ネット将棋こそが今後の将棋界を広げる鍵になる? 将棋電王戦が貢献した将棋ファン層の拡大

いーじま (Norihisa Iijima)
いーじま (Norihisa Iijima), @WipeOut2008
2015年11月13日, 午前 05:30 in computer
0シェア
FacebookTwitter


マイナビの「週刊将棋」が来春で休刊だとか。30年以上続いてきた新聞に終止符が打たれるということで、競技人口が激減だとか棋士も収入減だとかという論調もありますが、筆者はそこまでネガティブには考えていません。

確かにどちらも減少はしているかもしれませんが、それよりもネットの普及が将棋を昔から楽しんできた世代にまで浸透してきたためではないでしょうか。その一翼を担ってきたのは、将棋電王戦や各棋戦を中継するニコ生だと思います。 

将棋界を支えるには将棋という競技にたくさんの方が参加してもらうことも重要ですが、ファン層を広げるということもかなり重要だと思います。先日話題になったラグビーもそうですが、勝利したことで話題を集め、五郎丸選手をはじめとする個々の選手の姿、人となりが見えてきてさらにヒートアップしました。みんながみんな、ラグビーのルールなんて知りません。でも、見てみたいと思う気持ちが働くことでファン層が広がるわけです(それを持続させるのはまた別の問題)。

昔は、将棋の対局を見ようと思ったら、NHKや囲碁将棋チャンネルの番組を見るしかありませんでした。また各棋戦で行なわれる大盤解説へ出向けば、棋士の方が解説してくれているので、棋士の人となりは伝わってくるかもしれません。新聞や雑誌は、勝敗だけでなく棋士の人となりを伝える役割を果たしてきました。

それが一変したのが、ネットでの将棋中継です。しかもリアルタイムで進行していきます。もちろん、あとから見返すこともできます。棋士と棋士がガチ勝負する姿は、見ているだけで息が詰まりそうになります。また対局中とは一転、解説の場になるとガラッと雰囲気が変わる棋士もたくさんいらっしゃいます。みなさん頭脳明晰でいらっしゃるから話も達者で、聞いているだけでもおもしろかったりもします。

ニコ生の公式放送

最近、加藤一二三九段が「ひふみん」の愛称で親しまれ、テレビのバラエティー番組まで登場することになったのも、その人柄と発言、行動がネットを通じて知れ渡るようになったためです。筆者は子供のころ加藤一二三九段が大好きで、NHKの将棋番組に出演するときは必ずと言っていいほど見ていました。当時を知る人からすれば、「何でいまさら」な感じもするかもしれませんが、将棋ファンではない層にも突き刺さったのはネットのおかげだと思います。

大人気の加藤一二三九段

このように、棋士の人となりが見えてくると、「ちょっと応援したいな」という気持ちが働いてファンとなり、勝敗をはじめとする棋士が関わった記事もチェックするようになるでしょう。「週刊将棋」もファンに向けて記事づくりをしてきたかと思いますが、対局結果となるとネットの情報が先行してしまい、週刊だと読む価値が薄れて中途半端な気がします。

逆に「将棋世界」のような月刊誌のほうが、1ヵ月分をまとめて読めるならちょうどよいのかもしれません。かつて「TokyoWalker」などの情報誌が週刊だったのが月刊になったりするのと同じ状況なのです。

ネットによって将棋界が盛り上がってきた理由のひとつは、将棋電王戦の開催です。棋士とコンピューターとの戦い。この構図は、将棋ファンだけでなくパソコンを使い続けてきたネット民たちの心も掴みました。将棋の生中継に40万も50万もアクセスがあるなんて誰も想像しなかったことでしょう。

将棋電王戦は第2回以降、棋士5人対コンピューター将棋ソフト5つの団体戦に切り替わりました。これにより、いろいろなタイプの棋士が登場することとなり、これまでの堅苦しそうなイメージを覆すのにいい機会になりました。中継に登場する人たちは棋士・女流棋士のみなさんで、普通にMCやレポートをこなすあたり流石だと思います。また、将棋ソフトの開発者たちも(いい意味で)クセのある方が多く、対局以外にも話題を振りまいてくれました。

