いよいよ、iPhone 12シリーズが出揃うこととなりました。4つもモデルが登場して、どれを選択するのか? なかなか難しい判断に迫られます。Appleは5G対応で未来への備えを呼びかけており、買い換えサイクルが3年以上に延びきっているユーザー層に対し、デザイン変更と5G対応で買い換えを促す戦略です。

Appleは、iPhone 6 / iPhone 6s Plusで増加したiPhoneのユーザーに買い換えを促したい考えで、iPhone 12 miniはiPhone 6より小さいのに、iPhone 6s Plus並の大画面、しかも世界で最も小さい5G対応のハイエンドスマホ、というキャラクターを強力な武器にしています。

そして、画面サイズが大きい方が良いという40代以上の世代にはiPhone 12の6.1インチを、カメラにこだわりたいけどMaxは重くて大きすぎるという人にiPhone 12 Proを、となかなか上手い布陣を敷きました。

2020年世代のiPhoneのエントリーとミドルレンジをがっちり固めたことが、2020年のMaxを「これぞMax」と言える仕上がりへ押し上げたのだと思います。そんなわけで今回はiPhone 12 Pro Maxの散歩カメラレビューをお届けします。

iPhone 12 Pro Maxは6.7インチに拡大されたディスプレイと、ビデオ再生20時間のバッテリー駆動を誇る最大サイズのiPhone。デザインはシリーズ共通ですが、Proモデルはステンレススチールの鏡面と、磨りガラスのようなマット仕上げの背面。側面ピタピタ、背面サラサラ、そして硬いセラミックシールドのつるつるとしたディスプレイという3つの素材が指先で楽しめます。iPhone 11 Pro Maxよりサイズはやや拡大しているのですが、側面がフラットな面になったこと、薄くなったことで、握りやすくなりました。手が小さめの筆者は両手での操作が基本となりますが、たまに片手で握るときの安心感が違い、これはカメラとしてiPhoneを構えるときにも大きなアドバンテージになるでしょう。

広角カメラの表現力

センサーサイズが47%拡大したiPhone 12 Pro Maxの広角カメラ。35mm判換算で同じ26mm相当の広角カメラ、他のiPhone 12で撮影すると「4.2mm」と記録されていますが、iPhone 12 Pro Maxでは「5.1mm」と表示されます。同じ35mm換算の焦点距離にするなら、センサーサイズが大きければより広く写るため、組み合わせるレンズを望遠寄りに調整している結果です。

ミラーレスの世界でも、APS-Cよりフルサイズの方が描写力や暗所性能で有利と言われています。スマホのカメラでも当然同じことが起きるわけで、被写体に近づいて撮影すると、背景はガッツリきれいにボケてくれる、というのが率直な感想です。ハンバーガーの写真。刺さっている楊枝の先までくっきり写り、背景はいい具合にボケる。ついでに写真右端の、ハンバーガーの手前までややボケています。被写界深度が浅いことがわかります。

iPhone 12 Proと比べても、背景が細かくてもとっちらかったりせず、ポートレートモードを使わなくてもf1.6の明るいレンズのボケを素直に楽しむ事ができます。というか、この感想、一眼レフの単焦点レンズのそれに近いですよね。

もう一つ、Maxらしい広角レンズの特別な仕様は、センサーシフト式手ぶれ補正。センサーが動いて、毎秒5000回もブレを補正する仕組みです。これは暗所性能を高めており、作例の真っ暗な公園の赤い滑り台をナイトモードで収めたところ、3秒を手持ちでブレずに映し出すことに成功しました。手持ちで星空の撮影も、更に手軽になりそうです。

LiDARがものを言う高速AFと、進化を続けるポートレート撮影は楽しい

今回進化を感じたのは、広角レンズと共にポートレートモードです。iPhone 12 Pro以上のモデルには、iPad Proにも採用された5m以内の物体との距離を正確に計測するLiDARスキャナが搭載され、しかもiPhone 12 Proではカメラシステムに組み込まれ、オートフォーカスなどのアシストを行う仕組みとなりました。

