Facebookの利用料金は1MBあたり2セントで、Skypeは月額3ユーロ。YouTubeは月額0.5ドルだけど速度制限あり......インターネットプロパイダ(ISP)がウェブアプリやウェブサービスごとに別料金を課すなんて、どこの並行世界の話かと思われるかもしれません。しかしこの資料はAllot Communications社とOpenet社が行ったウェブセミナーで配布され、「信頼できる筋」からWIREDが入手したというもの。両社は通信帯域の制御を専門にしており、AT&TやVerizonといった大手キャリアを顧客に持つことで知られています。

つまりスライドが示すのは、我々の技術を利用すれば、定額通信料だけでなくウェブサービス別に追加の通信料を徴収できる(キャリアにとっては)明るい未来が到来するよ、という話です。ネットユーザがどのウェブサービスを使っているのかを識別するためには、スライドにもあるDPI(Deep Packet Inspection、パケット内容の分析)のほか、「ヒューリスティック分析や行動分析、履歴分析」などのさまざまな手法を利用し、「我々は最高のユーザ識別アプリを備えているため、アプリケーションの暗号化など、識別を逃れる方法を利用しても、正しく判断する」とのこと。DPIを使うのってどうなのよ、というツッコミさえ霞んでしまいそうな、なかなか素敵な未来予想図です。

(続きます)

流れるデータを中身によって優遇・冷遇しないという「ネット中立性」はこれまでのインターネットの発展を支えてきた原則とでも言うべきものでした。なのに、なぜ今になってこんな未来が提案されているのか。それは、FCC(連邦通信委員会)が今週21日に、ネット中立性に関する新しいルールを投票で定めるというタイミングにあるから。 委員会は非公開ですが、FCCのJulius Genachowski委員長による草案では、ユーザが利用する「サービスのレベル」によってISPが違う料金を課すことが認められたり、ワイヤレスのキャリアについてはサービスによって帯域を変えたりすることが認められている、と報道されています。つまりISPにとっては、Skypeの利用者に別料金を課す、YouTubeの帯域を絞る、といった柔軟な管理が可能になるということ。まさに上のスライドが示すとおりです。

以前よりネット中立性については、一部サービスを制限・締め出したいキャリア側と、そんなことはさせたくないサービス側での批判の応酬が続いています。Skypeであれ、動画配信のNetflixであれ、BitTorrentであれ「一部のサービス、一部のユーザが帯域を圧迫しているのに、中立性の名のもとで全サービス、全ユーザが影響を受けなければいけないのか」というのがキャリア側の 建前 言い分。しかしキャリアがサービスによって帯域を規制できるようになれば、提携するサービスを優遇し、対抗するサービスは規制して潰すといったことが横行する可能性もあります。たとえば「帯域を圧迫する!」という建前で、音声通話の収入を維持するためにモバイルの通信キャリアがSkypeを締め出すとか。上のスライドでも、さんざん他社のサービスには別料金を課したうえで、Vodafone のサービス(つまりキャリア自身が提供するサービス)は無料となっているのが見所。フルブラウザが当然になり、モバイルとインターネットが繋がる以前の「ケータイ時代」を彷彿とさせる、と言ってもいいかもしれません。

またキャリア対サービスという構図だけではなく、「ネット中立性は重要です、ただしワイヤレスは除く」と言ってのけたGoogleとVerizonのように、インフラが未成熟な(ということになっている)ワイヤレスについてはキャリアに自由度を与えようよという動きもあります。前述のFCC草案もそれに沿ったもの。議論そのものは海の向こうの話ではありますが、そもそも日本では通信キャリアが特定サービスを締め出しといった例が頻発しているだけに、海外の動向を受けて今後ますます加速していく可能性もあります。

Wired
sourceFierce Wireless Webinar, Reuters