そろそろ購入した方(ただし速攻でクリックした人から順番にだけれど)の手元にも、2021年モデルの「iPad Pro 12.9インチ」が届き始めている頃だろう。

▲iPad Pro 12.9インチモデル・シルバー。シルバーには同時発売の「Magic Keyboard・ホワイト」がよく似合う。

▲本体のみで。見た目は旧モデルとほとんど変わりない。

2021年モデルはミニLEDを使った液晶ディスプレイになったこと、プロセッサーが「M1」になって動作が速くなったことなど、内部的な進化点が多い。

というわけで、新iPad Proの進化を楽しむなら「ここを見るといい」という点を、ひと足先に試した人間の視点でご紹介したいと思う。

性能の劇的進化は「誰にでもすぐ体感できる」ものだ

まずはプロセッサーの進化から。

以下の「GeekBench 5」での結果を見ていただこう。まあ、これはあくまで「数値」。ベンチマークを見て一喜一憂できるのはよく訓練されたマニア(もちろん私も含む)だけなので、そのあたりの注意は必要だ。

▲GeekBench 5でのCPUベンチマーク。白が2021年モデルで、黒が2020年モデル。

ポイントは2つある。CPU速度が「素直に4割速くなっている」こと。ベンチマーク以外の処理をしても、確かにだいたい4割速くなっている。

Adobeのビデオ編集ソフト「Premiere Rush」で、2分30秒に編集した4K動画を書き出すまでの時間を比較してみよう。2020年モデルでは「約180秒」。それに対して2021年モデルでは「約113秒」となった。

同様に、「Lightroom」で144枚のRAW形式写真をJPEGで書き出すまでにかかる時間は、2020年モデルだと「約152秒」だったものが、2021年モデルでは「約96秒」に短縮されている。

どちらも計算上、37〜38%の時間短縮となる。シンプルにこれだけ時間が短くなるのはありがたいことだ。数値をわかりやすくするため、それなりに長い処理を例に出したが、短時間で終わる処理でも、要は「数%でなく数十%の単位で速くなっている」わけで、動作のキビキビさを確認できる。

さすがに、文字入力やらウェブの表示だともともと快適なのでわかりにくいが、「ファイルをZipで固める」とか「動画のいらない部分をカットして他人に送る」などのレベルでも、速度の違いは十分に体感できるだろう。

なお、メインメモリーの量が6GBから8GBもしくは16GB(ストレージ1TB以上のモデル)に増えた結果、アプリ切り替えをした際の挙動がより快適になっている。このあたりも「動作のキビキビさ」に関係してくるだろう。

さらにもう一つ。GPU周りの処理も速くなっている。こちらも「GeekBench 5」の値だが、CPU以上に差が大きい。

ipad
▲同じく「GeekBench 5」でのコンピューテーション(主にGPU)性能ベンチマーク。白が2021年版で、黒が2020年版。

「3D CG以外だと、GPUの処理ってどう効いているのかわからない」という人は多いと思う。実際わかりにくい。だが、写真を撮るときやARアプリを使うときなどには利用していることが増えてきた。その関係上、iPadも(実際にはiPhoneもだが)、ちょっとした処理で発熱しやすくなっている。ビデオ会議でバーチャル背景を使う場合など、意外と負荷は大きいものだ。

そうした際、短時間の試用で感じているのは「発熱が少し抑えられているのではないか」という点である。ファンのないiPad Proでは、プロセッサーの負荷を落とすことが発熱軽減に効いてくる。

今後、向上した処理を縦横に活かすアプリが出てくるかもしれないが、それはもう少し未来の話。今は「かなり速くなった」「ちょっと発熱が少なくなった」という快適さがポイントなのだ。割と、この変化はわかりやすいものかと思う。

ミニLEDのコントラスト向上で映像の「立体感」「没入感」が増す

さて、今回の進化の真打は、やっぱり「ミニLED」だろう。

画質変化はかなり大きく、実際に見れば誰にでもわかる……と筆者は思うのだが、一方で、画質とか音質の違いというのは、いわゆる「アハ体験」に近いところがある。わかる人にはこれ以上ないくらい自明で、悪い方に戻すのが苦痛だったりするのだが、気がついていないと「これでいいのでは?」と思ったりもする。

