iPhone向けアクセサリーメーカーとしておなじみのトリニティが、Windows 10 Mobile搭載のスマホ「NuAns NEO」を発表しました。端末そのものの開発では新規参入となりますが、これまでのスマホメーカーにはない発想が盛り込まれており、こだわりも満載。その割にはお値段も3万9800円(本体のみ、外装は別売)と比較的リーズナブルで、注目を集めています。NuAns NEOは、OSにWindows 10 Mobileを採用したSIMフリースマホで、これまでのスマホを「いったんリセットして考えよう」(トリニティ 代表取締役社長 星川哲視氏)と、設計からデザインまでゼロから行っているのが特徴。中国のODMを使ってはいますが、外観がまったく同じようなベースモデルが存在しないせいもあって、見た目は大きく他の製品とは異なっています。

トリニティの代表取締役社長、星川哲視氏OLYMPUS DIGITAL CAMERA
アクセサリーメーカーらしいのが、基盤やバッテリー、ディスプレイなど、スマホとして機能する「コア」と、外装とも言える「カバー」が分離されていること。このケース部分を組み合わせることで、様々なパターンが実現します。モデルケースとして提案しているのが、上下別々のパーツを組み合わせるツートンスタイル。ほかにも、標準でフリップ型のブックカバーをつけることもできます。本体があり、その上でカバーなどを装着していく、従来のスマホとはまったく考え方が異なるというわけです。


コアとカバーを組み合わせるスタイルOLYMPUS DIGITAL CAMERA
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ツートンの組み合わせは全64種類OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ブックカバーも用意するOLYMPUS DIGITAL CAMERA

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外装を変えられるという点では、世界的には、サムスン電子のGalaxy Noteシリーズが有名で、あちらも背面カバーと一体となったフリップ型のアクセサリー「Flip Wallet」を出してきました。Flip Walletを使えば、まさに"ノート"のような見た目になるというのは、同シリーズの売りの1つです。ただし、Flip Walletは、あくまで別売のオプションという位置づけ。これに対し、NuAns NEOは、標準がまっさらな状態で、好きな背面を選べるというのが大きな違いになります。

この点は、アクセサリーメーカーが出自のトリニティならでは。サムスン電子のような巨大でグローバルなメーカーは販路が多岐にわたりすぎており、ここまで小回りの利いた対応が難しい。裏を返せば、NuAns NEOは小ロットで始めているからこそできた仕組みと言えるかもしれません。とは言え、コアとケースを分離したことで、アクセサリーメーカーらしさや、端末のコンセプトが明確になっていることは確かです。

星川氏はキャリアのプレミアムスマホでもなく、格安スマホでもない、もう1つの世界観を作りたかったと語っています。モバイル機器は「オフィスや書斎から、リビング、カフェ、ベッドサイドでも使うようになってきた」(同)一方で、素材といえばプラスチック、高級な端末では金属、ガラスが定番になっています。

こうしたスマホの固定概念にとらわれず、NuAns NEOで投入したのが、東レの「ウルトラスエード」や、クラレの「クラリーノ」、本物の木材といった素材です。これらの手触りはスマホにおなじみの素材のどれとも異なる、独特な印象があり、手にもなじみます。「薄さを追求することに、本当にユーザーメリットがあるのか」という疑問から、本体をあえて11.3mmと厚くしたことも、持ちやすさに貢献しています。

クラリーノやウルトラスエード、天然木材を使用OLYMPUS DIGITAL CAMERA

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NuAns NEOのカバーに使われる素材は日本製となっており、アルファベットの「C」のような形状になっている本体にフィットさせるため、加工も日本で行っているとのこと。企画や設計は日本で、コアの製造は中国で、そして外装は日本でと、両国のメリットを生かした開発体制になっています。そして、このような素材の組み合わせを楽しめるのも、コアと外装が分かれた仕様になっているからこそ。このコンセプトを実現するためにも、NuAns NEOのギミックは必要不可欠だったと言えるでしょう。

