ハードウェアまわりでいろいろな強化が施されたアップル iPhone 4S ですが、使い勝手という意味で一番の注目となるのは音声エージェント Siri が搭載されたことでしょう。Siri はもともと DARPA が CALO という名前で進めていたエージェント開発プロジェクトの成果(のひとつ)で、同名の企業のもとでベンチャー化され、1年半ほどまえにアップルが企業ごと買収していました。かの国ではIT研究がどのようなお金ではじまり、どのようにコンシューマー向けに到達するか、分かりやすい実例と言えます。

Siriの特長は、アップルに言わせれば「インテリジェントなアシスタント」であること。ただパターンにあわせて音声認識を実行するだけではなく、「今日の天気は?」「これから雨は降る?」「傘は必要かな?」といった様々な言い回しでの質問を理解して、回答(この場合は天気予報)を示します。Let's talk iPhone イベントで紹介された豊富な事例を挙げれば、時刻表示(パリはいま何時?)、アラーム設定(6時に起こして)、株価、レストラン検索(パロアルトのギリシャ料理を探して)、路線検索など。ナレッジナビゲータは実現した!(このネタ 1, 2, 3, 4度目)

さらにWIkipedia検索やWolframAlpha検索まであって、SF好きはしばらくこれだけで遊べそうです。たとえば「クリスマスまで何日?」と問えば、「82日」から「2か月と21日」、「0.22年」など、WolframAlphaらしい、そこまでは聞いてない情報がずらりと返ってきます。ライバルの Android では音声操作(認識・入力・検索)が基本機能として搭載されていますが、あちらは言葉通り受けとめて、Googleの検索クエリとして処理するというもの。どちらがどれほどインテリジェントかの比較が待たれます。

また、調べものだけでなく、端末の音声操作もSiriの用途として紹介されています。具体例を挙げれば「ジェイソンに電話」「スーザンに、ここにいると(メールで)伝えてくれ」「The Light of the Sun(曲)を再生して」など。おまけにヘッドセットと組み合わせれば、端末を見ずに操作することも可能になります。たとえばメールが届いたときに「読み上げて」と頼むなど。文字入力も可能なので、そのまま「返信」「仕事は金曜にやります」という感じでメールの返信まで終わらせることができます。カレンダーへの予定入力や、リマインダの設定なども可能。あわせて、テキスト入力時のバーチャルキーボードにマイクボタンが加わり、音声文字入力が可能になりました。

Siriは3GでもWiFiでも動作可。特に音声学習などの設定を行うことなくそのまま使えるという話ですが、使い続ければそのぶん認識精度が良くなるとも説明されています。対応言語は残念ながら英語(米・英・豪)、フランス語、ドイツ語どまり。対応言語とサービス内容は今後拡大の予定。ここまで書いておいて言うのもなんですが、アップルの日本版ウェブサイトにはそもそもSiriへの言及がなく、英語版Siriが使えるのかどうかも怪しい感じです。

なお発表にあわせて、これまで米国ではiPhoneアプリとして公開されてきたSiriが非公開になりました。アプリ版はサービス自身も10月15日で終了とのこと。SiriはあくまでiPhone 4Sの組み込み機能なので、旧機種では利用できないことになります。iPhone 4でも動作したものが、なぜiPhone 4S限定サービスとなるのか、iOS 5の機能として組み込めなかった理由は不明。ともあれ iPhone 4S の目玉と言えるだけに、早く日本でも展開して欲しいものです。