9月18日-22日に開催されたTGSこと東京ゲームショウでカプコンは、恒例の『集会所』を設営して新作『モンスターハンター4G』をプレイアブル出展しています。試遊用のゲーム機は、10月11日にモンハン4Gと同時に発売される Newニンテンドー3DS / Newニンテンドー3DS LL。
8月末に突如発表されたNewニンテンドー3DSは、モンスターハンターなど『拡張スライドパッド』対応ソフトで使う右側アナログ方向入力『Cスティック』や追加のショルダーボタン ZL/ZR (いわゆるL2/R2)ボタンが加わったほか、顔検出を使った3Dブレ防止機能、NFC追加、CPUの高速化など、同じプラットフォームのまま多くの改良を加えた新モデルです。試遊した印象をお伝えします。
Newニンテンドー3DS / Newニンテンドー3DS LLと無印3DS
まずは「ニュー3DSって何?このあいだ買ったばかりなのにもうキュー3DSか?!」というかたのための新型おさらいから。(新仕様を暗記しているかたは下のインプレまで飛ばしてください)。
8月末に発表されたNewニンテンドー3DSとは、短く言えば「Cスティック(右アナログ)やZL/ZRなどボタンが増え、3Dが見やすくなり画面がやや大きく、動作が速くNFCに対応した改良型3DS」。画面が約1.2倍に大きくなったのはNew 3DS(小さい方)のみで、LLはそのままです。
1軸2ボタン増えてCPUまで速くなったと聞けばいわゆる「新型ゲーム機」のようでもありますが、対応ソフトも原則として変わらず画面の画素数もそのまま。同じ世代のまま改良されたアップデート版にあたります。
ゲームボーイアドバンス(GBA)から(旧)ニンテンドーDS、DSから3DSのようにプラットフォームが刷新された次世代機ではなく、旧DS世代でいえば DSi 、GBAならばフロントライトがつき内蔵電池になったGBA SPのように、任天堂ではよくある中継ぎの入れ替え機種です。
『Cスティック』やZL/ZRボタンの追加など操作系統の変化は、同じ世代間ではやや珍しい点です。しかしニンテンドー3DSでは初代が発売された2011年のうちに、右側アナログ方向入力とZL/ZRボタンを追加する純正周辺機器『拡張スライドパッド』が発売されていました。
操作方法の追加は一般にソフトの分断化を招きますが、3DSプラットフォームについては任天堂製や他社製を含め両対応のソフトがすでに普及しています。
2011年のTGSで『拡張スライドパッド』が初披露された際も、使われたソフトはやはりモンスターハンター3Gでした (写真はTGS 2011)。
Newニンテンドー3DSは拡張スライドパッド相当の機能を内蔵しつつ、サイズはこれまでの3DS単体とほとんど変わらない製品ともいえます。(強いていえば、本体に吸収されたことで、上の写真でよく分かる優雅な曲面はなくなり、持ちやすいグリップとしての機能は失われました)。
ボタン以外の主な改良点には、
- 3Dブレ防止機能
- NFC内蔵
- 処理速度向上
- カメラの感度向上
などが挙げられます。このうちNFCは、携帯電話でおなじみの「タッチしてピッ」とする機能。任天堂は据え置きゲーム機 Wii U の画面つきコントローラ Wii U GamePad にもNFCリーダライタを内蔵しており、最近ではSuicaなど交通系電子マネーカードで直接ゲームが買えるようになりました。
また今年6月のゲームイベントE3で発表した NFC対応フィギュア Amiibo のように、人形やカードを Wii U / New 3DS に近づけるとゲーム内にキャラクターやアイテムが現れたり、フィギュア側のデータを書き換えて自慢のキャラクターを育てて持ち寄ったり、といった遊びができるようになります。(が、モンハン4G試遊ではこの機能については試せません)。ものと連携した新しい遊びへの期待と、Wii U不調から業績回復を急ぐ任天堂の采配への不安で実に胸がときめきます。
そのほかの変更点は、New 3DSのみ画面がやや大きくなりました(上画面は約1.2倍の3.88インチ、下画面は約1.1倍の3.33型)。LLでは外装がメタリックでシャープに、New 3DSでは『きせかえプレート』に対応して本体を買い換えずに色やデザインを変更できるといった点があります。また、
