iPhone 12 Pro Maxの本体(画面)サイズ以外で、同シリーズ他モデルとの分かりやすい違いはカメラでしょう。色々な情報からもiPhone 12 Proよりパワフルになっているのはわかりますが、具体的にどの部分が特別なのでしょうか?

並べてみてもiPhone 12 Proと同じに見えるカメラ部分ですが、実はiPhone 12 Pro Maxのほうが大きくなっています。スペックには記載されていませんが、超広角、広角、望遠レンズ、すべての大きさも違います。なお、LiDARセンサーについては同一スペックです。

▲カメラユニット部分のサイズは、iPhone 12 Pro Max(左)がH40.93mm×W38.48mm。iPhone 12 Pro(右)ではH35.50mm×W33.32mm。厚みも前者は2.79mm、後者が1.72mm。ひとまわり大きさが違います。レンズもほんの少しだけiPhone 12 Pro Maxの方が大きいです。

別物の広角カメラ

iPhone 12 Pro MaxとiPhone 12 Proのカメラで最も大きな違いがあるのは広角カメラ。カメラアプリを起動した際に表示される等倍(1倍)のカメラで、最も多用される標準カメラですね。

スペックから読み取れる部分では、iPhone 12 Pro MaxではiPhone 12 Proよりもセンサーサイズが47%拡大しています。画素数はどちらも同じ12MPですが、センサーサイズが大きくなったことで1画素あたりの光を受ける面積が増えますので、暗い場所での撮影に強くて明暗差が大きい場合でも黒つブレや白飛びを抑えた滑らかなグラデーション表現が可能となります。

細かな部分ですが、iPhone 12 Pro Maxでは広角カメラのレンズだけがiPhone 12 Proの6枚構成から、7枚構成へと変更されています。標準カメラではあるもののやや広角気味のレンズなので、レンズを追加することで撮影時に発生しやすい歪みを改善しています。こうした機能アップはカメラモジュールも大きくなりますし、構造が複雑になるためコストアップに繋がりますが、あえて採用している所にAppleの広角カメラへの並ならぬこだわりがうかがえます。

そして、手ブレ補正機能についても違いがあります。iPhone 12 Proに採用される光学式の手ブレ補正がレンズ側の手ブレ補正用レンズを制御して補正するのに対して、iPhone 12 Pro Maxの広角カメラに搭載されたセンサーシフト式の手ブレ補正は、その名のとおりイメージセンサーを動かしてブレを補正します。広角カメラにのみがこの方式を採用したのは、前記の複雑化したレンズ構成が影響していると考えられます。

センサーシフト光学式手ブレ補正は、レンズ交換式のデジタルカメラの場合、カメラボディ側のイメージセンサーに手ブレ補正機能が搭載されるので、組み合わされるレンズの種別に関係無く手ブレ補正が使えるので有効な手段。ですので、レンズが固定されたiPhoneのカメラではあまりメリットが無いようにも思えます。もう少し突っ込んで考えるとオリンパスのハイレゾショットの様に、意図的にイメージセンサーをズラして繰り返し撮影することで、超高解像度写真が撮れる可能性もあるでしょう。

よりボケ感が強まった望遠カメラ

iPhone 12 Proの望遠カメラは35mm判換算で52mmですが、iPhone 12 Pro Maxでは65mmとより13mm望遠になりました。しかし、単純により遠くの被写体を大きく撮影できるだけでありません。

例えば、ポートレートモードではレンズの焦点距離が長くなったことによる被写界深度の浅さと、画角の狭さによる背景ボケを強調した「被写体が前に出る」写真が撮影できます。人物写真や動物写真を撮る時は積極的に使いたいところです。

iPhone 12 Pro Maxの望遠カメラは絞り値がF2.2と、iPhone 12 Proと比較してやや暗くなっていますが、実際の撮影ではあまりそれを感じることはありませんでした。手ブレ補正が十分に効いているので、薄暗い中でも安定して撮影できるのが助かります。

iPhone 12 Pro Maxでは、望遠カメラがより望遠となっている関係で光学ズームは5倍となります。それに合わせてデジタルズームも12倍へと強化されていますが、ズーム利用時はかなりしっかりと端末を固定をしないと簡単に写真がブレますので手持ち撮影ではかなり苦労するでしょう。

天候や時間帯を気にせず撮影できる安心感

iPhone 12シリーズでは、A14 BionicチップとNeural Engineによって驚異的に向上した露出補正と空間色処理が施されます。その結果、どの様な状況下でも安定した写真が撮れるようになりました。

iPhone 12 Pro Maxではカメラのハードウェア面が補完されたことで、より高い表現の撮影ができるように。写真を見ていると作られすぎ感があるものもありますが、記録として見ればこれほどにしっかりとしたものはありません。もし、もっと自然なイメージを望むならば、まもなく登場とされるApple ProRAWが最適解となるはず。

iPhone 12 Pro Maxならば強化された広角カメラはもちろん、超広角カメラや望遠カメラのどれを選択しても期待以上の結果が得られるでしょう。

そうした期待を持って、実際に夕暮れ時の江ノ島、渋谷のスクランブルスクエア屋上、小雨がパラつく夜の銀座で撮影してみました。どれも想像以上の仕上がりに驚きました。ブラブラと歩きながら、気になった時にサッと撮影しただけです。撮影後の画像編集は一切していません。

