Microsoftはここ数年、"クラウドファースト、モバイルファースト"という標語を利用して、クラウドサービスの拡充、そしてモバイル、つまりはスマートフォンやタブレットを優先する戦略をとっている。

このため、クラウドサービスを利用するために成長し続けるWindowsを意味する"WaaS(Windows as a Service)"を合い言葉にしたWindows 10のリリース、さらにはOneDriveやSkypeといったクラウドサービスの拡充などを急ピッチで展開中だ。そして、それと同時にMicrosoftが急いでいるのが、Office 365と呼ばれるサブスクリプション型のOfficeのサービスだ。そのクライアントとしては従来のWindows PCやMac OS向けのデスクトップアプリケーションだけでなく、iOSやAndroid向けのモバイル向けのOfficeアプリケーションも矢継ぎ早にリリースを行っている。

ところで、このモバイル向けOfficeアプリケーション、無償でダウンロードして導入することができるが無償で利用できるのは個人利用の範囲内であって、商用利用にはOffice 365のサブスクリプションが必要になるということはご存じだろうか? 仮にユーザーが何らかの仕事に利用する場合には、すべて商用利用の扱いになり、ライセンス規約違反となるので注意が必要だ。

無償で利用できるOffice Mobileだが、商用利用には制限がついている

Microsoftが"Office Mobile"の総称で展開している、モバイル向けのOfficeアプリケーションには大きくいうと3種類がある。

(1)iOS用(iPhone/iPad用)
(2)Android用(Androidスマートフォン/Androidタブレット用)
(3)Windows 10用(Windowsスマートフォン/10インチ以下のWindowsタブレット)

それぞれ、各OSが用意しているアプリストア(iTunesストア、Google Playマーケット、Windowsストア)から無償でダウンロードして利用できる。ただし、多くの機能を利用するには、Microsoftが同社のクラウドサービスを利用するためのIDとして提供しているMicrosoftアカウントを入力する必要があり、Microsoftアカウントを持っていない場合にはそれを作成しなければならない。

Microsoftアカウントさえ作れば無償で利用できるため特にライセンスの要件などを気にせず利用しているユーザーも少なくないのではないだろうか? だが、こうしたOffice Mobileの利用には、商用利用と非商用利用という概念があることをご存じだろうか?実はMicrosoftアカウントを入力して無償で利用できる範囲は、非商用利用に限られており、商用利用するには別の要件を満たす必要があるのだ。

事業や収益を産む作業は商用利用に該当、持ち帰り仕事もNG

その要件を理解する前に、"商用利用"とは何かということを理解しておく必要がある。商用利用というのは、Microsoftのサイトによれば、"利用する場所、時間帯、デバイスの所有権を問わず、業務目的または収益を得ることを目的とした活動となります。商用利用権がないライセンスについてはこういった目的にてご利用できませんのでご注意ください"なっている。

かみ砕いて言えば、"誰が持っていようが、どこでいつ使っていようが、なんかの業務、利益を生むような行為"ということになるだろう。このため以下のすべてが該当する。

・企業内での利用
・国、地方公共団体での利用
・NPO法人での業務
・教育機関での業務(例えば先生が資料を作成したりなど)
・個人事業主の業務

何らかの利潤やお金の移動を生む行為はすべて該当すると考えておくのが妥当だろう。逆に商用ではないというのは、下の3つのようなことだろう。

・友人に送る年賀状の文面をWordで作成した
・町内会に配布する資料をExcelで編集した
・大学生がレポート作成に利用した(学生の学業に利用する場合は非商用)

多くの個人ユーザーにとっての問題となるのは、自分所有のデバイスで会社の仕事ファイルを処理する場合だ。というのも、最近はBYOD(Bring Your Own Device)の考え方を受け入れている企業も多く、社員が自分で購入したiPhoneを会社のメールサーバーに接続して利用している場合も少なくないだろう。

このようにiPhoneでOffice Mobileを利用してファイルを編集した場合は、"デバイスの所有権を問わず"というところに該当するので、商用利用となるのだ。この場合、ライセンスを受けているのは、企業ではなくデバイスの利用者であるユーザー自身となるので、ライセンス規約違反を問われるのはユーザー自身となることに注意したい。

商用利用には、何らかのOffice 365サブスクリプションが必要に

ライセンス規約違反せずに商用利用するには、デバイスの利用者であるユーザー自身が何らかのOffice 365サブスクリプションを持っている、あるいは所属している組織が法人向けOffice 365サブスクリプションを契約しており、その利用権をユーザーに割り当てているのどちらかが必要になる(法人向けOffice 365を契約するには法人単位ということになるので、今回は個人向けのOffice 365サブスクリプションだけを解説していく)。

個人向けのOffice 365サブスクリプションには2つの種類がある。1つがOffice 365 Soloで、もう1つがOffice 365サービスだ。違いをまとめると以下のようになる


シンプルに言ってしまえば、Office 365サービスというのは、OneDriveやSkypeといったクラウドベースのサービス利用権と、Office Mobileの商用利用権(2スマートフォン+2タブレット)であり、Office 365 Soloはそれらのサービスに加えて、WindowsないしはMac OSで2台まで利用できるOfficeデスクトップアプリケーションの利用権がついてくるという仕組みになっている。

どちらも基本は1年間の契約になっており(Office 365 Soloに関しては1ヵ月単位も可能)、料金は1年分がOffice 365 Soloは12,744円(税込)であるのに対して、Office 365サービスは6,264円となっている(Microsoftストアにおける11月30日時点)。

ただ、注意したいのはOffice 365 Soloは単体パッケージとして購入することができるが、Office 365サービスはPCなどにバンドルすることが前提となるパッケージになっており、Windows PCやWindows タブレットとセットでしか購入することができないという点だ。

前出の料金というのは1年間の更新権利だ。Office 365サービスは、PCにはOffice Premiumというバンドル用のOfficeとセットになっている場合(Office Premium+Office 365サービスと表記されている、Office PremiumはそのPCの寿命まで最新版のOfficeを利用できるライセンス)、10インチ以下のWindowsタブレットに初期導入されているOffice Mobileとセットになっている場合(Office Mobile+Office 365サービスと表記されている)、WindowsスマートフォンにOffice 365サービスだけがバンドルされている場合(Office 365サービスと表記されている)がある。

いずれも登録後1年間利用可能で、2年目以降も使いたい場合には6,264円(Microsoftストア)を支払ってOffice 365サービスの更新権を購入する必要がある。

知らず知らずのうちにライセンス規約違反になってしまう行為を避けるべきであるのは、企業であろうが個人であろうが、改めて筆者が繰り返すまでもないだろう。今後もOffice Mobileを商用利用する場合には、かならず何らかのOffice 365のサブスクリプションを契約してからにしておくということを忘れないようにしたい。