- バッテリー駆動時間が30分〜2時間ほど延長(明るさによる)
- ブラウザが動画再生に対応
- 環境光センサで明るさの自動調節機能
- ゲームカードスロットは背面から手前に変更
- SDカードがmicroSDに変更。スロットはバッテリーカバー内に変更
- microSDを挿したままWiFi経由でPCへのバックアップ機能
- スタート・セレクト・ホームボタンの配置変更 (ホームのみ画面下に、スタートセレクトは右側に)
- 電源ボタンが手前側面右側に移動
- 無線LAN ON/OFF物理スライドボタンの廃止 (2DSと同様にクイックメニューから操作)
- ボリュームが上画面左に移動
価格もLLで1万8000円から1万8800円とやや値上がり。詳しくはNewニンテンドー3DS / Newニンテンドー3DS LL発表記事へ。
試遊インプレ:『3Dブレ防止機能』の効果は抜群
TGS 2014 カプコンブースのモンスターハンター4G試遊では、シングルプレイにNewニンテンドー3DS、マルチプレイにNewニンテンドー3DS LLを使っています。Newニンテンドー3DSの一般向け披露は今回が初。TGSでも、広く入場者が触れるのはおそらくここにしかありません。(もともと東京ゲームショウの成り立ちにかかわる理由もあり、任天堂は伝統的にTGSにメーカー出展はしません。)
さて、New 3DSが発表された時点の印象では、アップデートの表向きの目玉はCスティックとZL/ZR追加、注目点はプロセッサ強化かと考えていました。
しかし実機をこねくり回してびっくりしたのは、「3Dブレ防止機能」が非常に優秀なこと。最初は特に3Dブレ防止のことは意識していませんでしたが、モンハン4Gのタイトルが表示されたNew 3DSをテーブルから片手で取り上げて、いつものように両手持ちで正面に持ち直そうとした時点で、何かがおかしいと気づきました。
(この写真は3Dオフ時)
3DSは視差バリアという仕組みで左右の眼に別々の映像を届けることで、メガネを使わない裸眼立体視を実現しています。しかし数センチほどしか離れていない眼と眼の位置を元にした仕組みのため、真正面の「正しい」位置(スイートスポット)からずれると左右の映像が混ざった二重像になり、メガネ式にはほとんどない不快な状態になる弱点がありました。
......といったことは3DSのユーザーならば今さら解説するまでもなく、当の任天堂すらNew 3DSの発表になってから「見どころ以外ではオフにする人も」と控えめに表現するほどでした。周囲の少ないサンプルから「大半のプレーヤーが」言い切ることは控えますが、見づらい、気分が悪くなるといって常時3D OFFのユーザーもかなりいます。
このためNewニンテンドー3DSでは、前面カメラでプレーヤーの頭の位置を検出(顔検出)し、リアルタイムに視差バリアを調節して二重像を抑える「3Dブレ防止」機能を新たに搭載しました。実機を手にとって「?」となったのは、無意識に「ちゃんと見える」位置にあわせるまでもなく、二重像にまるで気づかなかったため。
3Dがオフになっているだけかとも思ったものの、液晶面に貼ったような2D表示ではなく、ゲームタイトルは裸眼立体視特有の妙な鮮明さで背景よりも浮いて見えます。ただごとでないと気づいてわざと左右に傾けてみましたが、少なくとも通常ゲームをするような角度であれば、やや斜めから見ても画面全体が二重像になることはなく鮮明な立体のままでした。
追従も早く、リアルタイムの顔検出で実現しているとあらかじめ知らなければ、目の位置にあわせて調節しているとは気づきません。
3DSは原則的に両手で正面に持って遊ぶことから画面と顔の相対位置はある程度固定されており、裸眼立体視も「ちゃんとした姿勢で普通に遊んでいるかぎりは」おおむねしっかりと表示できていました。
