シェア9割のBitcoinが注目される理由とは?日銀がBitcoinなどに関するレポートを公開:モバイル決済最前線

鈴木淳也 (Junya Suzuki)
鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2015年12月30日, 午後 12:45 in bank of japan
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日本銀行(BOJ)は12月21日、「『デジタル通貨』の特徴と国際的な議論」と題した、「デジタル通貨」や「分散型元帳」技術に関するトレンドや各国の動向についてまとめた最新の調査報告を公開した。

このベースとなる調査報告は、国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)の決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures:CPMI)が2015年11月に「Digital currencies」のタイトルでまとめたもので、興味ある方は合わせて参照してみてほしい。今回は、この「デジタル通貨」や「分散型元帳」の世界で何が起こっており、各国がどのような動きを見せているのかを、調査報告の要点をまとめる形で紹介する。

「デジタル通貨」とは何か?

「デジタル通貨」というと「電子マネー」やゲーム内での仮想通貨、Bitcoinのような「暗号通貨(Cryptocurrency)」を想像するかと思うが、その定義をどうするかで対象が大きく異なってくる。ふだん、われわれが物のやり取りに使っているお札、つまり「日本銀行券」を銀行に預けた場合、実際に銀行や銀行間でやり取りされるのは紙幣そのものではなく、銀行内で記録された「電子的なデータ」だ。

その意味では、これらもデジタル通貨といえるのかもしれないが、より狭義には法的な裏付けのない商店など特定箇所やWeb流通のものを指す。さらに今回のテーマとなるデジタル通貨は、冒頭で挙げたBitcoinのような「暗号通貨(Cryptocurrency)」、しかも「分散型元帳(Distributed Ledger)」と呼ばれる仕組みを使って信頼性が担保される方式の「通貨」だ。

(デジタル)通貨の種類とその取引の仕組み(出典:日本銀行、BIS CPMI)


上記はCPMI報告にあった通貨の種類ならびに、その交換方式による違いを分類したものだ。世間一般に流通している紙幣は「日本銀行券」であり、日本の中央銀行である日銀が発行している。

もともとは銀行や商店の間で流通していた"手形"にルーツを持つといわれる紙幣は、日銀に対する借用書のようなものだ。これはソブリン債と呼ばれ、発行元が金銭的価値を保証しており、この場合は日銀がその価値を保証した"紙の証文"にあたる。この価値が保証されている限り、発行元である日銀を介さずとも対人での受け渡しで価値の移転が可能だ。これを「ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)」の取引と呼ぶ。図中にある「金券」なども、発行元が日銀ではないだけで使い道は同様だろう。

銀行への預金や銀行間取引においてデータは電子的に記録されるが、扱いとしては通常の日本銀行券と変わらない。また電子マネーについても、現在非接触決済に利用されているものの多くが法律により資金移動や管理について規制が行われており、同様の金銭的価値を持っているといえる。

一方で、オンラインゲームなどの仮想世界で流通する通貨や、今回のテーマであるBitcoinなどの暗号通貨はこうした枠組みには収まっておらず、CPMIの定義では、こうした従来の枠組みとは異なる流通通貨を「デジタル通貨」と呼んでいるようだ。

こうしたデジタル通貨は個人間での直接的な受け渡しが可能だが、オンラインゲームなどでの例を見ればわかるように、実際の所持金額やユーザー間での受け渡しは中央のシステムが集中管理を行っている。これは中央の管理を離れると不正が発生する可能性があるためだ。これは電子マネーでも同様で、例えばSuicaなどのサービスでは個々のICカードごとに金額の値を持っているが、最終的には決済時などにサーバとの照合が行われており、実際の金額は集中管理されている。

ところが、Bitcoinでは個人の間での受け渡しが発生したとしても、この取引を管理する中央のサーバは存在せず、「分散型元帳(Distributed Ledger)」という仕組みで取引台帳が分散管理されている。台帳は「ブロック」という単位で管理されており、改ざんにあたっては過去にさかのぼって膨大な計算を行うペナルティがあり、悪意のある第三者が介在するのが困難になっている。

この信頼のブロックの連鎖を「ブロックチェイン(Block Chain)」と呼び、Bitcoinを構成する基本的な技術となっている。ブロックチェインはBitcoin以外の暗号通貨にも用いられているほか、中央サーバを持たずに信頼情報を分散管理可能ということで、さまざまな応用研究が進んでいる。Bitcoinの詳細やブロックチェインの仕組みについてはここで細かく触れないが(日銀の公開資料に解説があるので興味ある方は参照のこと)、少なくとも今後数年はさまざまな場所でキーワードとして出てくると思われるので、ぜひ憶えておいてほしい。

なぜ「デジタル通貨」が注目を浴びているのか?

