スマホ1台で4枚のSIMが自在──変態デバイスの製品化にドコモが成功したワケ:週刊モバイル通信 石野純也

石野純也 (Junya Ishino)
石野純也 (Junya Ishino)
2016年08月3日, 午前 11:00 in ishino
0シェア
FacebookTwitter

何枚もあるSIMカードを差し替えるのは面倒......そんな不便さを解消する一風変わったデバイスをCerevoとNTTドコモが共同開発しました。

そのデバイスとは、「SIM CHANGERΔ」。SIMカードを4枚挿すことができ、Bluetoothで端末内に差し込んだ「ブリッジカード」と通信。あたかもその端末にSIMカードが刺さっているかのように振る舞える仕組みとなっており、4枚のSIMカードの切り替えはアプリから行えます。

※8月4日訂正:記事初出時、「曲論」と表記していた記述を「極論」に改めました。お詫びして訂正いたします。

製品の詳細はこちらの記事もご覧ください
市販スマホで4枚までのSIMを切替できる「モバイル回線切り替え機」をセレボが発表、ベース技術はNTTドコモからライセンス

▼SIM CHANGERΔのモックアップ


▼試作機で通信を行っているところ

SIM CHANGERΔは、8月2日現在、クラウドファンディングサイトのMAKUAKEで支援を受け付けていますが、発表から1日経たずに目標金額の250万円は超えており、製品化が確定しました。発売は、2016年度内を予定しています。ただし、Cerevoの代表取締役、岩佐琢磨氏によると、「ここまではかからないと思うが、余裕を見て年度内にした」といい、時期はもう少し早まる可能性もありそうです。

▼クラウドファンディングは成立

商品化には大きな壁があった

このSIM CHANGERΔには、ドコモの開発した技術が採用されています。ベースとなったのが、2014年6月に発表された「ポータブルSIM」。同月開催された、「Mobile World Congress Shanghai」に出展され、話題を集めたコンセプト製品です。当時は、カード型のデバイスを想定しており、端末と直接通信することで、SIMカードの情報を読み込ませていました。

▼MWC上海に出展されていたポータブルSIM

▼端末からSIMを切り離すというコンセプトは同じ


そのような仕様の違いはあるものの、大きな意味でのコンセプトはほぼ変わっていません。端末からSIMカードを切り離し、外部に持たせることで、物理的なカードの入れ替えをせず、情報だけを切り替えることができるようにするものというのは、2年前と同じです。

元々、ドコモは、スマートウォッチなど、サイズ的にSIMカードを入れづらい製品などに応用することも考えていたようですが、それを実現するためには課題もありました。

大きな壁になっていたのが端末です。ポータブルSIMに対応するためには、それ用の改修が必要になります。標準化もされていなければ、普及もしていないポータブルSIMに、メーカーがわざわざ対応させる可能性は限りなく低かったと言えるでしょう。当時、筆者が担当者をインタビューした際は、端末メーカーやクアルコムなどのチップベンダーにSIMカードの子機となる機能を採用するよう働きかける構想はありましたが、実現は難しかったようです。

ブリッジカードの開発で製品化にメド

こうした課題を乗り越えるために採用されたのが、先に挙げたブリッジカード。ドコモが「psim proxy」と呼ぶ、SIMカード型のデバイスです。このブリッジカードの形状は、まさにSIMカードそのもの。違いはBluetoothで通信する機能が内蔵されていることで、これによってSIM CHANGERΔと情報をやり取りできるようになっています。SIM CHANGERΔの情報は、「ブリッジカードを経由してスマホ側に渡している」(岩佐氏)仕組みになっており、端末側からは通常のSIMカードと同じように見えます。ブリッジカードがあれば、わざわざ端末内に子機になる機能を埋め込まなくてもよくなるというわけです。

▼ブリッジカードを通信する端末側に挿す

▼SIM CHANGERΔの仕組み

これによって、既存の端末にも対応することが可能になり、商用化のハードルが一気に下がりました。「OSごとにSIMカードへのアクセスの仕方が微妙に異なる」(ドコモ R&Dイノベーション本部 移動機開発部長 弘徳人氏)ため、SIM CHANGERΔに対応するブリッジカードはiOS用とAndroid用の2つに分かれていますが、それでも、端末内に埋め込むよりははるかに簡単。実際、SIM CHANGERΔのサイトに掲載されている動作確認済み端末の数を見ても、それが分かります。

"変態デバイスの事業化"にCerevoの貢献

ただ、こうした仕組みを採用したとしても、ドコモが単体で事業化するための壁はまだまだ高いのが現実です。ここまでマジメに語ってきましたが、Cerevoの開発したSIM CHANGERΔはどう見てもいわゆる「変態デバイス」。もちろん、いい意味での変態ですが、シェア1位のドコモが商品化するには、規模が小さくリスクも高すぎます。使い方によっては1つのSIMカードで複数のデバイスが簡単に通信できてしまうため、シェアプランを推しているドコモの方針にも沿わないものです。

そこで、ドコモは、ポータブルSIMの仕組みを「PSIM Suite」としてパッケージ化し、ライセンス提供をしていく道を選びました。その第一弾として製品化を行ったのが、Cerevoでした。

Cerevoは小ロットの製品を得意とし、「1商品あたり100台売れ、それが100カ国になれば1万台。100商品やれば、極論だが100億円になる」というビジネスモデルで事業を行っています。まさにポータブルSIMを、SIM CHANGERΔとして製品化するには、最適な会社だったと言えるでしょう。

▼ポータブルSIMの仕組みをライセンス提供する

▼Cerevoの岩佐氏(左)とドコモの弘氏(右)

用途はさまざま、ユーザーなりの活用法がある

ポータブルSIMでカード型だったデバイスは、Cerevoの手によりSIM CHANGERΔになり、サイズもモバイルWi-Fiルーター程度に大型化しました。これはバッテリーを30日間程度持続させるため。SIMカードも4枚刺さる形になりました。

用途はさまざまですが、会社とプライベートの回線を切り替えたり、複数契約したデータSIMを容量が切れるたびに切り替えたりと、想像力次第でさまざまな活用方法が生まれそうです。筆者は、プリペイドSIMを複数使うことが多い海外出張で使ってみたいと考えています。このサイズならむしろもっと大きくして、モバイルバッテリー機能も搭載してくれれば持ち物が増えないのに......などと思うところはありますが、ここまでの変態デバイスが世に出てきたことを、まずは歓迎したいと思います。

▼ユーザーが自分なりの活用法を考える楽しみがある

 

TechCrunch 注目記事新型コロナのソーシャルディスタンスを支援するビデオチャットアプリ8選

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

 

関連キーワード: ishino
0シェア
FacebookTwitter