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昨日よりApple M1を搭載するiPad Proの評価記事が掲載され始めているが、このコラムではシンプルに12.9インチモデルにだけ採用されているミニLEDディスプレイの評価に絞って書き進めることにしたい。

発表時のおさらいをしておくと、12.9インチモデルのiPad Proには、1万個以上のLEDを搭載した2500分割のローカルディミング(部分的にバックライトの明るさを変えながら映像を表示する手法)採用のLiquid Retina XDRディスプレイが使われている。

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”ミニLED”と称されているのは、LEDを個別の部品として並べるのではなく、小さな素子のレベルでバックライトユニットに整列させているから。故にこのサイズに1万個を並べられるわけだ。

分割数が多ければ、より積極的にローカルディミングを行っても、光が漏れている場所と消灯した場所の境目を目立たなくしやすい。一般的なテレビでは数10、あるいは10数個のエリアにしか分割されないが、2500分割ともなればかなりの高画質が期待できる、というのは理屈の上で、実はミニLEDでも制御が無茶苦茶で効果的とは言えないものもある。

ではAppleのミニLED制御はどうなのか? ということで、Engadget 編集部でいち早く評価していた12.9インチiPad Proの画質をチェックしてみた。

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ミニLEDの不得意なパターンを試してみたものの

少々意地悪ではあるが、ミニLEDの不得意なパターンから試してみることにした。

ミニLEDの分割は細かいが、例えば真っ黒な背景に斜めの直線といったパターンでは、斜め線に合わせ、薄く光る四角いマスが並ぶような表示になるものもある。

全体に見ればコントラストが大きく改善はしているものの、格子状のバックライトパターンが見えるのはちょっとみっともない。そこでメモアプリを使って黒い背景に白い線を描いてみた。

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カメラの感度が自動的に上がって、少しばかり周りにモヤがかかって見えるだろうが、これがまさに上で書いていたこと。ローカルディミングで光っている部分と光っていない部分の落差でモヤっぽく見える。白い線だけではなく、アイコン部分などにも同様のボヤッと蜘蛛のような縁取りが出ているのがわかるだろう。

しかし、これはカメラであえて見えるように写しているだけ。実際にはここまでのモヤ(ハロという)は出てこない。部屋を真っ暗にしてディスプレイを見たとき、今回のように黒基調の明るくない画面を注視すると、瞳孔が開いているために少しだけ気になるが、通常はそんな見え方にはならない。

ローカルディミングの弊害は、明るさの制御やそれに伴う液晶画素のゲイン調整も大きなポイントではあるが、実は光学設計が重要だ。

領域分割の境目がはっきりしていると、格子状にバックライトの境目が見えてしまう。一方、光が周囲の領域ににじみ放題になると、今度は画素のゲインコントロールがやりにくい。

少なくとも分割数に見合う、ほどよい滲み具合でバックライトの光学設計が行われているようだ。では画素のゲイン調整はどうなってるの? というところが、次の見どころとなるだろう。

静止画でも動画の中でも不自然さを感じさせないゲイン調整

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画素ごとにボヤッと滲みつつ、場所ごとで微妙にバックライトの明るさが違うわけで、バックライトの状況に合わせて画素ごとに適切なゲイン制御が行われないと、本来の輝度や彩度で画素が表示できない。

動画の中ではある程度ごまかすことはできても、iPad Proのように静止画、それもフォトグラファーが作品を扱うといったシーンでは弊害となることも考えられる。

しかし、この点でも問題ないように思えた。せいぜい数10分のテストであったため、あらゆるケースを想定したチェックはこれからだが、例えばHLGフォトなどHDR情報を含む写真を表示させても、暗部からきらりと光るハイライト、それに高輝度ながら深い色となるネオンサインなども含め、違和感なく表示しきってくれた。もちろん、通常のSDRの写真ならばなおさらだ。

次に動画だ。動画の場合、特に長編作ではシーンごとに輝度のレンジを切り替え、明るく抜けのいいシーン(あまりローカルディミングは必要ない)から、鬱屈とした暗いシーンのようにダイナミックレンジの中でもローライトの一部分だけを使う表現などを使い分けることが多い。

このため黒が沈み、暗部での色もしっかりと正確に出せることが望ましいが、液晶は原理的に暗部の正確性が低いデバイス。液晶で暗部を正確に表現するには、バックライトの絞り込みが必須だ。ということでミニLEDの活躍が期待できるわけだが、前述したモヤ=ハロが酷いと、動画のフレームごとにウニウニとバックライトが動くパターンが透けて見えてしまい、実に気持ちの悪い結果になる。

しかし、暗いシーンがフィーチャーされた映画でも、違和感なく、またハロを気にすることなく楽しめた。これはHDRの映画でも同じで、1000nitsを超えるような情報を含む映画でも不自然さはなく、例えば夜のニューヨーク・タイムズスクエアのLED看板や、夜のバーの入り口、暗い夜景の中に浮かぶネオンなどが違和感なく楽しめた。

当然、ハロが発生しているはずだが、少なくともゲイン調整の不具合と思われるところは見つからない。

俳優などが出てくるシーンは不都合なため、グラフィクスだけで構成されたApple TV+の「CALL」という映画の写真を紹介するが、画面下部のミディアムグレーの領域が、左右で色合いが異なっているのが見えるだろう。右は旧モデルで同じシーンを映したものだ。

液晶は暗部の色再現域が狭く、また色相も回転しやすい。それでも旧iPad Proの液晶はそれなりに調整をしていたが、ミニLEDでバックライトを適切に絞り込むことによって、色相が安定してニュートラルなグレートーンを表現できているのがわかる。

クリエイターはもちろん、映像マニアにも意外とおすすめかも?

iPad Proがこうしたディスプレイを備えることで、写真家の作業は大きく変わるかもしれない。これまで以上に多様なタイプの写真を正確にレタッチ、あるいは現像時の調整で細かく追い込めるはずだ。

また動画撮影などではラッシュ映像の確認はもちろん、iPad Proを用いながらHDRのグレーディング作業を検討できるぐらいの品質だと思う。もちろん、最後は業務用のマスターモニターを用いるべきだろうが、ワークフローを大きく変える存在になると思う。

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では一般ユーザーにとってはどうだろう?

「小画面、近くで観れば大画面」と冗談で話しながら、20インチのトリニトロン管BVM(ソニー製マスターモニター)を自宅に置いて映画を楽しんでいた先輩を思い出した。

いや、それぐらいに画質は良い。この価格で、これだけ良い映像を楽しめるならば、近い位置で映像作品を楽しむためのモニターとして使ってもいいかもしれない。


 

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