年を追うごとに存在感を増す中国のスマートフォンメーカー。昨今は新たな勢力が次々と台頭を表し、中国勢同士でも激しい戦いを繰り広げている。一時期は「中国スマホの顔」となったあのシャオミ(小米科技)もここ1年は以前ほどの力はなく、代わりにOPPOやVIVOといった底力ののあるメーカーが世界シェア上位に割り込んできた。
そして今、新興勢力としてじわじわと存在感を強めているのがLeEcoだ。

最上位スマホはRAM 6GBなど、シャオミ製品を超えるスペック



▲LeEcoの最新スマートフォン、Le2シリーズ。そのスペックはシャオミをはるかに超える


LeEcoがスマートフォン市場に参入したのはわずか1年前。初代シリーズLeTV Le1は、最上位モデルのSoCにクアルコムのSnapdragon 810を採用し4GBの大容量RAMを搭載するなど、その時点で「中華スマホ最強」とも言えるスペックを搭載。シリーズとしてハイエンド、ミッドハイそしてエントリー級の3モデルを投入し、いずれもフレームレスデザインの大画面にUSB Type-C端子を採用するという意欲的な製品だった。

それから1年後の2016年4月に発表した第二世代モデル、「Le 2」「Le 2 Pro」「Le MAX 2」はさらに機能アップ。全モデル金属ボディーに指紋認証センサーを搭載。最上位「Le MAX 2」はSoCにSnapdragon 820、5.7インチWQHDディスプレイ、2100万画素カメラ、RAMはなんと6GBと、グローバル市場に出しても各社のフラッグシップモデルと十二分に戦えるだけの性能を有している。

LeEcoの武器は「最高のハード+大量の映像コンテンツ」




だがLeEcoのスマートフォンはただのハイエンド製品ではない。実はLeEcoは元々、ストリーミング放送を提供するコンテンツプロバイダー。PCやスマートフォン、そしてスマートTV向けに映画やドラマなどの映像コンテンツを月額制で有料配信する事業者だ(無料番組も多数ある)。

しかしコンテンツ提供だけに留まらず、そこから放送を見るための受信機、つまりTVやセットトップBOXを自社ブランドで販売している。LeEcoの大画面TVは価格も安く、しかもTVを買うと自社のストリーミング放送の基本料金が無料ということで評判を呼び、「ハード+サービス」のバンドル販売でシェアを伸ばしてきたのだ。

LeEcoのスマートフォンもこの路線を受け継いでおり、ホームボタンを押すと同社のストリーミングサービス「LeTV」の番組トップページが表示される。「LeTVが見放題」「LeTVが簡単に見れる」「本体のコストパフォーマンスも非常に高い」という3つの特徴で、同社スマートフォンの人気を一気に広げたのである。


▲​LeEcoの大型テレビコーナー。自社サービスの動画を中心に据えた製品展開だ


最近では各スマートフォンメーカーが本体のみならず、スマートウォッチやIoT機器などの周辺機器を次々に送り出している。例えばシャオミはつい先日低価格なドローンを発表するなど、多くのメーカーから毎週のように新製品が発表されている状態だ。

だがそれらの中心に位置するのは、あくまでもハードウェアであるスマートフォンである。対してLeEcoの製品は、TVやスマートフォン、さらに他の周辺機器も含めて、その中心に位置するのは同社のストリーミング動画サービスなのだ。

つまり同社は、ハードウェアを中心とした製品間のエコシステムを消費者に提供するのではなく、「動画」というわかりやすいコンテンツを見るための製品、活用するための製品を次々に開発しているのだ。しかもハードを売るだけではなく、サービス利用料を有償化するサブスクリプションモデルとし、その料金をハードウェアに含めてしまう......という、これまでの中国には無かったビジネスモデルを展開しているというわけだ。

中国VRブームをけん引する存在となるか




2016年5月に上海で開催された「CES ASIA2016」。LeEcoはここにもブースを出展。VRの体験コーナーは多くの来客で賑わっていた。そのほとんどがVR初体験者で「噂に聞いてはいたけど、実際に体験してみたらすごかった」という声が多く聞かれた。