▲江ノ電 鎌倉駅の駅構内線路終端車止めの上に居る「無事カエル」。電車に乗る前に望遠カメラのポートレートモードで撮影。十分な距離があるので、自然なボケが生じました。それでいながら被写体はシャープに撮影できています。
▲到着した電車を振り向きざまに広角カメラの通常モードで撮影。白飛びしやすい電光掲示板や構内の看板も自然な感じで調整されています。やることは構図を決めてシャッターボタンを押すだけです。
▲日没前の由比ヶ浜に出る途中、広角カメラで撮影。当日はあいにくの曇りで夕陽は撮影できませんでした。徐々に暗くなりつつある状態でしたが明るいレンズのお陰で雲もノイズが少なく撮影できました。
▲晴れていればきっと夕陽がきれいであろう江ノ島方面を広角カメラで撮影。太陽のある辺りがやや白飛びしていますが、これは撮影時に雲周辺をタップすることで露出補正されて回避できるはずです。今回は何もしませんでした。
▲上の写真と同じ場所を超広角カメラで撮影。何もせずにシャッターボタンを押しただけ。超広角独特の歪曲収差が発生しますがi、Phone側で自動的に補正されます。右側の船の表面が広角レンズと比較するとザラついているのはレンズ明るさの差によるISO感度が上げられたため。広角カメラではISO125ですが超広角カメラではISO320。薄暗い中での撮影時にはこの様な差が付きます。
▲江ノ島入り口にある青銅製の鳥居から通りを眺めたところ。日没後のふんわりとした照明に照らされた通りを入れて望遠カメラで撮影。ISOは640まで上げられているために全体が少しザラついた感じですが、軽く身構えただけでここまでシャキッと撮影できます。
▲江島神社の鳥居を入り口から撮影。周囲はかなり暗い中、広角カメラで撮影。ISOは1000にまで引き上げられていますが、ナイトモードは使わずに撮影できました。ほぼ肉眼で見たイメージに近い感覚です。
▲門前町の土産物屋を広角カメラで撮影。iPhone 12 Pro Maxのセンサーは少しの明るささえあれば十分な画質の写真が撮れるので、移動しながらの旅の記録にはうってつけです。
▲弁天橋の途中から江ノ島側を広角カメラで撮影。スマートフォンのカメラにとっては、強い光源で生じるフレアやレンズ内部で光が反射して発生するゴーストが目立ってしまう少し意地悪なシーンでの撮影。iPhone 12 Pro Maxではどの程度改善されているか確認してみましたが、正直従来モデルと変わっていないように思えます。唯一露出はかなり頑張っていました。
▲銀座の横断歩道を渡りながら広角カメラで撮影。小雨が降る中でしたが銀座の明るさがわかる写真です。
▲東銀座の歌舞伎座を広角カメラで撮影。建物が照明で照らされているので、ナイトモードを使わなくても余裕で手持ち撮影できました。手前の道路の中央分離帯が微妙に波を打っていますが、これが広角レンズで発生する歪曲収差を修正した痕跡だと思います。
▲薄暗いバーカウンターで気に入ったお酒とカウンター後ろの棚を広角カメラで撮影。かなり暗くてもナイトモードを使わず撮影できます。LiDARセンサーが効いているのかはわかりませんでした。Deep Fusionの効果でボトルのラベル表面やガラス感もほぼ見たまま奇麗に表現されています。
▲望遠カメラのポートレートモードでネコを撮影。以前よりも近距離での撮影ができるようになって使いやすくなりました。以前は被写体と背景との境界が曖昧な感じで不自然なボケが発生していましたが、iPhone 12 Pro Maxではかなり自然なボケ感になりました。

iPhone 12 Pro MaxとiPhone 12 Proで撮り比べ

▲渋谷スクランブルスクエア屋上からiPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxの広角カメラで撮影。ある程度の明るさがあれば表現に差は発生しないようです。色表現も似たような仕上がりでした。
▲光学ズームとデジタルズームの比較では、スペックそのままの差があります。iPhone 12 Proでは光学で最大4倍、デジタルで10倍。iPhone 12 Pro Maxでは光学で最大5倍、デジタルで12倍となります。デジタルズームはしっかり固定していても等倍で見るとそれなりな仕上がりです。
▲これも意地悪なテストですが、ゴーストの入り具合を広角カメラで比較しました。結果はどちらも同じ程度のゴーストが発生します。ネオン管の文字がそのままレンズ内で反射してうっすらと写っています。iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxでゴーストの位置が違うのはレンズ構成の差です。
▲ハッキリとした差がでたのは、こうした薄暗い環境下での撮影でした。センサーの大きさの差でISO感度が異なった結果、写真のザラツキに違いが出ています。ビル中央のSHIBUYA SCRAMBLE SQUAREの文字周辺の状態を見ると解りやすいです。
▲薄暗い環境下でも何かしらの照明が入って明るくなれば仕上がりの差は埋まります。渋谷スクランブル交差点からの撮影では、周辺の看板などの明るさから同一のISO感度で撮影できました。

カメラのみについて比較してみると、実際目立った差はあまりありませんが、ちょっとした部分での差は明確にありました。その部分に対してどの程度価値を感じるかがiPhone 12 Pro Maxを選択する理由になるでしょう。逆に言えば、iPhone 12や iPhone 12 Proでも十分すぎるレベルの撮影が可能で、いっそ画面のサイズで選んでしまっても良さそうです。お陰で一層選ぶのに悩みそうです。


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