曲がるスマホ「フォルダブル」は意外と早く身近な存在になるかもしれません。
フォルダブルは、畳めば縦長のスマホとして、広げれば大きなディスプレイのタブレットとして使える端末です。2月末に開催された世界最大のモバイル展示会「MWC19 Barcelona」では、注目のトピックとなっていました。
フォルダブルスマホが最初に市場に登場した2018年11月。中国のベンチャー企業Royoleが発売した「FlexPai」の"開発者向けモデル"です。その直後にサムスンはフォルダブルスマホのプロトタイプを公表。その際「2019年にはフォルダブルスマホは数社から登場する」と予告しています。
その予告通り、MWCの会期直前にはサムスンとファーウェイというスマートフォン2強が相次いでフォルダブルスマホを発表しました。
▲Galaxy Fold
フォルダブルスマホのツートップがこの時期に発表されたのは、次世代のモバイル通信「5G」の導入が迫っているから。高速な通信を存分に活用するための、目玉として用意されたのが「フォルダブル」と言えます。
初期に登場するフォルダブルデバイスは、一般消費者が気安く購入できるような価格ではありません。サムスンが発表した「Galaxy Fold」も、ファーウェイが発表した「Mate X」も、いずれもスマートフォンとしてはとびぬけて高額なプレミアムモデルです。
▲Mate X
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フォルダブルは安くなる?
フォルダブルスマホの中でも特に重要な部品「フレキシブル有機ELディスプレイ」は、サムスンディスプレイがようやく量産に入った段階の製品。現時点では一般的なディスプレイより高額になります。一方で、このディスプレイには低価格化の兆候もあります。MWCでは中国第2のディスプレイメーカーチャイナスター(CSOT)が動作するフォルダブルスマホ用ディスプレイを出展しています。同社はすでにフォルダブル用ディスプレイの量産準備段階に入っており、2020年には量産を開始する予定です。生産能力は板ガラス換算で月産45000万となるということで、同社や他のディスプレイメーカーで量産が進めばフォルダブル用ディスプレイの低価格化が進むものと思われます。
中国TCL集団はMWCにてCSOTのディスプレイを利用したフォルダブルスマホのプロトタイプを展示していました。また、1万8000mAhの大容量バッテリースマホを発売するEnergizerも、フォルダブルの次期モデルを展示していました。2019年末から2020年にかけては、こうしたフォルダブルスマホの新モデルが多く登場する可能性があります。
▲TCLの展示していたフォルダブルスマホ
▲Energizerのフォルダブル
肝はディスプレイではなくヒンジ
フォルダブルスマホのディスプレイは、もはや特別な技術ではないと言えるでしょう。実は、設計でもっとも困難な点と言えるのは、ディスプレイそのものではなく、それを折りたたむための「ヒンジ」部分です。ディスプレイを曲げるというのは、たとえて言えば厚紙を折り目をつけずに曲げるようなもの。折り目無しで曲げようとすると、途端に困難になります。解決策の1つは、ヒンジ部に丸みを持たせ上から見たときにトングのような形状にすること。これは「FlexPai」がとった手法です。
▲FlexPai
それに対して、サムスンやファーウェイのフォルダブルは、畳んだ時に2枚の板が重なるようにピッタリと揃います。携帯性ではFlexPaiよりも優れていますが、これを設計するためには、高い技術が求められます。実際、ファーウェイはMate Xのヒンジ機構の設計に3年をかけ、100以上の特許を取得したと明らかにしています。その設計の複雑さが、当初の製品価格を上振れさせる主な要因となっているのでしょう。
一方で、この筐体設計についても、普及にともなってコストが下がっていく可能性はあります。ファーウェイのCEOリチャード・ユー氏は量産が進めば製造コストも下がるとして、フォルダブルディスプレイを備えたより低価格な機種もラインナップに加えていく可能性を示唆しました。
価格とコンテンツのバランスが普及のカギに
そして、フォルダブルスマホを購入しても、現時点では"フォルダブルならでは"のコンテンツが少ないという実情があります。これは、Androidタブレットがあまり普及していない理由に通じるものです。Androidはもともと、画面の小さいスマートフォン向けのOSとして発展してきたため、多くのアプリがスマートフォンを前提とした縦長・横長の表示となっています。フォルダブルスマホの場合は、広げたときは正方形に近いディスプレイを採用することになります。電子書籍や写真の表示には適していますが、動画やSNSアプリでは無駄な表示が多くなってしまい、あまりメリットを生かせません。
サムスンはGalaxy Foldにあわせて、1つの画面で3アプリを起動する新しいユーザーインターフェイス(UI)を発表しています。これはGoogleと共同で設計したもので、他のAndroidデバイスでも利用できるようになっていく見込みです。
こうしたフォルダブルならではの新しい利用法の開拓と、製品価格の低下が続けば、ある時点で爆発的に普及する可能性もありそうです。