iPhone 12シリーズ4モデルが出そろい、各国で好調な滑り出しとなっています。今年のモデルの最大の特徴は5Gへの対応だと筆者は考えます。「5Gはいらない」という意見が日本ではまだ大多数ですが、数年もすれば誰もが5Gを使う時代になっています。最新の技術を否定したところで、いずれその技術は当たり前のものになっているのです。

とはいえ5Gはどの国でも始まったばかりと言える状況です。エリクソンの予想では、5Gユーザー数は2020年末で1億9000万に達するとみています。これは50億弱の4Gユーザー数の数%にすぎません。しかし2025年には5Gユーザー数は28億に増えると予想されています。通信キャリアも5Gに投資しますし、端末メーカーも5G製品を次々と送り出します。世界は5G化に向かって一直線に進んでいるわけです。

iPhone 12は約8万円のiPhone 12 miniまでもが5Gに対応しました。他のメーカーはまだラインナップの半数以上が4Gモデルですが、アップルはいち早く5Gへの切り替えをはかったのです。通信キャリアにとっては、どの新型iPhoneを売っても5Gの潜在ユーザーを生み出すことができる「願ってもない」製品と言えます。

契約は4Gのままでも、端末が5Gに対応していればいずれ契約変更で5Gが使えます。国・キャリアによっては契約変更なしで「そのまま5Gが使える」としているところもあります。キャリアにとってiPhone 12シリーズは今まで以上に売り込みたい製品になっているでしょう。

通信キャリアは5Gに積極的な投資をしていますから、これから数年は5Gユーザーを増やすことが最大の課題になっています。iPhoneには安価なiPhone SEがあるものの、低価格モデルを求めるユーザーは5Gのフルサービスには興味がないでしょう。キャリアが狙うのは現在iPhoneの中位以上を使っているユーザーで、iPhone 12シリーズのいずれかに買い替えてもらい「いつでも5Gが使える」ユーザーを増やしたいと考えているはずです。

もちろん他のメーカーも5Gスマートフォンを積極的に展開しています。2020年第1四半期のデータを見ると(Statista)、Androidの5Gスマートフォンの全出荷量は2400万台でした。そのうちシェアトップのサムスンは830万台です。ところがiPhone 12シリーズが出てくると、その数を一気に上回る可能性が出てきます。

IDCの調査によると、アップルは1年前、2019年第4四半期に7380万台のiPhoneを出荷しました。今年は新型コロナウィルスの影響があること、iPhone 12シリーズの発売時期が例年より大幅に遅れたことで、第4四半期の出荷台数は昨年に届かないかもしれません。ところが各モデルが販売されてから、向こう半年といった期間で見れば数千万台が出荷されるでしょう。その結果、5Gスマートフォン市場のシェア1位がアップルになることは確実です。

アップルが5Gスマートフォンのトッププレーヤーになると、市場での存在感は今まで以上に高まるでしょう。それは初めて市場にiPhoneが出てきたほどのインパクトになるかもしれません。なぜならキャリアはもちろんのこと、サービスやアプリを開発している企業も5Gに可能性を感じているからです。

例えば5Gの高速通信環境は複数のカメラを使ったライブ配信で、視聴者が好きなカメラに切り替える「マルチアングル映像」といったサービスを提供できます。4Gではできなかったサービスがこれから次々と生まれてくるのです。そうなるとサービスやアプリ提供側は、5Gスマートフォンの最大シェアの製品にそれらを真っ先に対応させてくるはずです。つまりiPhone 12シリーズが5Gサービスの標準プラットフォームになるかもしれないのです。

5Gのキラーサービスの一つがXR(VR / AR / MRなど)です。iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro MaxはLiDARを搭載しています。空間距離測定精度の高いLiDARはARを使う際に有用です。つまりiPhone 12 Proシリーズ向けに、5Gを使ったARサービスが次々と生まれてくるかもしれません。その応用は教育や現場作業などにも展開できます。5Gならではのキラーサービスはまだどの国でも生まれていませんが、iPhone 12 Proが5Gの新サービスを新たに生み出す起爆剤になる可能性は高いでしょう。

そして5Gの新サービスを使いたいがために、今後5G契約に切り替えるユーザーが増えるかもしれません。またライバルメーカーも製品の5G化を進め、サービスやアプリ開発者への支援を行う動きも出てくるでしょう。iPhone 12の全シリーズ5G対応は、5G市場を大いに活性化するものになりうるのです。