MX Master徹底レビューのラストとなる第三弾は、カスタマイズの鍵であるLogicool Optionsの詳細と、実は2つのホイールと並ぶ大きな特徴であるBluetooth SmartとUnifying(ロジクール独自無線仕様)への両対応、そしてマルチペアリング機能の使い勝手について紹介します。

こうした点でも本機は優秀で、Logicool Optionsはカスタマイズの奥深さとスマートフォンアプリのような操作性が、無線仕様に関してはこれまでのワイアレスマウスでストレスとなっていたわずかな待ち時間の排除が非常に好ましいものとなっています。



なお、メインホイールについて紹介したレビューその1はこちら
「ロジクールMX Master徹底レビュー(1) ホイールの自動切替はMX-R継承、クセになる触感も復活」

サムホイールとジェスチャー機能について紹介したレビューその2はこちらになります。
「ロジクールMX Master徹底レビュー(2) 大きく変わったサムホイール。ジェスチャはカスタムしてこそ」

まずはLogicool Optionsから紹介しましょう。従来のロジクール(Logitech)製マウスはSetPointと呼ばれるユーティリティを使ってきましたが、本機では操作性などを一新したOptionsへと変更されました。なお、Optionsは本機に合わせて開発されたというわけではなく、2014年9月に発売した『Bluetoothマルチデバイスキーボード K480』と『ワイヤレスマウス M280』から対応しています。



MX MasterにおいてOptionsの役割は大きく、発表会のデモにおいても、かなり突っ込んだ紹介がなされました。上記の動画では7分20秒から9分20秒まで紹介されていますので、ご参照ください。

ここまで数回紹介したように、Optionsの基本的な機能は、マウスカーソルの移動速度設定やホイールの感度設定、そして各種ボタンのカスタマイズ。と言っても、実際の使い勝手はカスタマイズの「幅」、つまりどこまでの設定が可能かが重要になります。

機能カスタマイズが可能なボタンは、メインとなる左右クリックボタンを除いた5つ(メインホイールのクリックを含みます)、そしてサムホイール。メインボタンは左右入れ替えこそ可能ですが、機能変更は不可能にしてあるのがポイントです。











ボタン機能の変更は、中央ボタン(=ホイールクリック)の場合で無効を含めた56種類。上記の5画面ではダブりもありますが、すべての項目を並べていますので、ご参照ください。サイドボタン(戻る/進む)の場合は若干項目が変わりますが、基本的にはほぼ同等となります。

代表的な機能はダブルクリックやズーム倍率変更、エクスプローラーによる特定フォルダの表示やカット/コピー/ペースト機能といったところ。
また高度な機能として、任意のファイルやフォルダを設定して開くための「ファイルを開く」「フォルダを開く」や、「アプリケーションの起動」「キーストロークの割当」があります。



「アプリケーションの起動」ではファイル名を指定した任意のアプリケーションの実行(拡張子.exeと.batが指定可能)が、「キーストロークの割当」では、任意のキーボードショートカットを入力することが可能です。

ただし「キーストロークの割当」では、いわゆるマクロ機能を使うことはできず、同時押しも最小限に制限されます。例えばCtrl+Alt+Aキーは割り当て可能ですが、Ctrl+Alt+A+Sキーの割り当てはできません。このあたりはゲーム用製品であるがゆえにマクロ機能にも対応したLogicool Gシリーズなどとは異なるところです。



そして隠れた注目機能が「マウス感度」。これは設定したボタンを押した後、再度押すまでの間、独立したマウスカーソルの移動速度を設定できるというもの。例えば普段は高速移動にしておき、細かな操作が必要なときのみにこの機能をオンにして速度を落とす、といった使い方、あるいはその逆が可能になります。昨今のゲーム用マウスで搭載される「スナイパーモード」などと呼ばれる機能に近い設定です。

またこの「マウス感度」は、MX Masterが搭載しないハードウェア的な解像度変更を補助する役割ともなります。というのも、ホイール回りの多機能さからすると意外ですが、本機の解像度は1000dpi固定仕様であるため。このあたりもゲーム用マウスとは設計思想の違いを感じるところ。