LeEcoのスマートフォンが最強のハードウェアスペックなのも、今後VRでの利用を視野にいれた設計になっているためかもしれない。中国では今、VR関連のサービスやハードウェアが雨後の筍のごとく次々に登場しているが、そのVR業界をけん引するのはシャオミやサムスンではなく、コンテンツとハードの両方を持っているLeEcoかもしれないと感じる勢いだった。

フラッシュメモリとWi-Fi搭載モバイルバッテリーなど、周辺機器もユニーク



▲アクションカムもすでに販売中だ

LeTVはヨーロッパのサッカーリーグなど海外のスポーツコンテンツも配信している。中国でもサッカーファンは非常に多く、スポーツ番組は同社の有償コンテンツの目玉の一つだ。LeEcoは昨年アクションカムの販売を開始しているが、こうしたスポーツ番組の配信も手がけるなる同社が販売する、というのが興味深い。単純に購入者が自分で動画を撮影するだけではなく、将来的に自転車などのアウトドアスポーツ向けにこのカメラを提供し、映像を撮影してもらいそれをコンテンツ化する、というところまで考えているのかもしれない。



他にもLeEcoの周辺機器でユニークなものは、写真のモバイルバッテリーが挙げられる。容量は10000mAhでUSB出力端子を1つ備える。しかしただのモバイルバッテリーではなく、32GBのメモリとWi-Fiを内蔵しているのがポイント。

テレビ番組などの動画をこのメモリに保存しておき、外出先ではスマートフォンとWi-Fiで接続してそれらをストリーミングで楽しむことができるのだ。「動画を楽しめるモバイルバッテリー」という発想は、LeEcoの「動画中心」の製品展開を如実に表しているものと言えるだろう。


▲教育用途も考えたプロジェクター。アマゾン「Echo」の夢を見るか

ユニークな周辺機器はまだある。小型のIPカメラのようなこの製品は、スマートフォンとWi-Fi接続して利用する小型のプロジェクターだ。だが映像を出力するだけではなく、音声認識にも対応するのがポイント。クラウド側のサービスと連携し、子供の簡単な質問に答えるという機能も持っており、子供を持つ家庭向けの周辺機器と位置づけられている。

しかし一方で見逃せないのが、LeEcoは既に自社のオンラインマーケットも持っており、スマートフォンやこれらの周辺機器だけではなく、スポーツ用品やおもちゃ、そして酒類の販売までも行っているという点。今後はアマゾンのEchoのように話しかけるだけでショッピングができたり、またLeEcoがスマートホーム製品を出せば家電コントロールを音声で行う、ということも可能になるかもしれない。将来大きく化けるかもしれない製品なのだ。

スマート自転車も出展。スポーツ業界へも本格参入か




先ほど紹介したCES ASIA2016の同社ブースで、VRコーナーと並んで人気を集めていたのがスマート自転車だ。これはハンドルの中央部にスマートフォンを埋め込んだ仕様で、デザインも自転車と完全に一体化している。自転車に特化したBike OSを搭載し、データは常にクラウドとシンクロ、3G回線を使いGPSを活用した盗難防止サービスなども備えるという、本格的なものだ。


▲スマートフォンはハンドル中央部に装着される

フレーム部分にはカメラボタンがあり、自転車に乗りながら簡単に写真撮影も可能だ。IoT製品の一つでもあり、将来はこの自転車を使ったレースを行えば各車の走行中のデータをTVを見ながら確認できる、といった新しいサービスも提供できるだろう。

5G通信時代を見据えたLeEcoの製品戦略に注目




今やスマートフォンで誰もが映像コンテンツを楽しむ時代。多くのユーザーにとって、スマートフォンはSNSやビデオを楽しむツールになっている、ともいえるだろう。そうした視点で見ると、超ハイスペックなスマートフォンとストリーミング放送の両方を提供できるLeEcoは、今の時代の流行の中心に位置できる唯一の企業かもしれない。

このように、注目の製品やサービスを次々と送り出すLeEco。今後もどのような手を打っていくのか、是非とも注目していきたい企業だ。