ユカイ工学代表インタビュー:BOCCOをなぜKickstarterに出したのか

Takako Ouchi
Takako Ouchi
2015年05月13日, 午後 12:00 in bocco
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ユカイ工学・青木俊介さんのインタビュー、今回はKickstarterでのコミュニケーションロボット「BOCCO」のプロジェクトについて。前回に引き続いてプロジェクトを掘り下げていきます。

なぜ、クラウドファンディングだったのか?

BOCCOをKickstarterに出すと聞いたとき、konashiを開発・販売している実績があるユカイ工学が......と、最初はちょっと意外でした。クラウドファンディングで投資を募らなくても、他の選択肢がいくらでもありそうに思えたからです。

青木:過去のプロダクトの実績やプロトタイプをもとにVCから投資を集めることもできるのではないかと。 プロトタイプを作ってVCからお金を集めて、それをちょっとずつ使いながらヒットするかどうか試すというやり方は、お金を出す側からすると効率はいいと思います。投資家、打つ側にとっては玉をたくさん打てば「的に」当たりやすくなるわけで、お金を出して当たらなかったらそれでおしまい。一方作る側からするとその玉の1つでしかないとも言えます。

僕としては、良いチームでもっと何度も打席に立ち続けることができるといいなというのがあって、いまは自分たちのリスクでやっています。

BOCCOでは、クラウドファンディングとDMM.make ROBOTSを使う道を選びました。DMM.make ROBOTSは国内向け、一方、Kickstarterでのファンディングは海外展開に向けたものという位置づけです。


kickstarter

海外でのプロモーションと、音声合成の部分(テキストメッセージを音声で読み上げる機能)など海外対応の開発や海外での認証取得に費用がかかるため、最初にまとまった数の受注を集めたいということでのファンディングというわけです。


スタートアップのプロジェクトとKickstarter

実際、ほかのプロジェクトでも第1弾がヒットして会社に投資を集めることもできるのに、プロモーションを兼ねて第2弾、第3弾もKickstarterに出すという場合があるといいます。普通に売ればいいという話ですが、Kickstarterに出して話題と多額の支援を集めると「Kickstarterで注目の商品」としてプロモーションになります。

注目を集めている感じを出すために目標金額をかなり小さめにしておいて、達成率何百%というように見せるテクニックが使われる場合もあるとのこと。「Kickstarterでお金を集めたプロダクトだ」というレコードがつくことは、知名度がそれほど高くないスタートアップのプロジェクトにとっては大きなメリットになるからでしょう。

Kickstarter

BOCCOのKickstarterプロジェクト

Kickstarterの王道の成功パターンというと、大規模な展示会への出展などを経てメディアに露出し、その注目度のままKickstarterプロジェクトに突入し、開始直後から申し込みが大量に殺到するという印象です。デモムービーが重要なのはもちろん、成功しているところは地道なプロモーションに非常に力を入れているといいます。独自のコンタクトリストを作り、開始前からカウントダウンメールを送ったりすることもあるとか。

BOCCOの場合、Kickstarterの準備は2カ月ほど(ただし試作や量産の準備は含みません)。カウントダウンメールまでは手が回らなかったそうですが、ジワジワと順調に申し込み数をのばし目標金額を達成、2万7037ドルを調達しています。このあと順調にいけば、8月から9月にかけて出荷の予定です。

ちなみにBOCCOのRewardsは 1. ステッカー(10ドル)、2. BOCCO通常モデル(179~220ドル)、3. Kickstarterの専用モデル(本体色がオレンジ、240ドル)、4. アーティストfantasista utamaroさんとのコラボモデル(1000ドル)です。

rewards気になる海外での反応は、BOCCOのこけしっぽい外観は「Very Japanese!」と人気が高いそうですが、たとえばアメリカでは州にもよりますが、小さな子供が一人で留守番をすることは違法です。となると、日本におけるBOCCOの使われ方(共働きの親と小学校低学年くらいのスマホを使っていない子どもをつなぐコミュニケーションツール)とはまた違ってくるのかもしれません。

このあたりは、海外では日本よりも高齢者の方と簡単にやり取りするのに使いたいという意見が多いという印象があるといいます。展示会などで直接、来場者と話すことで感触を得ているようです。

量産体制は国内の開発リソースを活用

BOCCOは、すでに国内の工場で量産の準備が進んでいます。プラスティック部分の製作は株式会社ミヨシ(iPhoneで家電を操作できる赤外線リモコンデバイス IRKitの製作も担当)、最終製品の工場に関しては青梅にある会社にお願いしているとのこと。

青木:将来的に海外に移したいと思ってはいますが、今回は納期とクオリティを優先しました。海外の工場にお願いしたりすると、向こうも片言の英語、こちらも片言の英語でやり取りするので。一度作ったものを「これを作って」というのは簡単なんですが、何もない状態で作るのはかなり大変......。自分たちの場合は、最初のロットは国内でやったほうが結果的にトラブルも少なく、トータルで見たら安くなるんじゃないかなというふうに考えました。

また、国内の生産リソースが空いてきているので、そちらを使ったほうがスタートアップにとってメリットは大きいのではないかと青木さんは言います。大手メーカーもOEMをやり始めるなど、国内の工場が開き始めているようです。試作にシフトしている工場も多いと言います。日本語でコミュニケーションがとれて、なおかつ相手は製造のプロです。教えてもらうこともできます。

今回、青木さんに話を聞いて感じたのはそのバランス感覚です。BOCCOにしても、KickstarterとDMM.make ROBOTSの両方で進めています。リスクを回避しながら、自分たちでできること、既存のプラットフォームに乗せる部分をうまく切り分けています。これは青木さんが過去関わってきた会社やサービスの立ち上げの経験から、なのかもしれません。

次回はそのあたり、またロボットへのこだわりを聞いていきます。


大内孝子(おおうち・たかこ)フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。
 
 

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