こうしたゲーム用マウスで可能な解像度変更やマクロ機能が使えない、つまり最上位製品だからといって他モデルの機能がすべて搭載されているわけではないという点は、本機の購入を考える上で一つのチェックポイントです。



さて、Logicool OptionsをWindowsやMac OS X用アプリとして見た場合、基本操作に大胆な設計が取り入れられています。それは「適用」や「OK」ボタンがないこと。つまり各種の設定は、メニューから選択した時点で即座に確定します。

つまり、昨今のスマートフォン向けアプリなどに合わせた操作体系となっているわけです。合わせて画面構成もむしろスマートフォン用アプリに近いシンプルさとなっており、メニュー階層などもあまり深くはなく、またいわゆるメニューバーは存在しません。

こうした作りは誤操作防止という点では不利ですが、一方で操作手順は非常にスムーズ。いろいろな設定を試したい場合も気軽に変更できるため、試行錯誤の際の心理的面倒さはかなり減少します。正直なところ、OKボタン1つでこれだけ違うものかと驚きました。

またこうした作りのため、実はOptionsを起動しっぱなしにしておき、機能を変更したい際に適時設定を変更する......という力技的な使い方も意外と実用になります。一時期のSetPointのような高度なカスタマイズ(アプリケーション別のボタン機能の変更など)こそ不可能ですが、それはおそらく意図してのことでしょう。



ちなみに、こうした多機能マウスでは、ユーティリティをインストールしていないと独自機能がほぼ使えなくなる製品もありますが、本機はこの点でも優秀でした。

Windows 8.1上でOptionsを入れない状態での動作を検証したところ、オートシフトは感度デフォルト状態で有効。サムホイールも横スクロールとして動作(Chrome 41とFirefox 36、Internet Explorer 11、Excel 2013で確認)。ジェスチャー機能こそ使えないものの、ジェスチャーボタンはアプリケーション切替(Alt+Tabキー相当)として使えました。

これはもちろん、一時的に常用PC以外で使用する場合など、Optionsをインストールしていない環境でも基本操作はほぼ使えることを意味します。

なお、公式の対応OSは「Windows 7/8以降、Mac OS X 10.8以降」と限定しているためAndroidは未サポートですが、どれだけ使えるものかと思い、Android 4.4(Kitkat)を搭載したNexus 7にBluetooth経由で接続、Chromeで動作を検証してみました(Unifyingレシーバー経由ではAndroid側のドライバがないためか接続できず)。

この状態では、サムホイールは左右スクロールとして使えるものの、オートシフトはマウス側の切り替えこそデフォルト感度で動作するものの、本体側の速度から効果が薄い状態。ジェスチャーはボタン単独を含めて動作しませんでした。
若干の残念感は漂いますが、非公式・無保証とはいえ、基本的な機能は使える状態であることは喜ばしいところです。



さてここでAndoridでのテストが出ましたが、MX Masterの特徴のひとつが、複数のPCで使うユーザーには見逃せない、3台までの本体を切替可能なマルチペアリング対応、そしてBluetooth SmartとUnifyingへの両対応です。

ペアリングの切替は本体底面、手前側のEasy-Switchボタンを押すことで設定できます。その上に描かれた数字は自照式LEDが仕込まれており、接続の状態はこれを見ることで判別できるという機構です。

実はこのあたりの感触、とくにマルチペアリングでの切替速度は実機に触れる前は若干の不安要素でした。というのも、最近までこうしたマルチペアリングに対応した機器は、切り替えに時間が掛かり、かえってストレスが溜まるモデルが多かったため。



結論から言うと、ここは非常に快適でした。Nexus 7を2番にペアリングした状態で動画を撮影しましたので、ご参照ください。本機側で切り替えたあと3秒前後でAndroid側が認識していることが確認できると思います。

実はWindows PCとの組み合わせではさらに速く、マイクロソフトのSurface Pro 3(Core i5モデル)やレノボのThinkPad T440sで混在使用してみましたが、切替では2秒程度、電源オフからの再度オンやスリープモードからの復帰などでは、ほぼ瞬時にカーソルが動かせます。