しかしテレビと向き合う据え置きゲーム機に対する携帯ゲーム機の魅力は、寝転がったりだらしない格好でも手軽に遊べること。3DSで立体視を楽しんでいた、必ずしも多数派とは限らないプレーヤーでも、座ってちゃんと遊ぶときや見どころだけオン、リラックスした姿勢ではオフ、という場合が多かったと思いますが、New 3DSではオンのままでもかなり破綻せず見やすいまま遊べます。
また現行の3DSではちゃんとした姿勢で遊んでいても、たとえば「レバガチャ」やボタン連打などで画面が揺れると途端に画面が二重になっていました。これを低減するのも3Dブレ防止機能です。
驚くほど自然に機能していた3Dブレ防止ですが、プレイ中に一度だけ、特に激しく本体を動かしたわけでもないのに不意に二重像が見える現象がありました。無意識に顔を伏せたり振り向いたタイミングで見失ったのか、カメラに反射で光が入ったのか、狩りの最中に残り5分警告を受けて検出できないほどの表情になっていたのか、ブレ防止が機能しなかった理由は不明。あれ?と思ったときには復帰しましたが、顔に髪がかかったり、枕になかば顔を埋めたりetcでもブレ防止が有効かどうかは今後検証する必要がありそうです。
なお顔検出は前面カメラを使う仕組みですが、New 3DSは暗い場所でも使えるようアクティブIRライトを搭載するため、暗闇でも3Dブレ防止は有効とされています。こちらも要検証リスト入り。
Cスティックはトラックポイント風、違和感のない操作
しかし実際に使ってみると、指を置いたまま軽く力を加えるだけで違和感なく方向として操作できます。サイズはいかにも小さめですが、これは3DSの左アナログのように物理的に大きくスライドする仕組みではなく、PS Vitaのように傾けるスティックでもなく、わずかな圧力で反応するタイプの入力装置であるため。ノートPCではたまに見かけるスティックポイント(IBM / レノボのいわゆる『赤ポッチ』) のような感覚です。
試遊では上下左右の視点移動にしか使いませんでしたが、ほとんど指を動かさず、指を置く場所も気にせず操作できました。
(蛇足:これは携帯機モンスターハンターシリーズ独特の事情ですが、PSPは左側の下にアナログ方向入力、上に十字キーを備えていたため、左手の人差し指と親指で視点変更と移動を同時に処理しつつ、右手ではフルにボタンが使える、いわゆる「モンハン持ち」ができました。3DSでは移動に使うスライドパッドが上、十字キーが下のため、できないことはないもののかなり高難度 (人差し指の側面で押さえつけて移動することになる))。
New 3DSでは右にCスティックが加わったため移動と視点変更の両立は無理なく実現できますが、Cスティックはやはり右親指で操作するため、スティックから指を離さず、さらに右側のボタン類も同時に操作するのは難しくなります。従来の拡張スライドパッド装着時や、一般的な据え置き機ゲームコントローラと同じです。
ただし、Cスティックはかなり小さくABXYと近いために、Cに指先を置いたまま第一関節でXボタンを押すことはできます。斜めに並ぶ XとA、またはYとBと同じ感覚です。
初めてCスティック併用で試遊して困ったのは、Cに指を置いたままX (モンハンでは攻撃)を押そうとすると、ここぞというタイミングでついこれまで通り親指の先を押し込んでしまうこと。Cスティックに押し込み入力はないため、断崖から絶妙のタイミングで龍の頭頂部に跳びかかり平和的に着地してしまうことたびたびでした。セルレギオスも挑戦者ではなく不審者を見る目になり実にいたたまれない気分です。
とはいえこれはCスティック初体験で、わざわざ同時押しができないかと試行していたためで、慣れればXについてはなんとかなりそうです。また指を動かして押し分けるのは、距離が近いこともあり容易です。
ZR / ZRボタン
ZL / ZR ボタンは試遊ではほぼ不使用(モンハンでは左右の視点回転に割り振れる)。ショルダーボタンをトリガーとバンパーにタテ分割できない薄型ゲームパッドでは良くある、横に並べた形式です。手の大きさにより、特にLLでは指を伸ばし気味になりますが、出っ張っているため指の先と関節での押し分け自体は容易。「ZRで射撃・Rで自爆」といった配置固定ならば困りそうですが、RをメインにZRで切り替えやグレネーイ!ならば、 下画面の仮想ボタンタッチよりはよほど遊びやすくなります。
