、これは如何ともしがたい。

実機性能ではProが上だが、A14の優秀さは圧倒的

しかも、Airの方がいい部分もある。

例えばプロセッサーだ。以下のベンチマークをご覧いただきたい。CPUのシングルコア性能ではiPad Proを超え、GPU性能もかなり近くなっている。CPUやGPUのコア数は、Proが使っている「A12Z Bionic」とAirの「A14 Bionic」では異なるため、トータルでの性能はProの方が上だ。

なのに、使っていると「あんまり変わらない」印象を受ける。というか、Airが十分にパワフルなのだ。なにしろ、高性能CPUコア2つ分、GPUコア4つ分もA12Z Bionicの方が多いのに、これだけの差しか出ていないのだから。GPUに至っては、コア数が倍のProを抜いている。

iPad Air
iPad Pro ▲Geekbench 5による、iPad AirとiPad Proのスペック比較。Airはメモリーが4GBになっている。

iPad Air
iPad Pro ▲CPUのベンチマーク結果。マルチコアではProが勝るが、シングルコアではAirが圧勝だ。
iPad Air
iPad Pro ▲GPUのベンチマーク結果。なんと、4つもコア数が多いはず(8コア)のProを、4コアのAirが抜いた。A14の優秀さがわかる。

ビデオ編集ソフトの「Adobe Prmire Rush」で、4K映像4本をまとめて1分にしたものを、書き出すまでの時間も確認してみた。結果は、Proが「約1分17秒」、Airが「約1分26秒」だった。この差ならAirでもいい、と思うのではないか。逆に言えば、A14世代のiPad ProやApple Siliconマック(おそらくCPUコア・GPUコアが強化される)ではどれだけ早くなるのだろう……と期待したくなる。

ちなみに、Airのメインメモリー量は4GB。ベンチマークの値も「iPhone 12」とほぼ同等であり、Rushでのビデオ書き出しの速度も同じだった。そう考えると「iPhone 12は速い」ということにもなるのだが。

指紋センサー搭載も有利な部分かもしれない。顔認証であるFace IDはマスクだと大変……なのは、皆さんもこの半年で十分体験したはず。画面デザインも、電源ボタン搭載のTouch IDに合わせて最適化されている。

▲指紋認証センサーのTouch IDは電源ボタンに組み込まれている。

だが、実際に使うと「別にTouch IDでなくてもいいかな」と思ったのも事実だ。タブレットは宅内で使うことが多く、マスクを外しているシーンも多い。また、外付けキーボードである「Magic Keyboard」をつけた場合、電源ボタンまでの距離が遠く、「キーコード入力でもいいか」と思ってしまうこともあった。この辺、「顔認証と指紋認証が両方あるならいい」のだが、片方だと意外とニーズが満たせていない。

iPadを外で使うシーンが多い人には、もちろん、Touch IDは福音だと思うが。

▲設定時や認証が必要な時には、このように画面にも表示が。

なお、カメラはProの方が優れている。超広角カメラはやっぱり便利だ。LiDARの搭載も、ARにはプラスだ。iPhoneと異なり、iPad ProのLiDARは写真撮影機能との連動はないようで、そこは残念なところだが。「iPadではそんなに写真は撮らない」「ARはまだいいや」という人には、この要素は響かないだろう。もちろん。

ただ、Magic Keyboard自体はProでもAirでも併用なので、カメラまわりが若干寂しいことになっている。

▲上がAir、下がProのカメラ部。Magic Keyboardを付けると、カメラ部の「切り欠き」で差が出る。

むしろ目立つ「iPad」の安さ。Airがお買い得なのは間違いないが……

現在のiPadのラインナップでみた場合、やはりスタンダードな「第8世代iPad」のコスパがずば抜けている。ひと世代前のデザインのままなのだが、3万円台で手に入ることに勝るものはない。

▲iPad Pro(11インチ)、iPad Air、iPad(第8世代)をアップルの比較ページで並べてみた。機能的にはProとAirが競るのだが、iPadの安さがずば抜けている。

そう考えると、iPad Airはやはり性能や機能重視の人向けだと思う。上に挙げたように、今のProとの差はかなり小さい。11インチモデルでいいなら、正直Airを選ぶべきだ、と筆者は思う。ただ、ストレージが64GBなのは流石に小さい。128GBを飛ばして256GB、というあたり、アップルの値付けがなんとも憎らしい。一方で、Proのストレージは、必要にして十分な128GBからなのだ。ただ、Airを256GBモデルにしてもProの128GBモデルより安いので、そこは予算との兼ね合いだろう。

iPhoneにしてもそうだが、アップルはストレージのラインナップを「意図的にコントロール」することで、上位機種と下位機種のバランスをとっている節がある。「これ、もうちょいストレージがあればいいのに」と思うと、そのモデルが絶妙に用意されていない。

そんなわけで、冒頭で述べたように「機種選びは難しい」という話になるのだ。

それでも、Airがお買い得なモデルであるのは間違いないけれど。トップ性能の「次期iPad Pro」は気になるが、きっとなかなかいいお値段になるのも目に見えているので……。

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