とくにスリープからの復帰が瞬時なのは、従来のBluetoothマウスでストレスになりがちな箇所だっただけに、たまらなく快適。また、Bluetooth接続マウスのクセとも言える不意の切断時からの再接続などでも、電源を再投入した直後から使えるので、良い意味でBluetoothマウスらしくありません。ここは正直感動さえ覚えるほどです。

上述したキーボード K480の実機に触れた際も、最も感動したのは切替の速さでしたが、MX Masterはこれと並ぶ快適さと表現できます。

ちなみに、使う前はペアリングのためにわざわざ本体を裏返すのは面倒ではないかと思っていましたが、実際はすんなり慣れました。誤操作防止という観点からも妥当ではないかと考えます。

またBluetooth回りで驚いたのは、本機上の同一番号を使って他のデバイスに接続したあと、元のデバイスと再ペアリングを試みるときの挙動です。
こうした場合、一般的なBluetoothマウスでは元のペアリング設定をOS上から削除し、さらに再度ペアリングを実行する必要がありますが(Bluetooth機器を使っていてハマりやすい箇所でもあります)、本機はなんと元の設定を削除せずに再ペアリングが可能です。



そして、実用性という点で見逃せないのがUnifying兼用という仕様(上写真の上部中央がレシーバー。いわゆるnanoタイプです)。単にBluetoothがないPCと組み合わせて使える、というだけでなく、たとえばカフェなどでBluetooth接続が混雑している場合や、Bluetoothの感度が高くないPCで使う際に、レシーバーを本体に装着してUnifyingモードで使うことで安定した接続を確保できるのです。

これまで取材時などオフィスが使えない状況では、万が一のサポートとして有線マウスを忍ばせていたのですが、本機の場合はUnifyingレシーバーがその代わりとして使えるため(そして接続を変えても同じマウスなので)、悪条件での作業効率は大幅に上がりました。ここは嬉しいポイントです。



ただし若干残念なのだが、ペアリングが3台までという仕様。これは再接続の速度などとのバランスを考えたものと思われますが、現状ですと2台をBluetooth接続で、1台を上述した緊急用Unifying接続に割り当てるだけで埋まってしまいます。5台程度までサポートできれば、さらに使い道が広がるので、可能であれば増加してほしいところです。

なお、他の機器に付属していたUnifyingレシーバーとの接続や、Bluetooth機器との混在によるマルチペアリングテストなどもしてみましたが、このあたりもしっかりと想定通りの動作をしました。
レシーバーを本体に収納できない仕様なのは若干残念ですが、とにもかくにもBluetoothマウスで感じている接続やスリープに関するストレスがほぼ皆無になったのは素晴らしいポイントです。



さて、ここまであえて紹介してきませんでしたが、マウスとしての基本性能は十二分に水準レベル。といっても高価な製品だけにこのあたりは半ば当然とも言えるところでしょう。

レーザーセンサーはDarkfieldレーザータイプで、発表会では従来世代に比べて対速度性能(高速にマウスを動かした際の追随性)は従来モデル比50%向上、消費電力は33%減少をアピールしています。

今回はこのあたりに関して厳密なテストは行っておりませんが、そもそもDarkfieldレーザー搭載の従来機がかなり優秀。本機もとりあえずマウスパッドなしでも追随性で困る事態にはなりませんでした。



ただし、モーターが内蔵されている点や機能が満載されている点などから、本体サイズは85.7×126.0×48.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は145gと、マウスとしては比較的大柄で重めです。

ここは半分やむを得ない点ですが、マウスの持ち方、とくにいわゆるつまみ持ち派の方にとっては、持ち上げるときの力の入れ方を意識する必要があります。自分の場合はいわゆる被せ持ち派なので、あまり意識する必要はありませんでしたが、サイドボタンの配列と同様に、このあたりも慣れが必要なポイントとなるでしょう。




なお、機能を中心とした紹介でしたが、デザインはロジクールが力を入れているだけあり、価格なりの高級感を備えたもの。ともすれば逆に安っぽくなりそうな左右のダイヤモンド(風)カットなども、浮いた感のないデザインとなっています。