終わりに
その上でNewニンテンドー3DSの印象を述べるならば、ひとことで言えば「実に快適になった」。特に、期待していなかった3Dブレ防止の威力はうれしい驚きでした。3DSの裸眼立体視は奥行き表現が優れたゲームを遊ぶときだけ、見どころだけ、ブレを気にせず遊べるときだけ、あるいはちゃんとした姿勢で正面に構えたときだけオンにするといったユーザーもいると思われますが、顔と画面の相対角度にもっと余裕がでれば、崩した姿勢でも連打で画面が揺れても不快な二重像を防げ、3Dオンで没入感のあるまま快適に遊べる状況が増えることになります。
そのうえで、大半と言い切れるかはさておき決して少なくない「元から常時3Dオフ」派にとって乗り換えるほどの新機種かといえば、あの大きな拡張スライドパッド相当の右アナログとZL/ZRを内蔵したこと、少なくとも本体機能の切り替えやダウンロード速度では快適になるとされるプロセッサ強化をどう評価するか、になります。
同時発売のモンスターハンター4Gを例に挙げれば、モンハンは3Gからのターゲットカメラ導入(や、タッチパネルの仮想方向キー)で視点変更専用のキーなしでもかなり遊べるようになっていますが、やはり使い慣れた独立視点操作が欲しい、ややこしい立ち回りのさなかにもパーティーメンバーを含めて状況を確認したい、4世代から増えた上下方向への目配りもストレスなくこなしたいのであれば、Cスティックは快適さに大きく貢献します。ZR/ZLも同様。
また今回は特に追求しませんでしたが、PSPのモンハン持ちや3DSモンハン持ちをも編み出したプレーヤーたちであれば、CスティックとABXYを別の指で押し分ける特殊な適応を果たす層が現れないともかぎりません。
New 3DSのみの話としては、本体も数mm程度大きく10数グラム重くなった一方で、画面が1.1〜1.2倍大きくなった点もあります。それでも3DS LLよりは小さく軽いため、持ち歩きを考えて3DS派には親切ボタンともども検討材料になるかもしれません。
全般の「快適さ」としては、今回の試遊では試せなかったものの、microSDを本体に挿入したままPCとWiFi接続してファイル転送も注目点。SDカードスロットがバッテリーカバー下になったための措置ではありますが、現3DSのアクセスしやすいスロットであっても電源を切ってカードを物理的に抜いてリーダーに挿してまた戻して、よりは無線転送のほうがずっと手軽です。
バッテリー駆動時間については、3DSゲームを遊ぶ場合、両機種とも現行3DSと同等から1〜2時間増し。劇的というほどではなく画面輝度によるものの、延長はされています。
Newニンテンドー3DS / 3DS LL は現在の3DS / LL と入れ替わる形で販売されるため、今後新たに3DSを買うならば、わずかな価格差で旧型を買う状況はあまりありません。現在のユーザーが新調するか否かは、今後3DSゲームに費やすであろう人生の数時間〜数百時間(数千時間?)を少しでも快適にすることに価値を見出すか、お下がりの3DSを回して一緒にゲームを楽しんだり布教する相手がいるかどうか、あたりになろうかと思われます。
要するに、これまで任天堂が携帯機市場でさんざんに繰り返してきた、快適な中継ぎ投入とお下がり流通で「一家に一台」から「一人に一台」に近づけるとともに、単純なプレーヤー数増加以上にゲーム機を通じたゲーマー関係の拡大でソフト売上をブーストするパターンです。中継ぎ交代要員とはいえ、Wii Uの陰惨な状況と業績回復プレッシャーで少しでも長く3DSの「収穫期」を延長したい任天堂にとっては重要な新機種といえます。従来の必勝パターン、もう少し不穏な言い方をすれば「成功体験」が今回も通用するかは今後のお楽しみ。
まとめると:
・少なくともDSi よりはずっと買い替え欲を煽る製品。
・NNIDも本格導入したところで、そろそろLLと3DSの併用を可能にしてください(LLユーザーはNew 3DSの着せ替えプレート購入層にならない問題)。ついでに3DSミクロも(略)
・セルレギオスは少し落ち着け。