特に、旧モデルの画質も全体水準で言えば良好なので、ミニLEDモデルを見ていない人から「別にいいんじゃないの?」と思われそうではある。

というわけで、比較写真を示し、「ここを見て」という部分を解説していきたいと思う。どちらも左側がミニLED搭載の2021年モデル、右が2020年モデルだ。

まずは東京駅前のこちらの写真。見て欲しいのは「建物の照明」と「路面」だ。

▲東京駅の夜景。特に建物の照明と路面の表現に注目

照明が明るいのはわかると思うが、この方が現実の見た目に近い。明るい部分がグッと明るくなって感じられるわけだ。

▲照明の部分を拡大。グッと明るくなっているのがわかるだろうか

次に路面。明るいだけでなく、暗い部分もしっかり暗い。なので、同じように平面の画像であるのに、奥行き・立体感を感じるのは20201年モデルの方だ。

▲路面を一部拡大。明るさ以上に、コントラスト向上で立体感が増しているのがわかる

次に、銅像の写真。これは、銅像に注目するとわかりやすい。

▲フランスで撮影した銅像の写真。空の色の感じも違うが、特に見て欲しいのは銅像とその土台だ

両者を比較すると、立体感があるのは2021年モデルであるのがわかるだろう。

▲銅像の一部を拡大。こうして見ると立体感がまるで違う

もう一つ、公園の青空の風景を見ていただこう。こちらは「雲」と「芝生」が注目ポイントだ。

▲都内の公園で撮影。青空の雲の様子と芝生に注目

雲を見ると、2021年モデルの方がより白い。これは液晶やバックライトの発色傾向による違いが大きいだろう。これだけ「色が違う」のは、色の傾向を確認する上ではどうか……と思う部分もあるが、現実に近いのは2021年モデルの方である。そしてやはり、奥行き感はより感じやすくなる。

▲青空と雲を拡大。白い雲の美しさ、奥行き感ともに、2021年モデルが優れている

芝生はもっとはっきり違う。テクスチャー感が、2021年モデルと2020年モデルでは全然違うのだ。

▲芝生の印象は全く違う。明るさとテクスチャ感が増し、自然なのは2021年モデルの方だ

HDRに強いディスプレイというと「明るいのだろう」というイメージを持つかもしれない。照明などだとそこが目立ちやすいので間違いではないのだが、本質は「コントラスト向上によってテクスチャー感をより正確に感じられるようになること」であり、結果として「映像の立体感が増す」のである。これらのサンプルからは、そうした違いがはっきりとわかるのではないだろうか。

そうした違いは、映像制作や写真の加工だけで活きてくるものではない。映画やドラマを見るときももちろん絶大な効果がある。

言われてみればわかりやすい話なのだが、「コントラスト向上による発色とテクスチャー感の向上」というのは、有機ELや高級液晶を使ったハイエンドテレビの謳い文句そのもの。映画を見るのに適しているのは当然のことなのだ。

ついでにもう一つ。ミニLEDの2021年モデルでは、黒が「本当に黒く」見える。

映画などでは、映像が写っていない「フレーム」部分があって、そこは通常黒い。だが、通常の液晶だとどうしても黒がほんのり明るくなってしまい、若干没入感を削ぐところがある。だが、2021年モデルでは「フレームも黒」になるので、没入感という点ではプラスと言える。

▲わかりやすいよう、露出をあげて撮影。2020年モデルでは絵の周りのフレームが白く浮き出ているのに、2021年モデルでは黒いままだ

ただ、このミニLEDにもまだ課題はある。

明るい部分と暗い部分が隣り合う場合に、暗いところにも「明るさが染み出してしまう」のだ。これを俗に「ヘイロー(光漏れ)」という。有機ELのように「ディスプレイの画素数=発光画素数」に近いディスプレイでは問題になりにくいが、バックライトを分割駆動する液晶では出やすい。iPad Proの場合も、ミニLEDが1万個以上あっても、画面の明るさは「2500程度」の分割数なので、バックライトの明るさと映像がマッチしない部分が若干出るのだ。

ヘイローについては画像処理やバックライト制御で軽減できて、テレビメーカーはそこを色々と工夫している。AppleもOSのアップデートや製品のアップデートを積み重ねて、こうした部分を洗練させていくのではないだろうか。


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