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デンマークの補聴器メーカーであるオーティコン補聴器が、騒がしい環境下でも周囲360度の音を自然に聞き取れる補聴器『オーティコン オープン』(Oticon Opn)を日本で発売しました。価格はオープンですが、市場想定価格は1ペア(両耳用)で100万円前後となります。

主な特徴は、高度なデジタル音声信号処理により、マイクに指向性をつけることなく、騒がしい場所で使用する際の聞き取りやすさを大きく向上させた点。全周囲の音を拾いつつもノイズを排し、必要な音を届けられるとアピールします。さらにMade for iPhone認定やIFTTT(イフト)連携といったユニークな機能も搭載します。

IoT対応補聴器Oticon Opn発表。IFTTT連携で音によるスマートホーム機器からの通知受信が可能にopn

ハードウェア的なポイントとなるのが、同社が新開発した信号処理チップ「Velox」(ベロックス)。音声処理性能が従来モデル比50倍というVeloxは、心臓部として11コアのNoC(ネットワークオンチップ)を搭載します。

信号処理で使われる周波数チャンネルは64分割と細かく、24bit演算精度のDSPにより上限となる最大入力範囲(音量)も113dB SPLまでと広い点が特徴。こうした仕様の上では、いわゆるハイレゾ音源もカバー可能な実力を持ちます。

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本モデルはVeloxチップの処理能力を背景に、360度の環境音に対し毎秒100回を超える分析を行い、使用者にとって重要と思われる会話や音声を中心とした音量バランスに調整、さらにノイズリダクション処理を毎秒500回実行することで、従来モデルの補聴器に対して会話の理解度を向上させると謳います。

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さらに、両耳に装着した2つのユニット間の通信規格としてNFMI(Near-field magnetic communication:近接磁場電磁誘導)を、外部端末との通信規格としてはBluetoothを採用した「TwinLink」技術を採用。1台の補聴器に2つの無線通信システムを組み込んだ異例の仕様です。

NFMIは、小出力による消費電力の低さや、他のデジタル無線通信干渉との干渉がないという点などがメリット。対してBluetoothは汎用性などのメリットがあります。本モデルは両者の併用により消費電流を最大3.3mAと、補聴器用空気電池の電流容量である5mAを大きく下回るレベルに抑えつつ、Bluetoothによる接続にも対応します。

合わせてBluetooth機器としては、アップルのMade for iPhoneの認定を受けている点もポイント。「高音質でのステレオ音源ストリーミング接続を実現する」とアピールします。

専用iPhoneアプリ「Oticon ON」による本モデルの設定や調整、電話の発着信と会話なども可能。さらに「補聴器を探す」機能なども備えます。なお、Bluetoothはマルチペアリング仕様。最大10機種の外部機器と接続可能です。


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加えて、複数のWebサービスやデバイスの連携を行うためのサービスIFTTT(イフト)にも対応。例えばメールの受信や自宅セキュリティシステムのオン・オフ時に補聴器に音で通知を受けることや、果ては朝起きて、補聴器の電源を入れることで、自動的に家の照明とコーヒーメーカーの電源が入ったり、本機のバッテリーが少なくなってきたらスマートフォン側のメッセージでも知らせる、といった連携が行えます。

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また、オプションとして「テレビアダプター3.0」が発売されます。これはRCA(ステレオミニジャック変換コネクタ付属)出力と光デジタルの入出力端子を備え、補聴器にテレビからの音を直接ストリーミングする機材。1台のアダプタで複数のユーザーが使えます。価格は2万8000円。

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さて、本モデルの発表会では、日本における補聴器の普及についても紹介。
オーティコンの木下社長は、欧米において比較的普及率が低いアメリカ(約25%)と比較しても、さらに約半分(約13〜14%)と普及率が低い事を指摘。その要因の一つに、補聴器のイメージが「年寄り」や「活発でない」というネガティブイメージにあるのではないかと指摘。「そうした点を気にして装着しないものの、実際は会話に取り残されるなど、孤立感を深めているのではないだろうか」と懸念を表明しました。

