ハッブルが搭載するジャイロは2009年に最後のメンテナンスを受け、飛行士の船外活動によって標準仕様3基、新仕様3基の合計6基の新品ジャイロに交換されました。しかし年月を重ねるに連れて1つまた1つとジャイロは壊れ、最近では旧仕様1基、新仕様2基の3基だけでの運用がなされていました。NASAはハッブルは3基のジャイロがあれば通常の観測ができるとしているものの、10月初旬に発生した旧仕様ジャイロの故障により、生きているジャイロは新仕様2基だけになってしまいました。
そこで、NASAは過去に停止したジャイロの中でもまだ状態がよく、予備にしておいた1基を再起動させようとしました。ところが7年半ぶりに起動したこのジャイロも正常な回転数が得られないことがわかったため、ハッブルは解決策を探るために一時セーフモードにされました。
各ジャイロの動作には、高回転モードと低回転モードがあり、高回転モードは大きく機体を動かすとき、低回転モードは観測目標をロックオンするために使われます。予備ジャイロを起動しようとした際の問題は、高回転モードで起動した後に低回転モードへ移行できないというものでした。
Back to science! @NASAHubble is well on its way to normal science operations after a series of spacecraft stability tests commanded by our operations team. After evaluate its performance, the telescope is expected to return to science as usual. Learn more: https://t.co/KPKMDMO6drpic.twitter.com/yOfaagZlep
— NASA (@NASA) 2018年10月22日
10月16日に、チームは予備ジャイロを低回転モードに移行させるため、起動してからいったんオフに戻し、回転が低下してきた頃合いを見計らって再びスイッチを入れるという対策を実施してみました。しかしこれは失敗におわります。
さらに10月18日には、ジャイロによる姿勢制御動作を正方向と逆方向、回転数指示も高低織り交ぜて繰り返してみました。これは、古いテレビやオーディオのボリュームつまみがノイズを発するようになったとき、接点の接触を良くさせるために音量を大きくしたり小さくしたりさせるのと同じような発想と言えるかもしれません。そしてこのアナログ的な対策が功を奏したのか、ジャイロはときおり低回転モードの回転数に戻る様子を見せ始めます。
チームは続く19日も同様の操作を繰り返し、最終的に低回転モードでもジャイロの回転数が正常になったことを確認しました。これによって、生き残っている2基と合わせ3基のジャイロの動作が可能になったことになります。
ハッブルのチームは故障発生時、場合によっては2基残ったうちの1基を最後の予備として残し、1基のジャイロだけでも観測を続けることができなくはないとしていました。しかしそれは本当の最後の最後の対策。そして今回は、まだその方法を持ち出す必要がなくなったと言えそうです。
チームは今後、ハッブルによる日常的な科学観測の遂行を確実とするため、さらにいくつかの試験を実施する予定ではあるものの、それらが終われば、すぐにも通常運転に復帰できる考えです。
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