CDMA携帯電話の無線通信技術を足がかりに、無線通信モデムチップから、Snapdragonシリーズなどのモバイル向けプロセッサなどを手がける技術開発会社 クアルコムは、通信技術を活用して交通事故の防止に取り組むプロジェクトを実施しています。

現在、米国デトロイトでは3000ユーザー規模でフィールドテストを実施中。今回、この取り組みを日本へ紹介するとともに、クアルコムの電気自動車用ワイヤレス給電技術 Halo(ヘイロー)を説明しました。

すでに現在、一部の自動車は、ミリ波レーダーや可視光カメラ、赤外線などによる衝突防止機能を搭載しています。先日はパナソニックも、ミリ波レーダーを利用した交差点の交通安全システムを発表しました。

米国や欧州では、5.9GHz帯の周波数をITS(高度交通システム)向けに採用し、車車間通信などに活用しようという動きがあります。そのなかでクアルコムは、車に搭載した各センサーと、5.9GHz帯の狭域通信技術 DSRC(Dedicated Short Range Communications)を利用して事故防止に役立てようとしています。

クアルコムは 5.9GHz帯の車車間WiFi規格 IEEE 802.11pのチップを開発し、フィールドテストを実施。この規格は通常のWiFi規格にはない、高速応答性などを想定したものです。


欧米DSRCと日本のDSRC


ただしこれは、北米や欧州での話。

日本では5.8GHz帯を使ったETCが普及しています。またETCの通信技術を利用し、ETCに加えて渋滞情報などが受け取れるDSRC対応情報サービス ITSスポット も始まっています。

次世代ETCとも言われる日本版DSRCの要、ITSスポットは国土交通省の所管するサービス。対応機器は、道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)やITSサービス推進機構(ISPA)を通じて、アンケートモニター募集の形で購入補助金が出ています。モニター募集はきっちり時期をずらして展開しており、補助金は2万円と同額です。どうやら普及促進を急いでいる模様。

クアルコムの5.9GHz帯DSRCは、現状、日本ではITS用に割当られていないために使えません。欧州も5.8GHz帯をETC用に使っていましたが、EC(欧州委員会)は、最終的に米国と同じ5.9GHz帯をETCやITSへ割当ました。

なお、電波を所管する総務省では、700MHz帯をITSの車車間通信に割当ているほか、日本の5.8GHz帯と米国や欧州の5.9GHz帯を道を利用できる方法を作業部会で模索しています。


5.9GHz帯DSRC対応スマートフォンのプロトタイプ


クアルコムでは、5.9GHz帯を車だけでなく、スマートフォンにも適用し、車と人の間で通信する実験を実施。プロトタイプながら、5.9GHz帯DSRC対応スマートフォンを開発し、デトロイトで実験を行っています。

たとえば、交差点などで車側だけに歩行者がいる危険を知らせるだけでなく、歩行者が夢中になっているスマートフォン側にも危険を知らせるというものです。現時点では車用のチップをスマートフォンに適用したものですが、スマートフォンのWIFiチップでIEEE802.11 p をサポートすることを考えています。

説明を行ったクアルコムのクリス・ボローニ=バード氏は、「バッテリーへの影響や、歩行者の正確な位置がとれるのか、多くのユーザーがいる場合でも正確に動作するかなど、技術的な課題も多い」と話しています。同社では、室内ではDSRC機能をOFFに、GPSやWiFi網などと連携してより正確な位置を取るなど、既存の位置情報関連技術も応用して課題を克服する方針。

自動車向けワイヤレス給電 Halo

このほか、電気自動車向けのワイヤレス給電技術 Halo についても説明。駐車上に車を停車すると自動的に充電する未来の映像を紹介しました。スマートフォンなどのモバイル機器では低電力の qi など、すでにワイヤレス充電が商用利用していますが、供給電力を上げて車へ適用するものです。

また、Haloの将来的な姿として、道路自体をより大きな充電台に見立て、充電しながら走行する映像を示しました。より小さなバッテリーで動作し、車側だけで制御しない自動運転の仕組みとして研究開発を進めており、ボローニ氏は運転できない子どもや老人も使える乗り物としても期待できるとしています。