側面のC型に合わせるためにカバーは日本で製造OLYMPUS DIGITAL CAMERA
こうした外観上の特徴を説明すると、「見た目だけのデザインスマホか」と思われるかもしれませんが、NuAns NEOの「新しいライフスタイルを実現したい」(同)というコンセプトは、機能やスペックにも貫かれています。チップセットには、最新の「Snapdragon 617」を採用。ミッドハイ向けのSnapdragon 600番台ということもあり、「Continuumにも対応する予定」(同)です。

「Snapdragon 617」搭載でContinuumに対応予定OLYMPUS DIGITAL CAMERA

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Continuumとは、ディスプレイとスマホをつなぎ、あたかもPCのように利用する機能のこと。マイクロソフトは対応するチップセットの要件をSnapdragon 810および808と発表していましたが、これはあくまで製品として世に出ているものに関してとのこと。Snapdragon 617を搭載したNuAns NEOは現在、マイクロソフトとクアルコムで検証中という状態で、Continuumが正式にOKになれば、その他のWindows 10 Mobileでも利用できるようになる可能性は高そうです。

細かな点では、いわゆる格安スマホだと省かれがちな5GHzのWi-Fiに対応していたり、ディスプレイに防指紋フッ素コーティングが施されていたりするのもポイント。本体の厚みを生かして、バッテリーも3350mAhと大容量です。元々、モバイル向けのWindowsは、Windows Phone 8やWindows Phone 8.1のころから、バッテリーの持ちのよさには定評がありました。このOSの性能と3350mAhのバッテリーを組み合わせれば、かなりの長時間駆動が実現できそう。現状では連続待受時間が400時間以上と公表されていますが、体感での持ちのよさも期待ができそうです。

5GHz帯のWi-Fiにも対応するOLYMPUS DIGITAL CAMERA
オリジナリティのあるWindows 10 Mobile端末で、なおかつ初のContinuum対応となれば、ユーザーの期待感も高まります。一方で、そのWindows 10 Mobileであることには、期待と同時に不安も覚えます。マイクロソフトが鳴り物入りで立ち上げたWindows 10 Mobileで、使い勝手は向上しているものの、やはりアプリの数や、OSの安定度などでは、AndroidやiOSに軍配が上がります。

もちろん、必要十分なアプリがそろうことはそろいますが、選択肢が狭いのです。たとえば、AというTwitterクライアントを使っていたとき、Bには別の機能があるから乗り換えるということが、他のOSなら気軽にできます。あまり気に留めてなかった機能が実は役に立ち、Cというクライアントを使い始めたという経験がある人もいるでしょう。現状のWindows 10 Mobileだと、そこまでの選択肢がありません。豊富なアプリの中から、自分に合った1本を選ぶということができないのです。

個人的には、日本語の文字入力がAndroid、iOSに比べて貧弱だったり、Google関連のアプリがほとんどない点も、常用するうえでは気になっているところです。NuAns NEOのコンセプトを気に入ったユーザーが、こうしたハードルをきちんと乗り越えられるのかは、未知数といったところ。まだ普及しきっていないOSなだけに、サポートがどこまできちんと得られるのかも注意しておきたい点です。その意味だと、まだ先進層以外が手を出すのは、時期尚早と言えるかもしれません。

1プラットフォーム化したWindows 10でアプリが増えるかが鍵OLYMPUS DIGITAL CAMERA
もっとも、これは鶏が先か卵が先かの問題。端末がきちんと存在していて、一定数売れていれば、開発者もついてきます。周りに使っている人が増えれば、先進的な層以外の人も、安心して手を出せるようになります。そのきっかけを作るためにも、今後のプラットフォームの成長には、NuAns NEOのような、一般ユーザーにもリーチしそうな端末は不可欠と言えるでしょう。開発者の拡大や、日本市場に向けたきめ細やかなローカライズに関しては、日本マイクロソフトの活躍にも期待したいところです。