CPMIが報告書でデジタル通貨の特徴として挙げているのが「紙や金属などの物理的形態をとらない電子データ」、「主体が債務ではない」、「非中央集権的(De-centralized)な管理方式」の3つだ。

まず前者2つが重要で、銀行券や電子マネーのように特定の団体や企業が債務を負うわけではなく、(金などの)貴金属や(原油や穀物などの)一次産品のように「コモディティ」に近い性質を持っている。ただコモディティと異なるのは「データそのものに価値があるわけではない」という点で、交換が保証されるという信頼性に基づいてのみ価値が生まれるという特徴がある。

そして、この交換や価値の移転(受け渡し)はブロックチェインの仕組みにより分散管理され、第三者機関を経由せずに直接的(Peer to Peer)なやり取りが可能だ。法的に管理された日本銀行券や電子マネー、オンラインゲームなどの仮想空間での通貨では、すべて特定の管理主体が介在しており、国や組織の規制を乗り越えてボーダーレスでの通貨交換を可能にするのが、デジタル通貨の最も革新的な点だとCPMIは評価している。

同報告によれば、現在世界で使われているデジタル通貨は600種類以上が存在するが、2015年12月16日時点でBitcoin(BTC)の時価総額が67.4億米ドルに達しており、金額ベースで9割と圧倒的なシェアを獲得しているという。次点がリップル(XRP)だが、この全体の金額シェアはほぼ実際の利用率を反映した結果だと考えていいだろう。

主なデジタル通貨の金額シェア(出典:日本銀行、Coinmarketcap)


なぜ世界の金融関係者や決済システム関係者がデジタル通貨が注目しているのかだが、今後デジタル通貨が普及していくことで金融システムや経済に大きな影響を及ぼす可能性があるからだ。決済手段の利便性は「他の人がどれだけ同じ決済手段を使っているのか」に左右されるが、先ほどのグラフにもあるようにBitcoinに利用が偏っている現状で、そのBitcoin自身もどの程度決済に活用されているのかを考えると、一般的な利用にはまだ厳しいのかもしれない。

一方で、Bitcoinなどデジタル通貨は「誰が使って、誰が受け取ったか」を明らかにすることなく取引が可能で、「仮名性(Pseudonymity)」という特徴がある。これはブラックマーケットでの取引や政府の規制をかいくぐっての資金移動が可能なことも同時に意味しており、各国がマネーロンダリング対策に本腰を入れるなか、大きな問題となりつつある。ただ、まだデジタル通貨の利用が限定的であり、金融システムそのものへの影響は小さいというのがCPMIでの評価だ。

このように仕組みやトレンドには注目が集まるものの、その影響を巡って規制に関する議論も進んでいるというのがデジタル通貨の現状だ。そのため、最近では「デジタル通貨そのもの」と、「ブロックチェイン」を分けて議論する機会が増えてきている。

実際、筆者が過去1~2年ほど金融系のカンファレンスや展示会を巡ってきた感じをみても、この分野での話題の7割はブロックチェインに偏っていた印象だ。ブロックチェインはデジタル通貨以外にも応用が可能で、各種資産の記録や登記など、既存の中央管理型のシステムを脱することで、金融や決済処理をより効率化することができるようになるかもしれない。またデジタル通貨が普及すれば、これまでの銀行預金を介した取引が直接金融へと推移し、(銀行を介さない形での)資金フローに大きな変化が到来する可能性もある。

いずれにせよ、各国政府や金融機関はデジタル通貨を排除するわけではなく、その有用性に着目しつつ、信頼性の根幹である「ブロックチェイン」の活用も含めた研究開発に着手している。今回の資料ではシンガポール通貨庁が関連技術開発に関して2億2500万シンガポールドルの5ヶ年プロジェクトを実施している例も紹介されており、近い将来には思ったよりも身近な技術として皆のそばにあるのかもしれない。

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