ところが2017年8月、FBIはHatchins氏がインターネットバンクから情報を盗み出すマルウェア「Kronos」の開発に関わっていたとして、ラスベガスで開催されたDefConから帰宅しようとする彼を逮捕しました。このとき、FBIは、Hatchins氏がKronosの開発への関わりについて虚偽の証言をし、その販売にも協力していたと主張しています。
そしてFBIは、このほどHatchins氏には新たに4つの嫌疑があったとして告発件数を合計10件にも増やすじたいとなりました。これを受けて、Hatchins氏の弁護人は、新たに加えられた容疑は「(告発する)メリットがない」ものであるとして「この訴追の重大な問題を強調するものだ」と非難しています。
FBIによる新たな告発は、Hatchins氏がKronosの販売に協力し、Kronosの販売に利用されたとされるYouTube動画に登場する"VinnyK"と呼ばれる人物も対象としています。さらに、2012年にやはりPCから個人情報を盗み取るための「UPAS Kit」というマルウェアをHatchins氏が開発したとの内容も含まれます。
ただ、2012年というと6年前のことであり、5年とされる出訴期限、つまり時効はもう過ぎています。しかも1994年生まれのHatchins氏は当時は未成年でした。
ジャーナリストのMarcy Wheeler氏はこの点に着目し、2017年7月にUPAS Kit、2015年にKronosを販売していたのはVinnyKと仲間の"Randy"(起訴状では"B氏"と表記)と呼ばれる人物であり、Hatchins氏はマルウェアを彼らに提供しただけだとの見解を示しています。
Wheeler氏は、実際の黒幕はVinnyKらであり、FBIはそちらの追求に注力すべきであるにもかかわらず、Hatchins氏を標的にしていると自身のウェブサイトで意見しました。Wheeler氏はまた、米国内ではKronosの被害が出ていないことも改めて指摘しています。
一方、Hatchins氏の弁護団は、彼が2017年8月2日にラスベガスのDefConからの帰途で逮捕されたときの"Kronosに関する虚偽の証言"は、彼が持つ権利について正しく知らされず「彼が混乱し誤解するよう仕向けられた」状況で言わされたものだとして、連邦裁判所に証言として採用しないよう訴えています。
なお、この件の裁判はいまだ始まっていないものの、Marcus Hatchins氏は法的な費用がすでに10万ドルを超える額に膨れ上がってしまったことから、支援者に寄付を募るクラウドファンディングを開始しています。
If you'd like to assist me in fighting the new case, please consider donating said mineral here:https://t.co/4X1GRbsb1c
— MalwareTech (@MalwareTechBlog) 2018年6月6日