中継に登場する藤田綾女流初段(右)と竹俣 紅女流1級

印象に残るシーンといえば、第2回の第4局、塚田泰明九段 vs Puella αの戦い。「Puella α」は第1回で米長永世棋聖を下した「ボンクラーズ」の後継ソフトで、かなり苦戦が予想されていました。塚田九段はPuella αの攻めをかわしながら敵陣へ玉を進め入玉、Puella αも入玉し、点数勝負の形勢になりました。

一般に、コンピューター将棋ソフトは入玉されると玉を詰めるのか点数勝負なのかの見極めが難しいとされています。このとき、塚田九段は盤面に向かって指を差して点数を数えるという行動にでました。この行動は控室でも話題となり、おそらく通常の対局では見せない姿でしょう。

塚田九段の指差し確認

結果は引き分けとなり、ホッとしたのか終局直後のインタビューで少し涙ぐんでいました。将棋の対局後に涙ぐむなんてほとんど考えられません。勝っても負けてもあまり感情を出さない世界だからです。対局後の会見ではそのときの思いを「点数勝負で負けると思っていたので」と語り、団体戦で負け越したくない、コンピューターには負けられないというプレッシャーがそうさせたのでした。

また第3回の第2局、佐藤紳哉六段 vs やねうら王の戦いでは、佐藤六段の険しすぎる形相も話題になりました。普段はお笑い担当な感じなのですが、いざ盤面に向かうと真逆の姿となり、かなり心を打たれました。この対局、やねうら王のソフト改変問題も絡んでいたため、より一層勝ちにこだわっていたのかもしれません。

結局は佐藤六段が負けてしまいましたが、棋士の真剣な姿は中継なくして見られないので、ドワンゴによるニコ生中継の功績は計り知れません。将棋のルールもあまりわからなくても、勝負に拘るその姿勢は若者たちにも響いたと思います。

佐藤紳哉六段の普段見られない表情

こちらは普段(?)の佐藤紳哉六段。サービス精神旺盛です。

電王戦を見ていてどちらを応援するかというと、おおかた棋士側です。人間に勝ってほしい、コンピューターには負けられないという思いが強いのでしょうか? おもしろいことに、ソフトを開発している人たちも、棋士側に勝ってほしいと思っていることが多いことです。もちろん自分が開発したソフトは勝ちたいと思っていますが、ほかの対局を見ているときは棋士側を応援することが多かったりします。

さて将棋電王戦は、現在棋士側の対局者を決める第1期叡王戦が終盤を迎えています。準決勝は、

2015年11月17日 18:00~ 山崎隆之八段 vs 村山慈明七段
2015年11月18日 18:00~ 郷田真隆九段 vs 行方尚史八段






勝者同士が決勝の三番勝負に臨み、優勝が決定します。

一方、コンピューター側の対局者を決める第3回将棋電王トーナメントは、11月21日から3日間開催されます。現時点ではまだ出場ソフトが公開されていませんが、今回から優勝したソフトしか電王戦に出場できないため、その勝敗に一喜一憂することでしょう。





コンピューターには感情がなく、心理戦はまったく通用しません。将来カメラで撮影して、盤面と棋士の姿を見て総合的に判断し、人間の手を借りずに対局が進められるようになったら、「人工知能による将棋」としてコンピューター将棋も次元が変わることでしょう。コンピューター将棋ソフトはどんどん進化していきますが、人間ももちろん進化していくので、まだこの戦いは続いていくのではないでしょうか。


【Engadget Live】iPhone 12発売日速攻レビュー

 

TechCrunch 注目記事新型コロナのソーシャルディスタンスを支援するビデオチャットアプリ8選

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

 

関連キーワード: computer, shogi
0シェア
FacebookTwitter

Sponsored Contents