『テニス・フォー・ツー』(1958年、上の写真)『スペースウォー!』(1962年)『コンピュータスペース』(1971年)と聞いて心が動くのは40代以上のゲームマニアかもしれません。現在、埼玉県川口市のSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムにて「あそぶ!ゲーム展 デジタルゲームの夜明け」が開催中。歴史的なビデオゲームが展示のみならずプレイ体験が可能です。
なお、映像ミュージアムには映画、映像、放送の常設展示もあります。ゲームマニアのお父さんはゲームの歴史をチェックしつつ、関心が薄いご家族は映像常設展示で楽しむという口実もできそうです。
ゲームの歴史に未来を感じる「あそぶ!ゲーム展」
ビデオゲームの特別展示は、オシロスコープの波形を利用してプレイする『テニス・フォー・ツー』が入口で迎えてくれます。その昔、アキバのパーツ屋さんが売っていたような金属製のミニスイッチをカチカチと動かして遊ぶ仕様で原始的なコンテンツではありますが、ソフトタッチなスイッチに馴れてしまった今となってはとても味わいがあります。
またスティーブ・ラッセル氏が『スペースウォー!』を開発した大型コンピュータ PDP-1 の再現モデル(下の写真)もブースに大きく鎮座。その大きさはもはや"御神体"です。『ブラウンボックス』『オデッセイ』といったATARI以前の家庭用ゲーム機のレプリカもディスプレイしています。
海外の懐ゲーから国内ファミコン世代も感涙のあのゲームまで
会場ではテーマ別に展示しており、- デジタルゲームの父:スティーブ・ラッセルとノーラン・ブッシュネル
- TTL:アーケードデジタルゲーム機誕生影の主役(筆者注:TTL=トランジスタ・トランスファー・ロジック)
- 3D(3次元):立体的表現への挑戦
- 多重スクロール:より奥行きのある背景表現を目指して
- ベクタースキャン:ドット画以外の表現方法
- スクロール:場面展開の工夫」ゲームサウンド:効果音からBGMへ
- 携帯ゲーム機の誕生
- コントローラーの試行錯誤:ダイヤルからレバーとボタンへ
- CPU:デジタルゲームに革新をもたらしたもの
- 家庭用据置型ゲーム機の誕生
また『スペースインベーダー』(1978年)と『パックマン』(1980年)に関しては、それぞれ独立したコーナーを設けています。
『スペースインベーダー』開発者である西角友宏(にしかど・ともひろ)氏のビデオインタビュー映像や貴重な手書き資料も展示。西角氏が今後トライしてみたいゲームとして「VR」を挙げていることも興味深いところです。『パックマン』も同様に岩谷徹(いわたに・とおる)氏のビデオインタビューも映しています。いずれのインタビューとも公式Webサイトで視聴可能になっているので、現地に行けない人も見られますよ。
おそらく、それは「あったらいいな」というイマジネーションの発露だったのではないでしょうか。特にブッシュネル氏らが開発した『コンピュータスペース』(左の写真)のなだらかな曲線で描かれた筐体は、当時の開発者たちが未来の姿を想像して創ったものがそこにはあります。それは今見ても新鮮な驚きを感じます。
アタリのヒットゲーム『PONG』も展示していましたが興味深いのは筐体内側の写真です。当時の日立製家庭用テレビがそのまま筐体のなかに収まっていることが確認できます。このほかのパーツも当時であればどこでも購入できたであろうモノを集めて組み立てた手作り感が満載です。
その他には『クレイジークライマー』(1980年)『ドンキーコング』(1981年)『ムーンパトロール』(1982年)など多様です。
今、プレイしてみれば操作性がイマイチのものもあれば、倫理的に創れないコンテンツではないかというものもあります。さらに、アイディア一発勝負、モノクロのモニターゆえにカラー描画ができないために画面内部にカラーセロファンを貼ったものなど、自由な発想のもと不可能を可能にしようとした当時の開発者たちの熱量が感じられるものばかり。しかもビデオゲーム第一世代が遺した貴重なレガシー(遺産)が展示のみならず、実際にプレイが可能です。
会期は来年2016年2月28日まで to be continued 。期間中、筐体の入れ替えも実施の予定です。消えゆく記憶を呼び覚まし、古きを訪ねて新しきを知る絶好の機会、未来のエンタテインメントはプリミティブなゲームの歴史の中にありそうです。
ぜひご自身で体験ください。