暗いところでのオートフォーカスのアシストは、数値の上では6倍と謳われていますが、わかりやすく言えば、フォーカスを合わせるまでに迷わなくなったり、迷った末合わなかったり、みたいなことがなくなります。この変化は如実で、暗いところでなかなかシャッターが切れない、ということがなくなったのは、ありがたい進化と言えます。

またポートレートモードも進化しています。これまでiPhoneのポートレートモードが苦手だったストロー問題も、iPhone 12 Pro Maxでは上手く解決していました。居酒屋の店内に積まれたガラスのコップも上手くポートレートモードで切り抜けています。

とはいえ、完全に明るいところだとやっぱりストローもダメで、同じ環境でiPhone 12 miniのポートレートを試しても上手くいかず、というところを見ると、ポートレートモードにもLiDARの有無が関係しているのかもしれません。もちろんユーザーに「いまLiDAR使ってます」と明示することはないので、現状真相を知ることはできないのですが……。

これまで少し暗いところでは避けていたポートレート撮影も、iPhone 12 Pro Maxならガンガン活用できます。このあたり、光学的な進化とコンピュテーショナルフォトグラフィーの強化の両面を体感できる良い事例だと思いました。

Dolby Visionのワークフロー

ところで、iPhone 12が登場して以来、なかなか難儀なのがDolby Visionで撮影したビデオをどうすれば手軽に共有できるか? という問題。そして、できればほとんどみんなのスマホに入っているYouTubeを活用したい、ということで1か月近く色々と試していたのですが、意外なところで解決策が見つかったかもしれません。

1か月前、iPhone 12 Proで撮影したビデオをFinal Cut Pro Xで編集し、YouTubeにアップしようとしたのですが、Final Cutから直接YouTube共有機能でアップロードしたら、以下のように真っ白になってしまいました。10-bit HLGを自動的に8-bitにして変換アップロードしたためこうなってしまった、と考えられます。

ならばと、Final Cutから10-bitのままでファイルに書き出し、YouTubeにアップロードし直しました。アップロードしてYouTube側の処理中の間は、先ほどのビデオと同じように白飛びした状態だったのですが、処理が終わると下の動画の通りくっきりと明暗・色表現豊かな映像に……。※iPhoneなど、HDR再生可能なスマホなどでご覧下さい。

そんなわけで、HDRコンテンツのアップロードはできたのですが、書き出す際にはApple ProRes422の10ビット高色域で書き出し、結果として3分のビデオがおよそ9GBと、とんでもないファイルサイズになってしまいました。これは日常的に扱えるファイルサイズではないと思い、頭を悩ませていたのです。

そんな状況の中、新バージョンのiMovieが配信されていたので、ふと、これを使ってみることに。すると、すいすいiPhone上で動画編集でき、しかも4K/24fpsのHDRビデオを書き出すオプションも利用できました。1分18秒のビデオのファイルサイズは233MBで済み、これをYouTubeにアップロードすると、きちんとHDRビデオとして処理されました。以下の動画をご覧ください。

さすがに1分あたり3GBだと日常的にシェアするのには難しいレベルですが、200MB程度なら撮影しただけの4K/24fps Dolby Visionのビデオと同じサイズ。手軽に扱うことができます。このファイルサイズの小ささは、高い圧縮効率を誇るHEVCによるもので、iMovieも10ビットHDRビデオのHEVC書き出しを行えることがポイント。これもA14 Bionicの実力で、再生時間とほぼ同じ程度の時間で書き出せて、ストレスを感じません。

当たり前のように感じるかもしれませんが、これをMacやWindowsに持ち出して同じことをやろうとすると、よっぽど高性能なマシンを組んでいなければ、同等のスピードになりません。iPhoneのカメラとA14 Bionicの組み合わせ以上に快適なDolby Visionワークフローがなく、iPhoneのディスプレイ以上に手軽でキレイにHDRコンテンツが楽しめるディスプレイもない。

そういった意味でもiPhone 12 Pro Maxは、自分でHDRビデオを撮って編集し、自分で楽しむためには最高に贅沢な1台であり、とはいえ周辺環境が整うまでにはまだしばらく時間がかかりそうだ、ということです。


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