removable media

[名称] iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)
[種類] HDD
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 80×110×12.7mm(Standard)、80×67×10mm(Mini)、80×126×18mm(EX)、50×50×8mm(Micro)
[容量] 20GB~1TB
[登場年] 2004年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「iVDR」は、キヤノン、富士通、日立製作所、フェニックステクノロジーズ、パイオニア、三洋電機、シャープ、日本ビクターの8社によって設立されたiVDRコンソーシアムで規格化された、リムーバブルHDD。

iVDRコンソーシアムが設立された2002年は、テレビ番組を録画できるHDDレコーダーが人気となっていたものの、外付けのHDDに対応するような機種はほとんどなく、容量が少なくなれば録画してある番組を消すか、DVDなどへ書き出すしかありませんでした。しかし、この方法は手間と時間がかなりかかってしまいます。

そこで、この手間をなくし、より簡単に多くの番組を録画できるよう考え出されたのが、iVDRです。これはHDDレコーダーに使えるリムーバブルHDDで、ビデオテープのように入れ替えることで、容量不足を解消しようとするものでした。

通常のHDDと違うのは、SAFIA(Security Architecture For Intelligent Attachment)という保護技術が使用されたiVDRとして、iVDR-S(iVDR-Secure)が用意されたこと。通常、テレビやHDDレコーダーで外付けHDDへ録画した場合、その外付けHDDを別の機器につないでも番組再生はできません。これはコンテンツを保護するため、録画した機器でしか再生できないよう制限されているからです。

これに対してiVDR-Sは、HDDレベルで保護技術が採用されているため、機器の違いを気にすることなく録画した番組を再生できるのが強みです。具体的な例でいえば、家で録画した番組を車の中で見るとか、友人の家へ持っていって再生するとか、リビングで録画したものを自室で見る、といったことが可能になります。なお、原理的にはビデオテープのように貸し借りも可能。ただし、これが私的利用の範囲に含まれるかは不明ですが……。

初めて発売されたiVDRカートリッジは、アイ・オー・データ機器の「iVDR-20」。2004年4月の発売で、SAFIAには非対応となる純粋なPC向けストレージでした。当時のiVDR規格には、2.5インチHDDを採用した「iVDR」(後にStandardと呼ばれるようになります)、1.8インチHDDを採用した「iVDR Mini」、そして1インチHDDを採用した「iVDR Micro」の3つのサイズがありました。iVDR-20はこのうちiVDR Miniとなるもので、小型のビデオカメラなどでも採用できる小ささがメリットでした。

ただし、主力として目されていたのはHDDレコーダーのメディアとしての役割ですから、1.8インチHDDではどうしても容量の小ささ、価格の高さがネックになります。そのため、この後発売されたiVDRのカートリッジは、基本的に2.5インチHDDを採用したiVDR-Sばかりとなります。

ちなみにMicroは規格だけで、結局、製品は出ていない様子。また、3.5インチHDDを採用した「iVDR EX」という規格が後に追加されていますが、こちらは個人向けというより、業務用の製品が主だったようです。

ということで、最も標準的な2.5インチHDDを使ったiVDR-Sカートリッジを見ていきましょう。

多少ラフに扱えるよう耐衝撃性を向上させたカートリッジとなっているため、外見はただの四角い箱。HDDの姿は、カバーの外からは確認できません。この手のカートリッジにありそうなライトプロテクト用のスイッチもなく、HDDのUSB外付けケースだよと言われたら信じてしまいそうになります。

といっても、インターフェースを見れば違うことは一発で分かりますが。

こちらがそのインターフェース。一瞬、SATAと同じようにも見えますが、電源ピン部分も一直線につながっており、コネクタ形状が異なります。

なお、仕様上は「26ピンiVDRオリジナル」となっているコネクタの形状ですが、何回数えても22ピンしかなく、SATA+電源ピンと同じです。ピンのない部分がちょうど4ピンぶんくらいのスペースとなっているので、この部分もピンがあるという扱いになっているのでしょうか。

せっかくなので、カートリッジの中身もチェック。ネジはトルクス……というより「*」に近い形状の特殊なものですが、T5で回せました。

内部を見て驚くのが、しっかりとシリコンゴムで周囲が覆われていたこと。しっかり衝撃を吸収するような作りになっていました。手荒に扱われることが多い家電で使うことを考えれば、ここまでしなくては不安があったのでしょう。

インターフェースはSATAからの変換ですが、IC的な何かでは変換されていません。形状だけですね。

ちなみにこちらが、カートリッジ用のケース。内側に緩衝材がしっかり貼られており、iVDRのカートリッジをしっかりホールドしてくれる構造となっていました。HDDはカートリッジが守り、カートリッジはケースが守るという、かなり気を使った作りとなっていました。

従来のリムーバブルHDDは、プラッターのみをカートリッジ化して交換可能にし、ドライブを丸ごと買うより安くできるというのがメリットでした。HDDが高価で大容量化のスピードが鈍かった時代はこれでよかったのですが、半年で容量単価が半減するような時代になると、カートリッジを追加で買うよりHDDを買ったほうが容量単価が安い、なんてことが起こります。こうなると、リムーバブルHDDの経済的寿命は尽きたも同然。誰も買わなくなってしまいます。

これに対しiVDRは汎用のSATA HDDをベースとしているため、HDDの容量単価が激減しても無理なくついていけます。さらに親機側はインターフェースしかないため、大容量カートリッジが登場した場合でも機械的に特別な対応は必要なく、そのまま使えるというのが強みといえるでしょう。

誤算があったとすれば、録画目的の場合はHDDを取り外す人が少ない、ということでしょうか。いくらHDDがカートリッジ化されて交換しやすいといっても、複数のカートリッジの中から目的の番組を探し出すのは面倒です。それなら、もっと大容量のHDDを接続しっぱなしにする方が便利ですし、簡単です。

またDLNAの普及により、家庭内LAN経由で別の機器から番組を手軽に再生できるようになったというのも大きいところ。そもそも番組を移動する必要がなくなりますので、カートリッジとして取り外せるメリットが減ってしまいました。

対応するテレビもHDDレコーダーもプレーヤーもあまり増えず、機器を問わず再生できるという最大の特徴が活かしにくかったのが痛手ですね。対応機器が多ければ、話はまた違ったと思うのですが……。

公式ツイッターアカウントでも、機器を問わず再生できることに触れた投稿がありました。

多くの可能性を持ちながらも普及が進まず、2017年12月にはついに、主要な供給元であったマクセルがカートリッジの販売を2019年3月で終了するというお知らせを掲載。2019年4月にiVDRコンソーシアムが解散となり、iVDRは終了となりました。

連載:スイートメモリーズ

参考:

iVDRの動向と技術, シャープ
iVDRについて, iVDRコンソーシアム, WayBack Machine
iVDR規格/仕様, iVDRコンソーシアム, WayBack Machine
iVDR-20, アイ・オー・データ機器
iVDR-EX カートリッジへ直接録画し、すぐに編集に取りかかれるビデオキャプチャーレコーダー「VC102」新発売, マクセル
カセットハードディスク 「iV(アイヴィ)」販売終了のお知らせ, マクセル
iVDR, ウィキペディア