今後、4人に1人がシニアとなる時代がやってくる高齢化社会の中で、普段通りの生活が送れる「健康寿命」を延ばす観点から「ヘルスケアとしての補聴器」のニーズが見込めるのではないかと発言し、市場の拡大に意気込みを述べています。


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またオーティコン本社のオーディオロジー(聴覚学)主監であるトーマス・ベーレンス氏は、「従来の補聴器に見られる指向性による聴覚の制御は、顔を向けている先の音にのみ集音を絞っており、世界を狭めてしまう」と指摘。

例えば、横や後ろから話しかけられても気づかない、車が近づくなどの危険に気づけないといった事態も実際に起こりうるとします。また、会話など聞きたい音に集中できないと脳に負荷がかかってしまい、疲労や認知、理解力の低下などに繋がると紹介。

続けてそれを裏付けるデータとして、Pupillomety(瞳孔測定)試験の結果を紹介。これは、無音(環境音)状態では小さく開いている瞳孔が、会話など聞くべき音が生じた時に大きく開くという人間の反応を利用して、聞く事による脳の負荷を測定するというもの。

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本モデルと同社の従来モデル『オーティコン アルタプロ2』を使用した状態で同じ音を聞いて比較したところ、本モデルを使った場合は瞳孔の開き具合が25%も少なく、脳の負担が軽減される事が確認できたと表明。合わせて疲れやすさや会話の覚えやすさ、理解といったデータも本モデルが大きく上回る点を紹介。「脳に優しいことが証明された初めての補聴器」とアピールします。

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また同社は長年の研究により、一般的な感覚器官の拡張としてではなく、脳科学からのアプローチで補聴器製品の開発をしてきたとアピール。

従来製品においてもマイクの指向性は可能な限り幅広く、つまり広い範囲の音を集音する方針でしたが、今回はVeloxチップの開発により、全周囲の集音と分析、ノイズ軽減が実現できたことで、より理想的な製品になったと謳いました。

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さて発表会会場では、聴覚障害を持っている状態をシミュレートし、指向性の強い従来型の補聴器を着用した場合と、本モデルを装着した場合の聞こえ方の違いを体験できる、というデモコーナーが併設。

難聴者の状態を体験する事自体が貴重な体験でもありましたが、指向性が狭い状態、つまり目の前の音しか聞こえない状態はきわめて不便で、孤立感を高めてしまうことが実体験として強く理解できました。対して本モデルを着用した場合には、処理された音であるとは感じるものの、全周囲の音を感じられ、健聴状態に近い聞こえ方になる事も確認できます。

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本モデルの市場想定価格は、冒頭でも紹介したように両耳で100万円。100万円という価格については、一般的な補聴器では、交付金などで購入する場合はおよそ4〜6万円程度が相場。そこに数万円の自費を足して購入するタイプの方でも10万円程度が相場になるということでした。

単純に比較しただけでは、非常に高額ということになりますが、一方でオーディコンは日本国内における初年度の販売目標として4000〜5000台くらいを見込むと、強気です。これは本モデルが富裕層だけでなく、現役で働いているシニアや若年層の難聴者向けなど、健聴者並みの聴覚に価値を感じるユーザなどに大きく訴求できるためとのこと。

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そしてオーティコンはもともとプレミアムモデル、つまり高価格帯向けのブランドでもあります。これは同社がウィリアム・デマンド・ホールディングス(WDH)社の傘下にあり、WDHグループが他にもバーナフォンなどの補聴器メーカーをはじめ、聴覚診断装置など多数のメーカーを有するマルチブランド戦略を採っているため。

こうした位置づけにあるブランドゆえ、従来もこうした超高級モデルをラインアップしていたことから、本モデルが特別に高価格というわけではないという事情もあります。

なお、従来モデルでは、ハイエンドの仕様を引き継いだミドルレンジ、エントリー価格の機種もあったため、当然本機にも同系列で低価格モデルが出る可能性もある、というコメントもありました。