また、1分間の充電で2時間動作可能とアピールする充電時間に関しても検証してみました。一度フルにバッテリーを使い切った状態で1分間だけ充電し、Surface Pro 3とのBluetooth接続で使ったところ、ところどころ休止させながらではありますがおよそ1時間40分以上の動作は確認できました。

その後フル充電して平均6時間×8日ほど使っていますが、Options上からの目視では残量70%程度といったところ。公称データの40日はそれなり以上に信頼できそうです。



なお、電池残量は、Optionsの初期画面から確認できるだけでなく、本体左側に前方にある3個のLEDによって、電源オン/オフ時に確認できます。けっして細かな表示ではないですが、なんといっても駆動時間が長いため、実用面では十分。



なお、バッテリーは固定式のリチウムポリマータイプ。充電は本体前面側のUSB microB端子から行いますが、充電中にもこのLEDは発光しており、充電中であるステータスやおおよその残量などが確認できます。




さて、気になる耐久性に関して。今回はさすがに一週間程度の試用なので、メインボタンのチャタリングやホイール、バッテリーの耐久性に関しては調査できませんでした。



ただし、こうした主要パーツとラバー系塗装の耐久性に関して発表会で質問してみたところ、可能な限り配慮はされているとのこと。とくにラバー系塗装に関しては、Locitech本社兼ロジクールのプロダクトマネージャーであるアルノー・ペレ・ジャンティ氏(写真)より「MX-Rやm950などで加水分解のトラブルが多く発生したことをLogitech本社側でも認識しており、そのあたりにも配慮した塗装となっている」との回答を得られました。



ちなみに、MX-Rは(一回り小さな)モバイル向け兄弟モデルとして『VX Revolution』
と同時に登場しましたが、MX Masterのサムホイールは小型化されており、VXサイズにも搭載可能な大きさに見えます。

そこでサムホイール搭載のVX Master(仮)の可能性について尋ねてみたところ、ロジクールのクラスターカテゴリーマネージャーである古澤明仁氏(写真)より、笑顔で「開発中の製品に関しては当然コメントできないが、私たちは常にユーザーからの要望を聞いて製品開発をしている」という回答を得られました。

実は別途「左利き版の企画はないのか」と尋ねたのですが、こちらはジャンティ氏より「残念ではあるが市場が小さい。現状で把握している限り、私たちの製品を使ってくれる左効きユーザーは1割程度だが、そのうちの7割程度は左利きだがマウスは右手で使う、というユーザー。なので実質的にユーザー全般の3%程度になってしまう」と、ほぼ明確に否定されました。
このあたりの否定の強さを比べてみると、VX Master(仮)はひょっとしたらひょっとするのかもしれません。



さて、このようにMX Masterは、機能面から触感や音に至るまで、現状のロジクールが持つ技術の多くを注ぎ込んできた製品という印象です。

実売価格は税別で1万2000円台とマウスとしては非常に高価ですが、実際に触れてみると「このストレスのなさであれば1万円は払ってもいいのではないか」と思わせるだけの実力でした。



ただし完璧というわけではなく、良くも悪くもOptionsによるカスタマイズで威力を発揮する点や、サムホイールやサイドボタンの操作性に慣れを必要とする点、そしてもちろん価格など、ユーザーを選ぶ点もあります。
また意外な弱点が、音の大きさ。ホイールモード切替音やメインボタンクリック音(これはいかにもマウスクリック音という感じで、ある意味必聴です)は、使っているユーザーにとっては非常に心地良い音色なのですが、比較的大きめ。回りの鎮まった深夜などの使用では結構目立つ状況もありました。

しかし総合すると、操作性やストレスのなさといったメリットがデメリット以上に大きく、また購入対象となるヘビーユーザーであれば、デメリットも「かえって面白い」「使いこなしてやろうじゃないか」と思えるチューニングとなっているタイプの製品です。MX Masterは本誌をはじめ、多くのメディアで大きな話題となりましたが、それだけの実力は十分。MX-Rのように長く愛される製品となりそうな風格さえあります。

気になった方はまず触って欲しい、間違いなくそう言える完成度のマウスです。