Techno-illusionist, Marco Tempest (マルコ・テンペスト) のインタビュー後編をお送りします。ちなみに Marco が右手に持っているのは Nokia E75。
オマケ: マジックに興味のある方なら、左手のカードの並びに注目。完璧なシャッフル技術さえあればこれを参考に自力での再現も可能です。(前編から続く)
Engadget: 他にもいろんなマジックをされていますが、その多くで、科学や数学の雰囲気をもったものが結構ありますね。例えば立方体の錯覚を使ったものがそうですね。もちろんマジックは昔から科学や数学とは近しい関係にありますが...。
Marco:
さらに大昔にはそれらは区別されなかったですからね。例えば錬金術師は科学者でもマジシャンでもあったのです。真面目に研究をしているような錬金術師でも、パトロンから資金を引き出すためにもっともらしいマジックを見せたりしてね。まさしく現在私がやっていることですが(笑)。
Engadget: それを聞いた研究者はもっとマジックに関心を持つようになりますよ(笑)。それはそうと、やはり科学技術には強い関心をお持ちのようですね。
Marco:
とてもね。私は新しい発想の源を、マジック業界の外に求めています。マジックのコミュニティはとても大きくて非常に沢山のマジシャンが集まって、とてもオタク的な活動をしていますが、しかしとても小さな世界なんです。そこに入るとあっという間に縮こまってしまって、カードの持ち方とかの細かい話ばかりするようになってしまうんです。だから私は外の世界に目を向けるようにしています。科学的読み物とかブログに目を通したり、他にもメディアアートは最新の技術をうまく使っていることが多いからとても参考になります。
Engadget: 他にはどんなところでインスピレーションを得ますか?
Marco:
インスピレーションは私にとって「得るもの」というよりかは「狩るもの」ですね。AR カードマジックで言えば、あれは三ヶ月くらい昼夜の別なく、他に何にもしないで集中的に取り組んだ結果ですが、アイデア自体はもっと断片的に以前から持っていました。去年日本に来ていたときに、QR コードを使って何かやりたいなとずっと考えていたこともその一つです。あるとき、QR コードを遠くからみるとそれが碁のように見えることに気がつきました。それで、碁の盤面が実は QR コードにもなっている、なんてことができないかなと考えたのです。アイデアというには漠然とし過ぎていて、マジックのネタには結びつかないかもしれないけど、二人で碁石を置いていくうちにいつの間にか QR コードになっている、という状況は面白いと思ったのです。そんな感じで、新しいマジックのアイデアは、美しいと思ったり技術的に面白いと思ったことなどが結びついて出てきます。
Engadget: デンソーが聞いたら喜びそうな話ですね。ところで今日のマジックの実演では日本語で喋るそうですが。
Marco:
日本語になっているといいんですけどね(笑)。「オタノシミイタダイテマスデショウカ」とか、ちょっとした一言くらいは喋ったことはありますがマジックの口上を全部日本語で喋るのはこれが初めてです。
(ここで突然、日本語口上のメモを取り出して読み上げる Marco)
どう、うまく喋れてますか?
Engdaget: 十分上手じゃないですか。
Marco:
もう一度その言葉をカメラに向かって言ってください(笑)。
(傍らでアジアでのマネージメントをされている Ted Miller がカメラを回していました)
Engadget: 十分上手じゃないですか(笑)。
本日はインタビューにお付き合いいただきありがとうございました。
ここでたまたま暇だった工学ナビの橋本直さんにこの場に参入していただき、ここ最近彼が手がけてきた作品のデモを観せてもらいました。デモの一部は YouTube で観られます。
(携帯電話上で AR Toolkit を使うデモ。一連の様子を熱心に撮影する Marco)
デモビデオを観ながら、熱心に細かい質問をする Marco。「ここのアニメーションはどうなっているの?」「認識の仕組みは?」と、相当に技術的な部分に詳しいのはさすがのテクノマジシャン。また、「どこでもドア」のようなものが出てくるデモで、「どこでもドア」という言葉を使わずに説明しようとして四苦八苦する橋本さんに対し、「つまり『どこでもドア』?」と Marco が日本語で声をかけて一同ちょっと驚くというシーンも。
Engadget: 次のマジックの構想はどうですか?
Marco:
AR カードマジックを観た後は、みんな自分でも試してみたくなると思うんですよ。だから次のステップとして、誰もがマジシャンになれるようなものをやってみたいですね。プロジェクターを使って、テーブル上のカードに触れると何か起きるとか...。ただ、それをやると認識が難しいでしょうね。
Engadget: デモの中でも、人が実際に触れるものに興味を持たれているようでした。AR に興味をお持ちである理由は何でしょう?
Marco:
大げさなトリックはあまり好きじゃないんです。例えば大きな箱があって、何かを消したりとかそこから脱出したりとかしますよね。そんなマジックをしてももう誰も信じてくれないんです。箱の前に立って、何か凄いことをしたふり、例えば肩で息をしたりしても、僕が何かをやったとは誰も思ってくれない。箱にトリックがあるんだろうな、程度にしか見てもらえないでしょう。大きなトリックでは、マジシャンのスキルとトリックとの関係性が見えないんです。マジックの対象となるものとは、本当の物理的なインタラクションがあった方がいいのだと思います。
デモビデオを観ながら、熱心に細かい質問をする Marco。「ここのアニメーションはどうなっているの?」「認識の仕組みは?」と、相当に技術的な部分に詳しいのはさすがのテクノマジシャン。また、「どこでもドア」のようなものが出てくるデモで、「どこでもドア」という言葉を使わずに説明しようとして四苦八苦する橋本さんに対し、「つまり『どこでもドア』?」と Marco が日本語で声をかけて一同ちょっと驚くというシーンも。
Engadget: 次のマジックの構想はどうですか?
Marco:
AR カードマジックを観た後は、みんな自分でも試してみたくなると思うんですよ。だから次のステップとして、誰もがマジシャンになれるようなものをやってみたいですね。プロジェクターを使って、テーブル上のカードに触れると何か起きるとか...。ただ、それをやると認識が難しいでしょうね。
Engadget: デモの中でも、人が実際に触れるものに興味を持たれているようでした。AR に興味をお持ちである理由は何でしょう?
Marco:
大げさなトリックはあまり好きじゃないんです。例えば大きな箱があって、何かを消したりとかそこから脱出したりとかしますよね。そんなマジックをしてももう誰も信じてくれないんです。箱の前に立って、何か凄いことをしたふり、例えば肩で息をしたりしても、僕が何かをやったとは誰も思ってくれない。箱にトリックがあるんだろうな、程度にしか見てもらえないでしょう。大きなトリックでは、マジシャンのスキルとトリックとの関係性が見えないんです。マジックの対象となるものとは、本当の物理的なインタラクションがあった方がいいのだと思います。
インタビュー終了後、会場でのマジック実演がありました。マジック終了後には Marco 直々にシステムの説明があり、大勢の観客がテーブルに詰め寄り熱心に話を聞いていました。Marco のマネージャーによればこのようなレクチャー形式はとても珍しいとのこと。写真右手にある MacBook 上でシステムが動いており、キャリブレーションやシナリオの呼び出しなどが GUI でできるようになっています。
これで Marco Tempest インタビューシリーズは終了です。Marco、橋本さん、ありがとうございました。
追記: 橋本さんのデモ「どこまでもドア」のビデオへのリンクを追加。
追記: 橋本さんのデモ「どこまでもドア」のビデオへのリンクを追加。