6月3日(現地時間)、アップルの世界開発者会議・WWDCが開幕。基調講演が行われた。2時間20分という長丁場で、tvOSからwatchOS、iOS、MacOS、さらにはMac Proの新製品を発表するなど、まさにメガ盛りな基調講演であった。
その基調講演を、一言で、ざっくりとまとめると「進化と分割」というキーワードで語ることができる。
まず、触れておきたいのが「iTunesの終了」だ。
事前の一部報道では「iTunesが終了してしまう。ストリーミングが全盛となり、音楽ダウンロードの時代は終焉する」と煽ったところがあった。 確かにiTunesというアプリは消滅してしまうが、実際、蓋を開けてみれば「ミュージック」「ポッドキャスト」「AppleTV」の3つに「分割」されるというオチであった。
基調講演では、アップルのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギ氏が「iTunesにはスケジューラーやブラウザも載せようかと考えた」とジョークを飛ばしていたが、これまでのiTunesは、iPhoneなどのデバイスを管理するなど、機能がてんこ盛りだったため、ここにきて、それぞれの機能を進化させるとともに、分割するという決断を下したようだ。
これからアップルとしては、自社制作の映像コンテンツ配信事業に注力していくし、アメリカではポッドキャストの人気もいまだに高い。アップルミュージックも同社にとって大きな収益の柱になっていることを考えると、それぞれ分割、独立アプリにしたほうがユーザーにとってもわかりやすく使いやすいだろう。
きっと、ティム・クックは、iTunesにトキメキを感じなくなり、世界で流行している「こんまり」したかったに違いない。
さらに「進化と分割」したのがApple Watchだ。
watchOSは、iPhone向けのアプリがなくても、Apple Watch向けに単独でアプリを配信できるようになった。Apple Watchに向けApp Storeも用意され、単独でアプリのインストールが可能になったのだ。まさにiPhoneとApple Watchが分割されたことになる。
基調講演では、Apple Watch用のアプリとして、オーディオブックやボイスメモ、電卓などのアプリが紹介された。騒音感知や月経のタイミングなども記録できるなど、Apple Watchの利便性がさらに高まることが予想される。
もうひとつの「進化と分割」はiPadだ。
これまでiPhoneとともにiOSだったiPadは、今回からiPadOSとして分割、独立。watchOSと同等な扱いになった。
大画面の特徴を生かし、ペンやキーボード入力、さらには画面分割など、iPhoneとは独自の進化をしつつあっただけに、iPadOSとして分割するのは当然の結果と言えるだろう。
これにより、iPadはひとつのアプリを同時に二つ、表示させることが可能になった。アプリの切り替えがスムーズになり、USBメモリが使え、ファイル管理がしやすくなるなど、さらにパソコンに近い使い勝手に進化した。
アップルとしては、iPhoneの普及がひと段落し、伸び悩みを見せる中、iPad関連は比較的、好調なセールスが続いている。 児童や学生などに向けた「はじめてのコンピューター」としてのニーズや、ビジネスの現場でもノートパソコンがわりに本格的に使えるマシンとして、iPadやiPad Proを訴求していくためにも、iPhoneとは違うユーザーインターフェースが求められているということだろう。
iTunesの役目が終わったのは、まさにアップルがコンテンツビジネスで成功している証でもあるし、Apple WatchがiPhoneから独立し、iPadはOSとしてiOSから分割されたことを見ると、アップルが手がけている製品群がそれぞれ年月を重ね、機能が強化されているということがよくわかる。
まさに今回の基調講演は、アップルによる今後の進化を見据えた、サービスとハード、OSの「整理整頓」といえそうだ。